小細胞肺癌における抗癌剤耐性の克服を目指したネスチンを基軸とする診療戦略の開発

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K08181
• Research Institution: Nagoya City University
• Principal Investigator: 前野 健 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (10444952)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 小栗 鉄也 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (60363925)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 小細胞肺癌 / ネスチン / 抗癌剤耐性

Outline of Annual Research Achievements

小細胞肺癌は、昨今目覚ましい治療成績の進歩を遂げている非小細胞肺癌とは対照的に、約30年にわたり治療成績の進歩に乏しく、新たな治療戦略の開発が必要である。2019年から抗癌剤と免疫チェックポイント阻害剤の併用が標準治療となったが、その生存期間延長効果は極僅かであり、依然として新たな治療戦略開発が必要な状況である。
我々は、小細胞肺癌の抗癌剤耐性化の関連分子として神経幹細胞マーカーであるネスチンを報告し（Sone K, Maeno K, et al. Nestin Expression Affects Resistance to Chemotherapy and Clinical Outcome in Small Cell Lung Cancer. Front Oncol. 2020;10:1367)、小細胞肺癌の治療成績の向上へ繋がり得る研究と考え、臨床応用を目指して更に検討を進めている。
前向き臨床研究として行っている小細胞肺癌患者の治療経過における経時的な血清ネスチン濃度モニタリングは、目標症例数の20例の集積を終えた。現在はELISA法による血清ネスチン濃度の測定を進めており、患者背景、治療反応性、生存期間など各種の臨床パラメーターとの相関性を評価しその臨床的意義について検討している。薬物療法による血清ネスチン濃度の変動、治療内容による変動の差異などを見出しており、現在はその原因についても検討を開始している。
基礎的研究としては、ネスチンによる抗癌剤耐性化の誘導メカニズムの解明を目的に小細胞肺癌細胞株とそのネスチン発現抑制株を用いたマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を行い、関連候補遺伝子を抽出した。その中で関連が強く疑われる分子について肺癌細胞株を用いて分子生物学的解析を行っているが、現時点では明確な分子の同定には至っていない。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

我々が血清ネスチン濃度測定のために用いていたELISAキットを製造・販売していた会社が倒産してしまい、当初から使用していたELISAキットが入手できなくなってしまった。そのため血清ネスチン濃度測定が遅れてしまっている。

Strategy for Future Research Activity

現在、血清ネスチン濃度測定を行う新たなELISAキットの選定を行っており、入手可能となった時点で速やかに研究を再開する予定である。
小細胞肺癌に対する治療内容による血清ネスチン濃度変動の差異などを見出しているため、その原因についても患者腫瘍組織なども用いて検討を進めていく。
基礎的研究に関しては、ネスチン関連分子の発見を目指して引き続き分子生物学的解析を進めていく。有意な結果が得られれば動物実験へと発展させていく。

Causes of Carryover

血清ネスチン濃度の測定を行うELISAキットの購入が出来なくなってしまったことが主な理由である。新たなELISAキットの購入および基礎研究に使用する物品の発注も合わせて、次年度の研究遂行に順次使用していく。