2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒト赤芽球におけるオルガネラリロケーションの統括的制御機構の解明
Project/Area Number |
18K08315
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
鵜生川 久美 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (70646554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 直人 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (80344753)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒト赤芽球 / 脱核 / Cdc42 / CASIN |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト赤芽球の脱核を不均等な細胞質分裂の一種と考え、脱核に至る細胞極性化と収縮を統括的に制御するシグナルや情報伝達経路を明らかにすることを目的としている。特に、ヒト赤芽球脱核はCdc42阻害剤であるCASINによって抑制されることから、脱核時のCdc42の役割や他の分子との相互作用を明らかにすることとした。 1. 定量PCR及びウエスタンプロット法にて、Cdc42が脱核時まで赤芽球に発現していることを確認した。細胞内局在を共焦点顕微鏡にて観察したところ、Cdc42はCFU-Eの細胞分裂に収縮環付近に局在していた。また、脱核時にも収縮環形成位置に存在し、脱核後は網状赤血球に存在していた。 2. もう一つのCdc42阻害剤であるML141は、赤芽球増殖に影響なく、脱核にもほとんど影響しなかった。 3. Cdc42阻害剤CASIN投与によるダイニン、αチューブリン、γチューブリン、mDia2、アクチンの局在変化を、CFU-Eと赤芽球で共焦点顕微鏡にて確認した。正常ではダイニンは中心体周囲にびまん性に存在しているが、CASIN投与後はCFU-E、赤芽球ともに中心体に強く集積した。αチューブリンは、細胞分裂時に紡錘体形成を認めなくなったが、脱核時には変化を指摘できなかった。CFU-E、赤芽球ともにγチューブリンの局在には影響しなかった。細胞質分裂、脱核ともに、アクチンの集積を認めなくなった。mDia2は細胞分裂時には核から細胞質へ移動するが、CASIN投与では移動が阻害された。一方、脱核時には核内に存在し、CASIN投与で変化を認めなかった。 4. FACSによるCD71とグリコフォリンAの発現解析にて、CASIN投与がCFU-E及び赤芽球において分化に影響しないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. mDia3と他の分子の共染色が難航し、局在観察に遅れが生じている。 2. エレクトロポローション法によるsiRNAの導入を試みているが、primaryの増殖・分化をする赤芽球への導入効率は悪く、条件設定に時間を要している。また、negative control siRNAが導入された細胞が増殖しないという問題があり、標的遺伝子siRNAの導入に至っていない。 3. 本研究の分担研究者となる予定であった布村渉準教授の急逝により、ヒト赤芽球の脱核におけるエネルギー代謝制御機構の解明(研究課題15K09448)について、並行して論文化しており、本研究の遅れの一端となった。
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Strategy for Future Research Activity |
1. エレクトロポローション法では、GFPプラスミドベクターでより良好な導入効率が得られることから、Cdc42やダイニン、mDiaを導入し、共焦点顕微鏡にて、赤芽球脱核時のそれぞれの分子の挙動を継時的に観察する。Cdc42阻害剤CASINの影響についても観察する。Si RNAによるノックダウンも、引き続き条件検討を続けていく。 2. 阻害剤処理による蛋白質の変化を、プロテオミクス解析により網羅的に解析し、新規のCdc42情報伝達経路を同定する。同定した蛋白質の発現や細胞内局在をさらに検討する。 3. 赤芽球におけるCdc42-PI3K経路を、PI3Kの酵素反応生成物であるイノシトールリン酸の分子種を質量分析法により定量的に明らかにする。 4. エリスロポエチンやインスリンなどの外部刺激による情報伝達系と脱核との関連を検討する。CFU-E以降の分化段階で、エリスロポエチン、インスリンを添加しない培養液で培養し、脱核率を確認する。その条件下でのCdc42や同定された情報伝達経路に関わる蛋白質の発現を、mRNAおよびウエスタンブロットにて検討する。
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Causes of Carryover |
理由:物品購入において端数が生じたこと、標的siRNA導入に至らなかったことから次年度への繰り越しが生じた。 使用計画:今後の推進方策に基づいて実験を進める。予算は抗体、si RNA合成、ベクター構築等に使用する。
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Research Products
(4 results)