2018 Fiscal Year Research-status Report
難治性再生不良性貧血におけるトロンボポエチン受容体作動薬の効果反応予測因子の同定
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18K08318
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山崎 宏人 金沢大学, 附属病院, 准教授 (50361994)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | GPIアンカー膜蛋白欠失血球 / HLAクラスⅠアレル欠失血球 / 細胞表面抗原解析 / TPO受容体作動薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
フローサイトメトリーで血小板の表面抗原を検出することは困難であったが、血小板の活性化を避ける手技によって、HLAクラスI抗原とGPIアンカー膜蛋白の検出方法を確立できた。この方法を用いて、再生不良性貧血(AA)患者の血小板と白血球におけるHLAクラスIアレル欠失[HLA(-)]]血球の割合を調べたところ、ほぼ全例において、HLA(-)血小板の割合は顆粒球・単球におけるHLA(-)血球割合とほぼ一致していた。したがって、CTLの標的細胞は未分化なLT-HSCであり、その回復後の安定期においても、健常者の恒常的造血のようなMPP由来の血球産生ではなく、残存するLT-HSCが主に造血を支持していることが示唆された。 一方、HLA(-)血球とPNH型血球の両者を有する患者の両血球の血球系統の広がりを調べたところ、前者ではほとんどの例ですべての系統に及んでいたが、後者は一部の系統が欠落していた。このため、CTLによるHLA(-)細胞の選択は、未分化な造血幹細胞レベルで起こっているのに対して、PIGA変異細胞の選択は、分化の進んだ造血幹前駆細胞レベルで起こっていると考えられた。また、AA患者では、寛解後に造血が安定したのちも、系統別の前駆細胞ではなく、多様な分化能を持つ前駆細胞によって造血が支持されていることが示唆された。TPO-RA単独で造血が回復した症例では、ほとんどの例でHLA(-)顆粒球割合の増加がみられた。これは、寛解期においてもCTLによるHSCの選択が起こっていることに加えて、TPO-RAの標的が未分化なHSCであるためと考えられた。 一方、治療抵抗性AAにおけるエルトロンボパグ(EPAG)の奏効率と、治療開始時点での網赤血球数≧3万以上との間には強い相関がみられた。これは、AAの造血を担っているのが、TPO-R発現濃度の高い未分化HSCであることと一致する所見であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫抑制療法が奏効する再生不良性貧血(AA)患者では、血小板減少が先行することから、AAを引き起こす細胞傷害性T細胞(CTL)の標的は巨核球前駆細胞への分化能を有するMk-HSCかその上流のLT-HSCであると考えられる。一方、エルトロンボパグ(EPAG)が奏効したAA患者の造血が、CTLからの攻撃を免れたHLAクラスⅠアレル欠失[HLA(-)]Mk-HSC由来か、HLAクラスIアレルを欠失していないHLA(+)Mk-HSC由来かを明らかにするためには、HLA(-)血小板の検出が不可欠である。しかし、血小板は凝集しやすいため、血小板上のHLAアレル発現をフローサイトメトリーで検出することは困難であった。そこで、今回、以下の方法を確立した。 EDTA添加スピッツに3-5ml採取した患者検体を200gで7分間遠心し、血小板を豊富に含んだ血漿(PRP)を分離する。この際、血小板の活性化が起こらないように遠心機のブレーキを切っておき、以後の操作でも遠心操作や撹拌機の使用を避ける。5mlの丸底チューブの底に抗CD41a抗体、抗CD59抗体と抗CD59抗体を静置する。対象症例がHLA-A2またはHLA-A24のヘテロであった場合には抗HLA-A2またはA24抗体を追加する。30μLのPRPを5mlチューブの底に静かに添加し、軽く1回円を描くようにして混和する。その後、室温・暗所で30分間インキュベートする。30分後、1%牛アルブミンを含むリン酸緩衝液を添加し100倍に希釈する。希釈した検体をメッシュでろ過し、速やかにBD FACS Cant IIで測定する。以上の方法でPNH患者やAA患者における微少PNH型血球とHLAクラスI欠失血球(ただしHLA-A2とA24のみ)を血小板でも検出することが可能となり、顆粒球との間でHLA欠失の割合を比較することができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
網赤血球数が3万以上あり、LT-HSCが多く残存していると考えられる再生不良性貧血(AA)例では、TPO受容体作動薬(TPO-RA)に対する反応性が高いことが明らかになった。これに加えて、HLA(-)白血球がわずかでも検出される例では、HLA(-)のLT-HSCがTPO-RAの刺激を受けて造血回復が得られやすい可能性がある。この仮説を検証するため、我々が最近開発した「droplet digital PCRによるHLAクラスIアレル共通変異の高精度検出法」を用いて、診断後間もない患者の末梢血を検索し、免疫抑制療法に対する反応性とHLA(-)白血球との関係を検討する。検体は、西日本血液臨床研究グループで行われる臨床試験「サイモグロブリン+シクロスポリン+エルトロンボパグ(EPAG)による初回治療の有用性の検討」の参加者より入手する。 一方、難治性AAの中には、網赤血球数が3万以上ありながらEPAGが奏効しない例が少数存在する。我々が経験したそのようなEPAG無効例の2例のうち、一例はかつて末梢血に芽球を認めていた例であり、他の一例は、診断はAAでありながら、骨髄造血巣の分布が、本来は造血巣にはなり得ない末梢の長管骨に偏っていた。このため、EPAGが無効であったAAでは、LT-HSCに質的な異常を合併している可能性がある。そこで、EPAG無効例のうち、造血能が保たれているAA例を対象として、骨髄異形成症候群で変異が報告されている体細胞遺伝子の変異をパネルシーケンシングにより明らかにする。また、これらの患者単球から誘導したiPS細胞からHSCを誘導し、JAK-STAT系、Ras-MAPK系、PI3K-AKT系などのTPOシグナル分子のリン酸化をWestern blottingで検討する。
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[Presentation] Limited class I HLAs are involved in the auto-antigen presentation in acquired aplastic anemia2018
Author(s)
Mikoto Tanabe, Hiroki Mizumaki, Tatsuya Imi, Takeshi Yoroidaka, Noriharu Nakagawa, Ken Ishiyama, Hirohito Yamazaki, Yoshiraka Zaimoku, Takamasa Katagiri, Kazuyoshi Hosomichi, Atsushi Tajima, Shinji Nakao
Organizer
第80回日本血液学会学術集会
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[Presentation] Familial acquired aplastic anemia diagnosed by aberrant leukocytes that lacked common HLA alleles2018
Author(s)
Tatsuya Imi, Ryosuke Ogawa, Kazuyoshi Hosomichi, Hiroki Mizumaki, Noriharu Nakagawa, Takeshi Yoroidaka, Mikoto Tanabe, Noriaki Tsuji, Kohei Hosokawa, Hiroyuki Takamatsu, Ken Ishiyama, Yukio Kondo, Hirohito Yamazaki, Atsushi Tajima, Shinji Nakao
Organizer
第80回日本血液学会学術集会
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[Presentation] Response to IST in PNH(+) BMF patients with a history of chemo- or radiotherapy2018
Author(s)
Noriharu Nakagawa, Mikoto Tanabe, Ishikazu Mizuno, Satoshi Morishige, Shuji Matsuzawa, Takahiko Ito, Masahiko Sumi, Nobuyuki Takayama, Ken Ishiyama, Hirohito Yamazaki, Shinji Nakao
Organizer
第80回日本血液学会学術集会
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