2019 Fiscal Year Research-status Report
腹膜組織解析による腹膜硬化症から被嚢性腹膜硬化症への進展機序とリスク因子の検討
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18K08205
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 康弘 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (20584676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 正司 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (20303638)
伊藤 恭彦 愛知医科大学, 医学部, 教授 (60402632)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腹膜透析 / 被嚢性腹膜硬化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
腹膜透析(PD)患者において被嚢性腹膜硬化症(EPS) は最も重篤な合併症であり、PD療法の普及、および長期にわたるPD継続を妨げる主要な因子である。我々は長期PD患者の腹膜組織(うちEPS発症10例を含む)を解析し、これまで腹膜障害の病変の主体として考えられていた、腹膜線維化や血管新生よりむしろ血管障害がEPS発症に強く関連する要因であることを発見し、この血管障害こそがEPS進展に重要な役割を持つのではないかという仮説を提唱した。本研究は、さらに多数のEPS手術症例から得た腹膜組織214検体を用いて、世界最大規模でEPSを病理組織学的・分子生物学的に検討し、我々の仮説を証明し、EPSの進展機序を解明することを目的とした。EPS手術症例が全国から集積するあかね会土谷総合病院と共同研究を行い、EPSによる腸閉塞症状を呈し1993年から2016年までに土谷総合病院において開腹手術、腸管癒着剥離術を施行した223症例において、手術時に採取されたEPSの腹膜組織検体283検体のうち、検体が評価に不十分なものを除いた174症例、214検体を評価対象とした。平均PD期間が128.1ヵ月、平均年齢56.0歳、初回手術が174例、再発手術が47例であった。EPS発症から手術まで平均期間は7.4ヵ月であった。我々がPLoS One 2016の報告で用いた方法にて組織学的検討を行った。酸性液(165例)と中性液(9例)の患者を比較すると、酸性液群は透析期間が有位に長く、中性液群では89%が腹膜炎罹患後のEPSであった、L/V ratioは酸性液群で有意に低値(血管障害が高度)であり、PD期間と相関していた。CD31は中性液群に多く、CD68陽性細胞数、腹膜肥厚に有意差はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、あかね会土谷総合病院において開腹手術、腸管癒着剥離術を施行した症例において、手術時に採取されたEPSの腹膜組織検体283検体のうち、検体が評価に不十分なものを除いた214検体を評価対象とし(解析した。各症例の臨床データ、PD治療の内容(ブドウ糖濃度、酸性液/中性液)、腹膜炎歴、EPS治療の内容(ステロイド治療の有無)などと組織所見とあわせて詳細に解析している。免疫組織学的評価もくわえて検討、解析を続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに免疫組織学的に以下の分子 (CD31、CD68、α-SMA、Podoplanin、AGE、血管成長因 子など)の発現を解析。非EPS群との比較も行い、EPS発症に強く関与する要因を多変量解析し同定して、そのメカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
3月末までに入荷予定の試薬について、納期遅延が発生したため。
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