2019 Fiscal Year Research-status Report
ヒト皮膚の部位特異性を決定する遺伝子クラスター解析による限局性皮膚症の病態解明
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18K08303
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山本 雄一 琉球大学, 医学部附属病院, 講師 (00363672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 健造 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80291425)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 皮膚 / 部位特異性 / 掌蹠 / 角化 / 遺伝子発現 / 角層 / 自然免疫 / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、同一のヒト個体での体幹と足底皮膚での遺伝子発現の違いを、多数検体でのトランスクリプトーム解析を網羅的に統計解析することで、ヒトの皮膚の各部位に様々な皮膚の形態の違いを明らかにすることを目標とした。平成30年度は、足底の皮膚の獲得免疫と自然免疫の特徴に着目し、ランゲルハンス細胞の細胞密度が、足底では、躯幹の10-20分の1に減少していることを、CD1aやランゲリン遺伝子の発現の減少より理解した。昨年度は形態学的に、足底に皮膚は有棘層、顆粒層、角層共に厚い。HE染色でのエオジンの染色性の違いに診られる様に、K9の発現に代表されるケラチン発現など角化の方向性の相違が何であるのかを検討した。 そこで、今年度は掌蹠の皮膚の厚さ、中でも角層の厚さを説明しうる特異的な蛋白発現としては、セリンプロテアーゼである Kallikrein-related peptidase (KLKs)の一群と、これを可逆的に阻害する Kazal型セリンプロテアーゼインヒビター(SPINKs)、不可逆に阻害するセルピンスーパーファミリー(SERPINs)の同位体群が皮膚に発現する。体幹と足底の皮膚では15種の KLKsのうち、KLKs活性化カスケードのイニシエーターである KLK5, 7, 8, 9, 11の5種類が高発現していた。KLKsの発現は足底皮膚では体幹部と比較し総体的に低下していた。SERPIN型インヒビターとしては、長島型掌蹠角化症の原因遺伝子であるSERPINB7の発現には体幹と掌蹠で差はみられなかった。しかしながら SERPINB3, B4, B12,B13は体幹よりも足底で数倍~10数倍高発現していることが確認できた。 これらのKLK, SERPIN, SPINK蛋白の発現の組み合わせにより、躯幹型のバスケット型の角層、掌蹠型の厚い稠密な角層などが形成されると考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
掌蹠の皮膚の厚さ、特に角層の厚さを説明しうる特異的な蛋白発現としては、KLK, SERPIN, SPINK蛋白の発現の組み合わせは、躯幹皮膚と足底皮膚では大きく異なり、躯幹型のバスケット型の角層、掌蹠型の厚い稠密な角層形成などの表現型の違いとなることを発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、樹状細胞の一つであるランゲルハンス細胞は、ランゲリンとCD1aの RNA発現量から、足底では体幹皮膚の1/26と1/18に減少していることが確認できた。また、自然免疫を担う抗菌ペプチドであるS100A8/S100A9や、Dermcidinは、足底では体幹より10倍以上と高発現していることを発見した。これらは、皮膚マイクロバイオームの部位による差異を説明する事象であると思われる。 そこで、令和2年度には、さらに掌蹠と躯幹の皮膚の検体数を増やしトランスクリプトーム解析に供する。これまでに理解の及んでいない、足底の有棘層の角化の方向性、即ち、ケラチンK9の発現を誘導する因子の解明、有棘層が厚くなる機序の解明、基底膜の接着能が強い理由の解明、色素細胞が乏しい理由など、掌蹠の皮膚の特徴を説明しうる遺伝子発現の違いを拾い上げる。また、自然免疫を担う蛋白である抗菌ペプチドの発現に大きな違いがあることより、同じトランスクリプトームデータより、皮膚の常在菌であるマイクロバイオームの違いを解析することで、抗菌ペプチドと常在菌層の関連を解析する。口唇部皮膚や頭部皮膚の手術時の余剰部分からRNA を抽出し、同様のトランスクリプトーム解析を行い、粘膜型上皮や毛包型角化に寄与する分子を拾い上げる
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Causes of Carryover |
次年度に解析する検体が準備されており、トランスクリプトームの解析外注に多数、次年度での使用が予想され、経費を残しておくことが必要と考えた。
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Research Products
(21 results)
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[Presentation] 琉球大皮膚科の生物学的製剤を使用した乾癬のまとめ2019
Author(s)
宮城 拓也, 園崎 哲, 伊藤 誠, 小松 恒太郎, 大嶺卓也, 佐久川 裕行, 與那嶺 周平, 山城 充士, 岡本 有香, 深井 恭子, 大平 葵, 白瀬 春奈, 山口 さやか, 新嘉喜 長, 山本 雄一, 高橋 健造
Organizer
第87回日本皮膚科学会沖縄地方会
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