2020 Fiscal Year Annual Research Report
Functional analysis and investigation of medicines using the disease-specific iPS cell-derived collecting duct cells from ADPKD
Project/Area Number |
18K08225
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
及川 治 日本大学, 医学部, 研究医員 (60813590)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 昇 日本大学, 総合科学研究所, 教授 (40267050)
阿部 雅紀 日本大学, 医学部, 教授 (70459890)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 遺伝性多発性嚢胞腎 / 疾患特異的iPS細胞 / 個別医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝性多発性嚢胞腎(ADPKD)患者の腎嚢胞形成を抑制する薬剤を選択する為に、ADPKD患者のPKD1, PKD2遺伝子解析を行い、末梢血から疾患特異的iPS細胞を樹立し、腎臓オルガノイドを分化誘導した。健常人由来iPS細胞で有用な分化誘導方法を検討したのち、ADPKD患者2名(患者1、患者2)より樹立したiPS細胞からも腎臓オルガノイドを樹立し、バソプレシン刺激に対する反応性を評価した。健常人由来腎臓オルガノイドではバソプレシン刺激による嚢胞形成を認めなかった一方、2名のADPKD患者由来腎臓オルガノイドではバソプレシン刺激により組織構造の変化を認めたが、その形態や発生様式は患者毎に異なっていた。患者1の腎臓オルガノイドではバソプレシン刺激により嚢胞の形成を認めたが、患者2の腎臓オルガノイドでは嚢胞は形成されず、集合管上皮と思われる組織の異常増殖を認めた。2名のADPKD患者はそれぞれ異なるPKD遺伝子変異を有しており、こうした組織構造の変化の違いは個々の遺伝子変異を反映したものと考えられた。また患者2では細胞遊走や細胞分裂の極性の維持に関わる遺伝子変異が生じたために増殖上皮が極性を失い、嚢胞を形成しなかった可能性があると考えられた。本研究ではADPKD患者由来のiPS細胞から分化誘導した腎臓オルガノイドを用いた実験系において、初めてバソプレシン刺激による反応性の評価に成功した。ADPKD患者の嚢胞形成メカニズムにはかなりのheterogeneityがあり、これは個々の患者の遺伝子変異に基づいている可能性があると考えられた。組織構造の成熟度や機能性に課題が残っているものの、ADPKD患者由来の腎臓オルガノイドを用いた研究でこうした可能性が初めて示唆されたことは基礎的にも臨床的にも意義のある事と考えられた。
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