2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K08273
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
武居 公子 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90325861)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海川 正人 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00325838)
丸山 一郎 沖縄科学技術大学院大学, 情報処理生物学ユニット, 教授 (70426568)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有棘細胞癌 / 癌幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
有棘細胞癌は皮膚における主要な悪性腫瘍の1つである。多くは早期の外科切除により治癒するが、進行例の予後は不良である。悪性腫瘍は、多様な分化段階の細胞から構成される細胞集団の中に少数含まれる癌幹細胞が異なった増殖能や分化段階にある細胞を生み出すことによって不均一な腫瘍組織を形成するとされる。癌幹細胞は放射線や抗癌剤に耐性を持つことから、腫瘍の再発や転移には、大きな役割を果たしていると考えられている。治療により癌幹細胞を確実に除去出来れば、治療効果の向上につながる。ケラチノサイトモデル細胞株であるPam212細胞はマウス皮下に接種すると有棘細胞癌原発巣を形成するが、殆ど転移しない(低転移細胞株、親株)。これに対して、Pam212細胞の稀な転移巣から樹立された娘細胞株はマウス皮下に接種すると原発巣の他に高率に転移巣を形成する(高転移細胞株、娘株)。低転移細胞株と高転移細胞株の間で発現量に差のある分子が転移能力に影響している可能性がある。両細胞株における遺伝子発現変化の影響を確かめる為に、高転移細胞株で発現低下している遺伝子を高転移細胞株に発現導入した。この遺伝子導入により、親株の1/5程度の蛋白質発現が確認出来た。この発現導入株を用いて、実験を行った。高転移株では低転移株よりもERK(extracellular signal-regulated kinase)の活性が亢進している。ERKの異常な活性亢進は細胞増殖や癌化を招くが、発現導入株では、ERKの発現抑制は確認出来なかった。更に、発現導入効果を経時観察したところ、高転移娘株での導入蛋白質発現は約2ヶ月であった。高転移株は外来遺伝子の発現を抑制する何らかの機構を有し、幹細胞性の維持に関与している可能性を考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
候補分子の発現プラスミドを完成させ、そのうち一部を導入した発現細胞を樹立した。蛋白発現していない対照細胞を用いた予備的動物実験では、腫瘍細胞の皮下接種による原発腫瘍の形成と転移巣の発生を確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
高転移株でのERK活性抑制効果が確認出来なかった理由として、発現蛋白量が少ないため、変化を検出できていない可能性があると考え、蛋白発現量を増加させる方法を検討中である。併行して遺伝子発現抑制/導入細胞を用いた三次元培養を試みる。また、実際に生体内で転移する際の遺伝子発現変化を検討する為に高転移細胞株の接種により発生させた原発腫瘍と転移巣の遺伝子発現解析を行う。
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Causes of Carryover |
動物実験計画書の承認に時間を要したため、実験開始が年度後半になり、当初予想よりも動物飼育費用が減少した。その間、標的遺伝子発現プラスミド作成と細胞への導入、FACSスキャンによる細胞収集と培養、凍結保存などをおこなった。
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