2018 Fiscal Year Research-status Report
プラズマ照射液/NOxドナーによるメラノーマ治療の基礎研究
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18K08279
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
落合 豊子 日本大学, 医学部, 教授 (40133425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 良弘 一般社団法人プラズマ化学生物学研究所, 研究部, 代表理事 (80206549)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 低温大気圧プラズマ照射剤 / プラズマ照射培地 / メラノーマ / 一酸化窒素 / アポトーシス / ネクロトーシス / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
NOxの関与の検討: 創製した低温大気圧プラズマ照射剤(PSM ≧25%溶液)でA375とA258メラノーマ細胞を72時間処理すると細胞生存率は顕著に濃度依存的に低下した。一方ヒト組替え型腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘発リガンド(TRAIL 100 ng/ml)処理はほとんど生存率に影響を与えない。従来のプラズマ照射培地 (PAM)は 50%溶液で生存率を顕著に低下させたが、25%で効果はない。細胞内一酸化窒素(NO)産生能をDAF-FM-DAにてマイクロプレートリーダーで測定すると、PSMは添加5分後から有意にNOを増加させ、少なくとも30分間持続。一方PAM添加直後にNOはベースレベルより増加したが、30分間全く変動はない。TRAILは細胞内NOレベルを増加させない。以上よりPSMが特異的に細胞内NO産生を活性化し、NO産生が細胞死に関連することが明らかとなった。 PSM誘発細胞死モードの解析: Annexin-V/7-actinomycin D (7-AAD)で染色後フローサイトメトリーで解析すると、Annexin-V陽性細胞はほとんど見られない。TRAIL 100 ng/mlと同レベルのカスパーゼ-3/7活性化が検出されたが、カスパーゼ阻害剤Z-VAD-FMKは全く細胞死を抑制しない。ネクロトーシス特異的阻害剤necrostatin-1は細胞死を抑制したが、効果は限定的。メラノーマ細胞は多数の大きなオートファゴソーム斑点(CYTO-IDで蛍光顕微鏡で検出)とオートファゴソーム形成マーカーLC3-IIの発現(ウエスタンブロッティングで検出)があった。PSM処理は、オートファゴソーム斑点とLC3-IIの発現レベルを顕著に減少させ、オートファジー抑制が示された。以上アポトーシス、ネクロトーシス、オートファジーのどれもPSM誘発細胞死の決定的なメディエーターでないと示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、創製した低温大気圧プラズマ照射剤(PSM)による細胞死におけるNOxの関与の検討とそのモードの解析であったが、PSMが特異的に細胞内NO産生を増加させ、この増加が細胞死誘発に関与することを示すことができた。細胞死のモードに関しては、アポトーシス、ネクロトーシス、オートファジーのいずれもその決定的なメディエーターではないことを明らかにすることができ、ほぼその目標を達成した。しかし、パラトーシスの関与に関してはまだ実験ができず次年度の課題とする。また次年度の目標達成に向けた準備として、PSMのカルシウムシグナルに対する作用を調べるためにミトコンドリアカルシウムのマイクロプレートリーダー及び蛍光顕微鏡による測定の予備実験を行っている。 蛍光顕微鏡によるミトコンドリアカルシウムシグナルの検出のタイミングは現在最適条件を検討中である。もう一つの課題であるミトコンドリアネットワークリモデリングの解析に関しては実験条件を確立済みで本実験に入ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
NOxの産生経路の解析: 創製した低温大気圧プラズマ照射剤(PSM)が、どのような機序で細胞内NO産生を惹起するかを調べる。特に、われわれは以前白血病細胞で高濃度過酸化水素(H2O2)がeNOSを介してNOを産生することを明らかにしており、またPSM中にはH2O2が存在しているので同様な経路の関与を検証する。 PSMによるパラトーシス誘発の検討: PSMによる細胞死にはアポトーシス、ネクロトーシス、オートファジーとは別の細胞死経路の関与が考えられ、当初想定された経路のうちパラトーシスが検討課題として残された。そこで、パラトーシスの関与を知るためにそのメディエーターとされるカルシウムシグナルの変化特異的蛍光プローブを用いてマイクロプレートリーダー及び蛍光顕微鏡観察で解析する。カルシウムシグナルの変化が検出できたら細胞内外カルシウムをキレート剤で除去して細胞死誘発に対する影響を調べる。またすでにメラノーマ細胞のミトコンドリアカルシウム調節に重要な役割を果たしていることを明らかにしたmitochondrial calcium uniporter、mitochondrial permeability transition pore及びsodium calcium exchanger等の活性を変調させてこれらの分子の関与を検討する。 NOxのカルシウムシグナル調節における役割: カルシウムシグナルの重要性を明らかにできたら、NOxの役割を解析するためにNOドナー及びNO消去剤のカルシウムレベルに対する影響を検討する。カルシウムシグナルの変化がNO産生よりも早い場合は、その産生のカルシウム依存性を検討して、両者の間の因果関係を明らかにする。カルシウム依存性がみられた場合はeNOS等のカルシウム依存型NO合成酵素の関与を明らかにする予定である。
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