2020 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病に伴うサルコペニアにおけるオンコスタチンMの役割
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18K08216
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
森岡 与明 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30382154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩井 淳 大阪市立大学, 大学院看護学研究科, 教授 (90260801)
庄司 哲雄 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (40271192)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腎不全 / アデニン負荷 / 骨格筋萎縮 / オンコスタチンM / STAT3 / C/EBPδ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)アデニン誘導性慢性腎臓病(CKD)モデルマウスにおけるサルコペニアとoncostatin M(OSM)の関連:これまでに,CKDマウスにおいて下肢骨格筋の萎縮,筋蛋白合成系因子の発現減弱,筋蛋白分解系因子の発現増強,およびOSMの作用亢進が確認された.さらなる検討の結果,CKDマウスの骨格筋組織において,OSM, OSM受容体発現が亢進する一方で,LIF, IL-6, TNF-α, Ccl2発現は減弱し,IL-1β発現は増強する傾向を示した.さらにリンパ球系細胞を示すLy6c2の発現亢進がみられ,単球・マクロファージを示すCD11c, F4/80発現は減弱していた.以上よりCKDマウスの骨格筋におけるOSMシグナルの亢進の背景に,特異的な炎症系細胞浸潤が存在する可能性が考えられた. (2)培養筋芽細胞を用いたOSMの骨格筋における直接作用:これまでに,OSMが成熟したC2C12 myotubeにおいて,STAT3経路を介してMyoD, myogeninの減弱,atrogin-1, C/EBPδの増強,および筋管径の縮小をきたすことを示した(Miki Y, et al. BBRC 2019).さらなる検討の結果,C2C12 myotubeにおいてOSM-Stat3経路の下流にあるC/EBPδの発現がOSMにより亢進することが確認された.C/EBPδをノックダウンしたmyotubeにおいて,OSMによるmyogeninの発現減弱効果が消失した.以上より,OSMが骨格筋においてStat3-C/EBPδ経路を介して筋形成因子myogeninの抑制を介して筋委縮を誘導する可能性が推察された. (3)透析中CKD患者における血清オンコスタチンM濃度と骨格筋量の解析:種々の腎機能を示すヒト血清を用いて,OSM測定の検証作業を行った.感染症流行を受け,1年間の期限延長となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)アデニン誘導性CKDモデルマウスにおけるサルコペニアとoncostatin M(OSM)の関連:アデニン負荷CKDマウスにおけるPEW (protein-energy wasting), サルコペニアのモデルが確立された.同マウスにおいて骨格筋組織レベルでの筋分化・増殖系の減弱および筋蛋白分解系の亢進が確認された.さらに同マウスの骨格筋において,IL-6ファミリーの炎症性サイトカインの中でもOSMに特異的な作用亢進が示唆されており,またCKDに特異的な炎症系細胞の浸潤パターンが存在する可能性が示され,当初の計画の方向性に沿った形で進められている. (2)培養筋芽細胞を用いたOSMの骨格筋における直接作用の解析:分化誘導後の成熟C2C12 myotubeにおいて,OSM添加後のSTAT3リン酸化の増強,細胞径の萎縮,筋分化増殖系因子の発現減弱,および筋蛋白分解啓因子の発現亢進が確認された.さらにSTAT3阻害剤(C188-9)の前処理あるいはsiRNA法によるSTAT3遺伝子のノックダウンにより,OSMによる上述の効果がSTAT3系を介していることが示唆された.さらにOSMがStat3の下流のC/EBPδを一部介して筋委縮に関与する可能性が示され,CKDにおけるOSMを介した骨格筋萎縮の機序解明に向けた進捗状況となっている. (3) 透析中CKD患者における血清OSM濃度と骨格筋量の解析:ODCS研究の参加者の中から骨格筋量測定データ,各種臨床パラメータ,および保存血清の状況につき確認作業を進めているところである.また血清OSM濃度測定にあたって,ELISAキットの選定および測定のための条件設定・予備検討を進めているところである.測定系の確立については,次年度の主な課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)アデニン誘導性CKDモデルマウスにおけるサルコペニアとoncostatin M(OSM)の関連:アデニン負荷CKDマウス骨格筋において,OSM/OSM受容体の筋線維,血管系,間質における局在確認,および炎症細胞(単球・マクロファージ)についてもデータの確認・確定を行う. (2)培養筋芽細胞を用いたOSMの骨格筋における直接作用の解析:成熟したC2C12 myotubeにおいてOSMによる骨格筋萎縮の過程におけるSTAT3経路およびその下流のC/EBPδの重要性が明らかとなった.ノックダウン法を用いてC/EBPδの役割について詳細に検討する.またOSMによる骨格筋タンパク合成系(mTOR, Akt/Foxo1)についても解析予定である. (3) 透析中CKD患者における血清オンコスタチンM濃度と骨格筋量の解析:ヒトの血清OSM濃度測定にあたり,ELISAキットの評価選定および測定の最適化を行い,本測定を進める.結果の妥当性を確認の上,臨床データの解析を行う.
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Causes of Carryover |
2020年度に発生した新型コロナ感染症流行拡大を受け,研究室スタッフの在宅勤務,人員確保に問題が生じたこと,研究者による病院の感染症対応のため,研究遂行が著しく遅延し,1年間の期限延長を要することとなった.次年度は血清オンコスタチンM濃度測定用のキット購入を中心に残額をあてる計画である.
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Research Products
(1 results)