2020 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of region-specificity in glomerular endothelial cells
Project/Area Number |
18K08221
|
Research Institution | Aino University |
Principal Investigator |
栗原 秀剛 藍野大学, 医療保健学部, 教授 (80311976)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 血管内皮細胞 / 膜ドメイン / 腎臓 / メサンギウム細胞 / 腎炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
身体のすみずみに酸素と栄養を運ぶ血管の内壁を構成する内皮細胞は、組織によって特異な形態をとる。糸球体において内皮細胞は足細胞に面した領域では窓とよばれる小孔を有しており、基底膜を形成するが、メサンギウム細胞に面した領域では窓はなく、基底膜も欠損している。このように糸球体内皮細胞は場所により特徴的な形態の違いを示しているにも関わらず、これまで糸球体内皮細胞の領域特異性についての議論はされていない。申請者は糸球体を抗原として多くのモノクローナル抗体を作製しており、その一つのクローンJ22が糸球体内皮細胞のメサンギウム基質に接した膜表面を特異的に認識することを見いだした。これは糸球体毛細血管を形成する内皮細胞が領域特異的に分子の発現を制御していることを初めて示すものであり、この抗原の解析を進めることで、内皮細胞の新たな機能を明らかにし、さらに新規の切り口で糸球体腎炎の病態を解析する基盤を形成することを目的とする。本年度は以下のような結果を得た。J22抗原とともに解析を進めている糸球体内皮細胞抗原であるI10抗原について、新たな知見を得た。I10抗原(80 kD)は腎臓および肺に加えて、膵臓の毛細血管内皮に発現が認められた。さらに、I10抗原は膵臓のランゲルハンス島に発現していることが分かった。ランゲルハンス島で分泌されるホルモンや細胞小器官マーカー分子とI10抗原との共局在を調べた結果、I10抗原がランゲルハンス島A細胞に発現しており、グルカゴンを内包する顆粒に局在が認められた。また、小腸において、絨毛にある内分泌細胞のうち、グルカゴン様ペプチド-1(インクレチン:L細胞が分泌)分泌細胞が陽性となった。細胞小器官の中で、ゴルジ装置のマーカー分子GM130やTGN38との共局在が認められたことから、I10 で認識される分子はグルカゴンのプロセッシングに関わる分子の可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前任校からの試料移動が昨年度完了したが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、研究施設の利用制限や、教育において対面講義からオンライン講義への切替えのための準備等に多大な時間を要しており、研究の進行に大幅な遅れが生じている。そのため、本年度予定していたJ22抗原の単離などの実験がほとんど進んでいない。
|
Strategy for Future Research Activity |
J22抗原の役割が明らかになってきており、分子として極めて重要であることは明白である。また、同時に進めているI10 抗原についても、血管内皮細胞以外に膵ランゲルハンス島A細胞で発現が認められたことから、機能的に極めて重要な分子である可能性がある。昨年度予定していた抗原単離の試みについて、研究を進めていく。J22抗原に加えて、I10抗原の単離も同時に試みる。この抗体はIgMクラスに属しており、免疫沈降が難しいため、IgMを酵素処理してF(ab')2 断片分画を使用することで効率よく免疫沈降ができることが期待される。この断片化の効率を確かめる実験を行う。抗原単離については、抗原の可溶化条件の設定、J22抗体やI10 抗体を用いた免疫沈降法による分子の単離条件を検討し、抗原解析を進めていく。遅延しているI10抗原の間質性肺炎との関わりに関する研究も進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
2020年度は、コロナ禍で研究活動を停止する期間が生じたこと、また新型コロナウイルス感染対策で教育内容を大幅に変更し、対面からオンラインを中心とした教育を行うための準備に多くの時間を費やしたことなど研究に支障をきたす事態となった。そのため、2020年度はほとんど研究が行えず、2020年が最終年度であることから、延長願いを提出し、受理された。そのため、2021年度に未使用分を使用して、研究を推進する。研究内容は当初2020年に予定されていたものに加え、新型ウイルス感染の感染経路となる肺と腎臓の血管内皮細胞に発現するAGE2とモノクローナル抗体認識抗原(J22抗原とI10抗原)との関わりについても調べていくこととする。
|