2018 Fiscal Year Research-status Report
リソソームストレスとしての腎疾患の病態解明とそれに基づく治療薬の探索
Project/Area Number |
18K08208
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高畠 義嗣 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (30403075)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪阪 善隆 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00379166)
高橋 篤史 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (10704786)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | オートファジー / リソソーム / オートファジーフラックス / 脂質代謝 / 尿細管 / TFEB |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 腎虚血再灌流のリソソームストレスの病態生理学的意義 研究代表者らのこれまでの研究で、腎尿細管オートファジーは急性腎障害(AKI)からの回復に重要な役割を果たす一方で、オートファジーフラックスの維持に必要なリソソーム機能が種々の腎疾患ストレス下で低下していることや、脂肪毒性とリソソーム機能に密接な関連があることが判明している。また古くからAKI時には脂質代謝が低下することも知られている。2018年度はAKI後の経時的なリソソーム機能の変化と脂質代謝との関連を検討した。腎片側虚血再灌流(35分)後のマウス腎では、①リソソームの拡張およびカテプシンD の成熟の低下などリソソーム機能の低下、および②カテプシンDのリソソームから細胞質への溢流、ガレクチン3陽性リソソームから示唆されるリソソーム膜の透過性亢進(LMP)を認めた。またGFP-LC3マウスを用いたオートファジーフラックスの解析から、尿細管では6時間後および7日後に二峰性のオートファジー亢進を認めるが、2~4日後はオートファジーが停滞することが判明した。さらにAKI後の腎尿細管組織では脂肪滴の蓄積、脂肪酸β酸化の低下、ATP含量の低下を伴っていた。以上からAKI時には脂質代謝の異常が、リソソーム機能障害、さらにはオートファジー活性の低下を惹起して、病態を悪化させるものと推測された。
(2) 腎尿細管リソソーム機能におけるTFEBの役割 KAP-Creマウス(KAP [kidney androgen-related peptide] は近位尿細管に特異的に発現する)とTFEB floxマウスを交配し、尿細管特異的TFEBノックアウトマウスを樹立した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)腎虚血再灌流のリソソームストレスの病態生理学的意義については当初の予定より順調に進んでおり、「今後の研究の推進方策」の記載した追加実験が終了すれば、論文化に取り掛かることができる状況である。 (2)の尿細管特異的TFEBノックアウトマウスについても樹立が終わり、TFEBが近位尿細管でノックアウトできていることが確認できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) 腎虚血再灌流のリソソームストレスの病態生理学的意義 ①低酸素再酸素培養下の腎尿細管細胞を用い(虚血再灌流負荷を模している)、脂肪酸β酸化を薬剤により亢進することで、リソソームの拡張の軽減、成熟カテプシンDの増加、オートファジーフラックスの改善、細胞死の軽減が認められるかを検証する。培養細胞において予想通りの結果が得られれば、マウス虚血再灌流負荷モデルで類似の薬剤を投与し、病態の改善が得られるか否かを検証する。 ②腎移植後に腎機能が発現しない(DGF: delayed graft function)患者の腎組織においてリソソームの拡張やオートファジーフラックスの低下などマウAKI後のマウス腎に類似した所見が認められるかを検証する。 (2) 腎尿細管リソソーム機能におけるTFEBの役割 樹立した尿細管特異的TFEBノックアウトマウスを用い、各種腎疾患におけるTFEBの役割を検証する予定である。具体的には(1)と同様の虚血再灌流負荷や急性尿酸腎症モデルを計画している。
|
Causes of Carryover |
交付していただいた額と実際に使用した額に些少な誤差が生じたためで、ほぼ当初の実験計画通りの計画で遂行できている。
|