2018 Fiscal Year Research-status Report
免疫沈降法による膠原病患者血清中の自己抗体の同定と臨床的特徴の検討
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18K08266
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
濱口 儒人 金沢大学, 医学系, 准教授 (60420329)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 全身性強皮症 / 皮膚筋炎 / 自己抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
膠原病患者において自己抗体を同定することは診療上有用であるが、簡便に測定できる酵素免疫吸着測定法(enzyme-linked immunosorbent assay; ELISA法)が開発されている自己抗体は少なく、ELISA法が開発されていない自己抗体については臨床的特徴が十分に明らかにされていない。免疫沈降法は自己抗体を同定する有力な手法であるが、手技が煩雑なため限られた施設でしか実施できない。本研究では、全身性強皮症、皮膚筋炎を中心とする膠原病患者の血清中に存在する自己抗体を免疫沈降法により同定し、同定した自己抗体ごとに患者をサブグループに分類し、その臨床的特徴を明らかにすることを目的としている。本年度は、全身性強皮症特異抗体の1つである抗PM-Scl抗体の同定について、代表的なLine blot法であるEurolineと免疫沈降法による検出度を比較した。Eurolineでは抗PM-Scl抗体の検出のためPM-Scl75とPM-Scl100の2つのリコンビナントタンパクを抗原としている。このうち、Eurolineで抗PM-Scl75抗体が陽性だった9例はいずれも免疫沈降法でPM-Scl75タンパクは沈降しなかった。また、Eurolineで抗PM-Scl100抗体が陽性だった1例も免疫沈降法でPM-Scl100タンパクを沈降しなかった。したがって、Eurolineが陽性だった症例はすべて疑陽性だった可能性があり、改良の余地があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
もともとの計画では、初年度と2年目にEurolineの有用性について検討する予定としていたが、予定通り抗PM-Scl抗体の検出についてEurolineと免疫沈降法の比較検討を行った。今年度の検討により抗PM-Scl抗体の検出についてEurolineは改良の余地があることが明らかになり、この成果は臨床上重要な知見と考えられる。2年目以降は他の全身性強皮症特異抗体および筋炎特異抗体について同様の検討を行う。また、新規自己抗体の同定についても試みたい。全体として研究の進捗状況についてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度では、全身性強皮症特異抗体および筋炎特異抗体について同様の検討を行う。対象とする全身性強皮症特異抗体として抗トポイソメラーゼI抗体、抗RNAポリメラーゼ抗体、抗U3RNP抗体、抗Th/To抗体、抗Ku抗体、筋炎特異抗体として抗Jo-1抗体、抗EJ抗体、抗PL-7抗体、抗PL-12抗体、抗Mi-2抗体、抗SRP抗体を予定している。自己抗体が同定された症例について自己抗体ごとにサブグループに分類し、臨床症状、検査所見、治療経過などについて検討する。検討する項目は、SScでは皮膚症状(皮膚のスキンスコア、レイノー症状、指尖潰瘍、手指の屈曲拘縮、毛細血管拡張など)、間質性肺炎、心病変、消化管病変、腎病変、関節病変、筋病変、悪性腫瘍などである。DMでは皮膚症状(ゴットロン徴候、ヘリオトロープ疹、爪上皮出血点、体幹の紅斑など)、間質性肺炎、悪性腫瘍などについて検討する。SSc、DMとも検査所見、治療内容および治療に対する反応性についても検討する。これらの検討により、抗体ごとの臨床的特徴が明らかになることが期待される。
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Causes of Carryover |
平成31年度では前年度に引き続き免疫沈降法を用いた実験を予定しており、研究費が必要なため次年度使用額が生じた。
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