2021 Fiscal Year Research-status Report
非平衡大気圧プラズマ(冷たいプラズマ)を用いたメラノーマに対する新規治療法の開発
Project/Area Number |
18K08270
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
白石 研 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (80710863)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神野 雅文 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (30274335)
本村 英樹 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (80332831)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | メラノーマ / プラズマ / 増殖抑制 / 非平衡大気圧プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
メラノーマ細胞を用いて、本実験に適した非平衡大気圧プラズマ発生装置の照射条件(電圧、照射間隔、波長など)を決定した。10種類のメラノーマ細胞を用いて、増殖スピード、細胞の形態、細胞の起源・由来、遺伝子発現の違いを確認し、本実験に適した2種類のメラノーマ細胞を選択した。まず、培養メラノーマ細胞にプラズマを直接照射(5分、10分)すると、照射部位の細胞は24時間後には大半が死滅したが、非照射部位の細胞も大半が死滅することが確認された。このことから、プラズマには直接照射以外の間接的な作用で細胞に影響を与えている可能性が考えられ、プラズマを照射した培養液に注目した。プラズマ発生装置から1.5cm離した部位から、0、0.5、1、3、5、10、15、30分の異なる時間で照射し回収した培養液を用いて、24-72時間後のメラノーマ細胞の増殖能をCCKアッセイで評価した結果、照射時間依存性にメラノーマの生存率(増殖)を抑制することができた。次に、トランスウェルを用いたマイグレーションアッセイおよびscratchやストッパーを用いたgap closureアッセイを行った結果、いずれもプラズマ照射培養液に暴露されたメラノーマ細胞では遊走能の低下が認められた。そこで、プラズマで処理した培養液の解析を行い、プラズマ照射で温度やPHは大きく変化しないこと、添加した血清には影響を与えないこと、凍結保存でも再使用が可能であること、細胞との接触時間を減らしても抑制効果が見られることを確認した。現在、プラズマがメラノーマの抑制効果を引き起こす分子学的メカニズムの解明を進めている、プラズマ照射培養液およびプラズマ非照射培養液で培養したメラノーマ細胞におけるアポト―シス関連を含めた様々な遺伝子発現の変化をRT-PCRによりスクリーニングを行い、発現に差が見られた遺伝子の同定と抗腫瘍効果への関与を明らかにしていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究で、プラズマ発生装置の改良と本実験の遂行に最適な条件を決定することができた。それらの条件下で、プラズマ照射培養液がメラノーマの増殖、遊走、浸潤能を抑制することを確認した。これらのメラノーマの抑制効果を引き起こす分子学的メカニズムの解明を進めている。これまでは、おおむね順調に計画通りに研究が進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
過去の文献では、プラズマ照射により培養液中に産生される活性酸素が細胞に影響を与えることが報告されている。また、プラズマ照射液で細胞にアポトーシスが誘導されることも報告されている、そこで、今後は活性酸素消去剤を用いてプラズマ照射培養液のメラノーマ抑制効果が減弱するかどうか、また、プラズマ照射によるメラノーマ細胞のアポトーシス誘導をTrypan blue染色、Annexin-V/PI染色、カスパーゼ3、cleavage assay、TUNEL染色などで確認する。更に、アポトーシスのインヒビターを用いて、メラノーマの抑制効果が減少するかどうかを調べる。プラズマ照射培養液で暴露後の細胞を経時的に電子顕微鏡で観察し、細胞の形態学的変化を詳細に検討する。プラズマ照射培養液中の組成の変化をHPLCなどで確認する。プラズマ照射細胞と非照射細胞におけるアポトーシス関 連の遺伝子発現スクリーニングを行い、いかなる因子の発現がプラズマ照射により誘導されるのかを明らかにする。更には、プラズマのマウスにおける抗腫瘍効果の検討や遺伝子スクリーニングで同定した遺伝子の関与をマウス実験で明らかにする予定である。
|
Causes of Carryover |
本実験に使用するメラノーマ培地、ピペット類一式、培養ディッシュなどの物品を購入予定として計上していたが、当教室に使用可能な既存の物品があったため、未使用額が生じた。また、学会発表予定として旅費を計上していたが、コロナ渦の影響もあり発表するに至らず、上記の物品購入費と合わせて843180円の次年度繰越金額が生じた。本額と翌年度分として請求した助成金は、「プラズマによるメラノーマ細胞のアポトーシス誘導」および「抗腫瘍効果に関与する遺伝子スクリーニング」「マウス実験」等に使用する予定である。
|