2018 Fiscal Year Research-status Report
β-カテニン経路を標的にする悪性黒色腫患者の抗腫瘍免疫応答改善法と評価法の開発
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18K08309
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
谷口 智憲 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40424163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (50161287)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 悪性黒色腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗PD-1抗体は、悪性黒色腫で明らかな臨床効果を示したが、単独使用では効果不十分で、 不応例に対する併用療法の開発と、奏効例を選別するバイオマーカーの探索が必要である。 研究代表者は以前、悪性黒色腫で活性化しているβ-catenin経路が、免疫抑制分子などを異所性に産生させ、免疫抑制を誘導している可能性を示した。本研究では、本経路活性化の免疫的意義を日本人の悪性黒色腫患者で再評価し、悪性黒色腫細胞、さらには担癌生体の免疫細胞において、本経路活性化が免疫抑制を誘導する機序を解明する。さらに、β-catenin経路を阻害できる薬剤を用いて、免疫抑制を解除し、既存の免疫療法の臨床効果を改善する併用療法を開発する。また、研究代表者が以前同定した、β-catenin経路活性化によって悪性黒色腫細胞で特異的に発現する分子Xを用いた、免疫抑制状態と、免疫療法の臨床効果を予測するバイオマーカーの開発を行う。 本年度は、すでに臨床試験において安全性が確認されているβ-catenin阻害薬の評価を行った。β-cateninが活性化しているヒト悪性黒色腫細胞株にin vitroで作用させると、β-cateninによる制御が報告されている免疫抑制分子が低下し、ケモカインが上昇した。また、担癌マウスモデルを用いて、この阻害剤が抗腫瘍免疫応答に与える影響を様々な投与量で検討した。その結果、比較的低用量を持続投与した場合に、抗腫瘍免疫応答を増強させることが分かった。さらに、間接的にβ-cateninを阻害することが報告され、ヒトにも投与経験があるような阻害薬を数種選び、上記と同様にin vitroでヒト悪性黒色腫への作用を検討した結果、β-catenin阻害薬を作用させたときと同様な実験結果を示した阻害薬を発見することができた。 分子Xに関しては、特異的抗体の取得を試み、幾つかのポリクローナル抗体が取得できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ、β-cateninを直接または間接的に阻害することができ、かつ比較的安全性が検証されている薬剤を用いて、悪性黒色腫の持つ免疫抑制的な性質を改善できる可能性が示されている。また、担癌動物モデルでの実験結果は、薬剤が、がん細胞以外にも作用し、抗腫瘍免疫応答を増強させていることを示唆している。これらの結果は、当初の仮説どおりであり、おおむね、計画通りに研究は進んでいると考えられる。また、分子Xに関する評価に関しても、その評価系の構築にかんして、ポリクローナル抗体が取得でき、こちらも計画どおり進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
β-cateninの直接または間接的阻害剤を用いて、免疫抑制を解除し、既存の免疫抑制療法の抗腫瘍効果を増強できるかに関して、主に担癌マウスモデルを用いて検証することを重点的に進める。その作用点として、がん細胞以外の、特に免疫細胞に対する影響が、これまでの実験結果より推測されるので、その解析も行う。 分子Xに関する評価に関しては、ポリクローナル抗体が取得て来たので、その抗体の評価を進め、免疫染色やELISAなどに使用可能か判定する。 日本人の悪性黒色腫検体の収集が順調に進んでいるので、これらの検体を用いて、動物実験で得られた仮説を含め、β-cateninの活性化と抗腫瘍免疫応答の関係性を検証する。
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Research Products
(4 results)