2019 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティクス(特にHDAC)がケロイド発生病態に及ぼす効果の検討
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18K08271
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鍬塚 大 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (90437864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩永 聰 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (00621947)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ケロイド / HDAC阻害剤 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
肥厚性瘢痕・ケロイドでは病変部に細胞外マトリックスの過剰沈着がみとめられる。本研究では、エピジェネティクスの代表分子であるhistone deacetylase (HDAC)に着目した。以前にHDAC各種の遺伝子発現について、正常線維芽細胞とケロイド細胞の遺伝子発現を詳細に検討したところ、HDAC2がケロイドで特異的に発現が増強していることを見出した。そのため、HDAC2をより選択的に阻害するHDAC阻害剤を選択し、細胞外マトリックスや転写因子などに与える影響をRT-PCR、Western blotを用いて検討した。まず、HDAC2選択的阻害剤の一つであるMocetinostatに着目した。RT-PCR、Western blottingでは濃度依存性にCOL1A2やVersicanなどの細胞外マトリックスの発現を抑制し、TGF-βの発現も抑制しうることを見出した。一方で、正常線維芽細胞でも濃度依存性にCOL1A2やVersicanなどの細胞外マトリックスの発現が抑制され、その効果はケロイド特異的ではない可能性が示唆された。続いて、別のHDAC2選択的阻害剤としてApicidinに着目し、同様の検討を行った。その結果、Apicidinも濃度依存性に細胞外マトリックスの発現を抑制するが、ケロイド特異的とはいえなかった。Mocetinostatと異なり、HIF1αの発現を特異的に低下させることがわかった。今後はさらに別のHDAC2阻害剤について検討を加えていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ケロイド特異的なHDAC阻害剤の選択、ならびに実験条件設定に苦慮し、時間を要しているため
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Strategy for Future Research Activity |
新たなHDAC阻害剤の候補としてCAY10683などを選択し、mRNAの発現や蛋白レベルの発現を検討比較してゆきたい。また、タイムラプス法などの手法を用い、細胞増殖あるいは遊走などのcell abilityを観察することで、ケロイド細胞に特異的に起こりうる現象を確認したい。次いで、TGF-βあるいはwntの投与によりケロイド特異的な環境を再現し、その環境下でのHDAC阻害剤が及ぼす影響についても検討したい。
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Causes of Carryover |
当初予定していたwestern blottingでの蛋白レベル定量や蛋白機能の解析が本年度は十分実施できなかった。また、新型コロナウイルスの影響により当初発表を予定していた学会での研究データ発表が中止となった。次年度は、新たな試薬や、新たなHDAC阻害剤の購入、ならびにcell abilityの確認に用いる、タイムラプス法を導入するための試薬を購入予定である。
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