2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the immediate suppression mechanism of steroid pulse therapy mediated by innate immune cells
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18K08308
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
高橋 良 杏林大学, 医学部, 講師 (00317091)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ステロイドパルス療法 / 自然免疫細胞 / 炎症反応抑制 / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年から引き続き、研究協力者である杏林大学医学部皮膚科学教室の大山学教授、佐藤洋平医師の協力の元、本学附属病院皮膚科において受診されたステロイドパルス療法(パルス療法)を施行した円形脱毛症例患者より採血を行い、末梢血単核細胞(PBMC)及び血清の採取及び保存を行った。 これまでの実験で、パルス療法終了時には、PBMC中のCD14dimCD16+ proinflammatory monocyteが消失し、CD14+CD16- classical monocyte (cMO)の単一の細胞集団になることを見出しているが、近年cMOと一部同様の表面マーカーを示すmonocytic myeloid derived suppressor cells (m-MDSC):単球系骨髄由来免疫細胞が着目されている。この細胞は単球よりも未熟な細胞で、強力な免疫抑制作用を持つことが報告されており、本研究で見いだされている特徴的な細胞集団と関係している可能性がある。そこでパルス療法患者より分離されたPBMC中のcMOの詳細な表面マーカーを、日本BD FACSCanto IIフローサイトメトリーで解析した。m-MDSCの表面マーカーは、HLA-DR―/dim、 Lineage-、 CD33+、CD11b+、CD14+、CD15―をターゲットにした。 パルス療法前のPBMC中には、m-MDSC様細胞(ここでは便宜上、「m-MDSC様細胞」とする)は殆ど存在しなかったが、パルス療法直後ではm-MDSC様細胞が増加していることを新たに見出した。パルス療法終了後1ヶ月後のPBMCでは治療開始前と同等レベルまでに戻った。さらにm-MDSC様細胞のCD16発現を調査すると陰性であったことから、特殊なcMO細胞集団の一部は、m-MDSC様細胞であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は、到達目標を5項目に設定し研究遂行を確実化させる。なお、項目(3)(4)のいずれかが実証できた場合、本申請の一時的な目標は達成したと考えたい。 (1) パルス療法を施行した重症薬疹や重症円形脱毛症患者等から血液の採取と保存を行う。採取は、パルス療法を行う直前・終了日・施行後1ヶ月後とする。(2) パルス療法によるcMOのLLT1発現とCD8+/NK細胞のCD161発現の変化を明らかにする。PBMCを抗体で染色し、単球におけるLLT1発現、CD8+ T/CD56+ NK細胞のCD161発現をフローサイトメトリーで測定する。(3) cMOとCD8+T/NK細胞のインタラクションによる細胞傷害機能が抑制される事を明らかにする。(4) パルス療法によって増加したcMOによって制御性T細胞(Treg)が増加することを明らかにする。(5) 学会発表・論文投稿等の成果発表。 本年度では次のステージである(3)(4)へ移行する予定であったが、項目(2)においてm-MDSC細胞の検出という、新知見・かつ発展性のあるデータが得られたことを踏まえると、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、「研究実績の概要(1)」の症例の集積を行いつつ、これまで集積してきたサンプルを用いて、本年度で明らかになったm―MDSC様細胞の出現割合が患者間で差があるのか無いのかを多種の表面マーカーを用いた多次元解析(t-distributed Stochastic Neighbor Embedding: tSNE)を行いPBMC中の細胞を網羅的に調査する(研究実績の概要(2)の発展系)。 さらに、単球系をstimulationする一般的な試薬(リポポリサッカライド:LPS等)を用いて、m-MDSC様細胞から産生されるサイトカイン等を測定し、細胞機能の解析を行う。m-MDSC様細胞が持つと言われている抑制機能を、研究実績の概要(3)に示したアッセイにて測定を行う。合わせて、パルス療法後に見られるTreg細胞の増加に対し、どのように関与しているのかを調査したい(研究実績の概要(4))。
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Causes of Carryover |
研究試薬を新たに購入する必要が無かったため。
使用計画:本年度で必要になる抗体等の高額な薬品及び培養器具の購入費用、研究データの解析のためのパーソナルコンピュータやソフトウェアの購入、並び学会へ参加し研究者との情報交換の為の旅費として使用予定である。
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