2018 Fiscal Year Research-status Report
大Maf群転写因子によるネフロン分化の解明と腎臓再生基盤の確立
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18K08230
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森戸 直記 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70463825)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ネフロン / 転写因子 / 腎発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
(背景) 腎の発生において上皮化したネフロン前駆細胞は、糸球体上皮細胞、近位尿細管、遠位尿細管のそれぞれに分化し、ネフロンでは、大Maf群転写因子のMafB, c-Mafが発現している。我々はMafBノックアウトマウスに糸球体上皮細胞の発生障害があることを報告したが、近位尿細管、遠位尿細管にも発生異常があることを新たに見出した。腎の発生において、上皮化したネフロン前駆細胞(Six2陽性細胞)は、糸球体上皮細胞、近位尿細管、遠位尿細管のそれぞれに分化する。大Maf 群転写因子は、哺乳類においてMafA, MafB, c-Maf, Nrlの4種類が知られ、ネフロンでは、MafB, c-Mafが発現している。MafBにGFPノックインしたマウスの解析からMafBは糸球体上皮細胞に発現している。また、c-MafにLacZをノックインしたマウスの解析から、c-Mafは近位尿細管に発現していることが分かった。 (方法) MafBノックアウト(KO)マウスは、生後すぐに死亡するため、胎生18.5日目で解析し、腎臓の組織学的評価、RT-PCRを行なった。 (結果) 胎生18.5日目のMafB KOマウスにおいて、糸球体上皮細胞(WT1陽性)、近位尿細管細胞(LTL;Lotus tetragonolobus lectin陽性)、遠位尿細管細胞(Slc12a3陽性)は野生型マウスに比べ有意に減少していた。また、腎のRT-PCRでネフロン分化に必要なNotch2 の発現の減少がみられた。培養糸球体上皮細胞にMafBを過剰発現するとNotch2の発現が上昇した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年次計画どおりに推移している。 大Maf群転写因子のネフロン発生と分化における役割を明らかにし、大Maf群転写因子(MafB, c-Maf)の発現を制御することで上皮化したネフロン前駆細胞から、糸球体上皮細胞、近位尿細管細胞、遠位尿細管細胞のいずれかの狙った細胞に分化誘導させることを可能とする目標に近づきつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
1、ネフロン発生における大Maf群転写因子の発現変化のメカニズムを明らかにすること。 上皮化したネフロン前駆細胞にはMafBが発現している。ネフロン分化の過程で、MafB発現が維持されていると糸球体上皮細胞となり、MafB発現が低下すると尿細管細胞となる。尿細管細胞のうちc-Maf発現が上昇するものは近位尿細管となり、そうでないものは遠位尿細管となる。その大Maf群転写因子の経時的変化とメカニズムを明らかにする。
2、大Maf群転写因子制御によるネフロン前駆細胞からネフロン構成細胞への分化誘導可能かどうか。 MafB発現ベクター(pEFX3- MafB)、c-Maf発現ベクター(pEFX3- c-Maf) 、MafB siRNA、c-Maf siRNAを組み合わせて添加することで、①MafB(+), c-Maf(-)、②MafB(-), c-Maf(+)、③MafB(-), c-Maf(-)の3つの大Maf群転写因子の発現パターンを人工的に作り出す。それらの発現誘導パターンからネフロン前駆細胞を意図的に①糸球体上皮細胞、②近位尿細管細胞、③遠位尿細管細胞それぞれに誘導できるかどうかを確認する。
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Causes of Carryover |
購入抗体が輸入品で時間がかかり、次年度購入としたためである。
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