2019 Fiscal Year Research-status Report
移植後の水痘帯状疱疹ウイルスに対する免疫再構築を基盤とした感染予防戦略の確立
Project/Area Number |
18K08320
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田中 美幸 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (10550478)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 造血幹細胞移植 / ウイルス感染症 / 水痘帯状疱疹ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
【概要】造血幹細胞移植後の帯状疱疹発症率は30-50%と高く、重篤化する傾向にあるが定まった有効な予防法はいまだ確立していない。抗ウイルス剤の長期投与を行った帯状疱疹発症抑制効果の報告がされているが、国内では予防的な抗ウイルス薬の長期投与は保険収載されておらず、さらに抗ウイルス剤の内服中止後に帯状疱疹の発症率が上昇し、長期的には発症率を抑制するに至っていない。水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)感染症においては、VZV抗体価の陽転化が見られていても水痘や帯状疱疹の発症がしばしば確認されることから、VZV感染制御には、細胞性免疫が重要であることが知られている。しかし、これまでに造血幹細胞移植後のVZVに対する細胞性免疫の再構築過程を明らかにした報告はほとんどない。本研究では、移植後患者において帯状疱疹発症の前後やVZV生ワクチン接種前後におけるVZV特異的T細胞を検出し解析を行うことで、VZV感染拡大の抑制に有効な抗原およびエピトープを直接同定することを試みた。最終的には、安全で有効な造血細胞移植後の帯状疱疹予防法の確立を目指している。 【成果】複数症例を時系列で解析することで、異なる背景を持つ症例毎に異なる再構築過程をとることが明らかになった。また、複数のVZV抗原についてそれぞれの特異的T細胞の解析を行ったところ、抗原ごとにVZVの感染制御への関与が異なることが示唆された。症例数を増やしてさらに検討している。 また、ワクチン開発の有効な候補になりうる抗原として、IE62、IE63、gEを選択し、このそれぞれの抗原ペプチドを用いて健常者の末梢血単核球を刺激し、抗原特異的T細胞を樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
探索的研究として、移植ソース(骨髄または臍帯血)や免疫抑制剤使用の有無、帯状疱疹発症の有無など背景の異なる症例について、タイムポイントまたは時系列で解析しさらにデータを蓄積している。
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Strategy for Future Research Activity |
移植後のVZV特異的T細胞について、さらに症例を増やして解析をすすめ、移植後の再構築過程を明らかにする。 また、患者末梢血からのVZV特異的T細胞の誘導と感染拡大制御効果の評価を行う。 VZV感染症の感染制御における、各抗原の特異的T細胞の役割を明らかにし、有効で安全な移植後のVZV感染症予防法を確立する。
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Causes of Carryover |
予定した計画よりも若干少ない予算で、成果を得ることができた。次年度は、さらに症例数を増やして解析を継続する予定である。また、VZVの各抗原特異的T細胞の細胞障害活性等の解析を行う計画であることから、繰越分は、当初の次年度予定予算と合わせて使用する計画である。
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