2019 Fiscal Year Research-status Report
新規実験システムを用いた血小板インテグリン制御分子の多角的解析とその応用
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18K08326
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
冨山 佳昭 大阪大学, 医学部附属病院, 特任教授(常勤) (80252667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏木 浩和 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (10432535)
加藤 恒 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20705214)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インテグリン / GPIIb-IIIa / 血小板減少 / 活性化変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、血小板機能の中核をなすインテグリンαIIbβ3(GPIIb-IIIa)の機能発現およびその制御分子の同定、解析を目的としている。申請者らは、軽度のGPIIb-IIIa活性化と血小板減少を来す症例を発表し、新たにGPIIb-IIIa関連先天性血小板減少症として報告してきた。その中でも、GPIIbのR995Wミスセンス変異に起因する先天性血小板減少症は本邦においてもっとも頻度が高い変異である(Blood, 2011)。その詳細な病態解析を目的として、本年度はGPIIbR995W変異のノックインマウスモデル(マウスではR990W)の詳細な解析を行った。 血小板数は、この変異導入によりヘテロで約10%、ホモでは約25%減少し、血小板サイズは増大した。マウス血小板GPIIb-IIIaの発現は、ヘテロでは軽度の発現低下(コントロールの75%発現)であったが、ホモではコントロールの約3%と血小板無力症に相当するまで著明に低下した。ホモマウスの巨核球GPIIb-IIIa(コントロールの60%発現)の解析にてGPIIb-IIIaの恒常的活性化が検出された。 ホモマウスを用いて血小板造血能の解析では、巨核球数およびそのploidyには異常はなかったが、ホモマウスにおいて巨核球のproplatelet形成の有意な減少を認めた。さらに抗CD42b抗体(抗GPIb抗体)を投与し血小板減少を誘導しその回復を解析すると、ホモマウスでは投与後4日目の回復が遅延した。またトロンボポエチン投与に対する反応を解析すると、ホモマウスでは、その反応に障害が見られた。 以上、本年度の解析結果よりマウスモデルではヒトに較べて血小板減少は軽度であったが、血小板減少の機序としては血小板造血、特に巨核球からのproplatelet formationに障害があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、血小板機能の中核をなすインテグリンαIIbβ3(GPIIb-IIIa)の活性化機構、特にその制御分子の同定および解析を目的としている。申請者らは、本研究においてすでにインテグリンαIIbβ3活性化の制御分子であるCalcium and diacylglycerol (DAG)-regulated guanine nucleotide exchange factor I (CalDAG-GEFI)の欠損例(世界4例目)の同定およびその機能解析に成功している(Blood 2016)。申請者らは、その詳細な機能解析を行い新たに開発したαIIbβ3の活性化スピードを解析するinitial velocity assayを用いてCalDAG-GEFIではαIIbβ3活性化は誘導されるものの、その活性化スピードが遅延しているために出血症状を来すことを明らかにした。 昨年度は、αIIbβ3の発現を減弱する自己抗体による新たな病態としての後天性血小板無力症の病態を明らかにすることに成功している(J Thromb Haemost, 2019)。 本年度においては、軽度のGPIIb-IIIa活性化と血小板減少を来す症例の集積より、新たにGPIIb-IIIa関連先天性血小板減少症を同定し、その中でも本邦にて頻度の多いGPIIbのR995Wミスセンス変異のノックインマウスの解析結果を発表することができた。その結果、血小板造血障害が主たる原因であり、特に巨核球からの血小板放出能であるproplatelet形成が障害されていることを明らかにした(J Thromb Haemost, 2020)。 以上のように、インテグリンαIIbβ3(GPIIb-IIIa)の活性化機構およびその制御分子の同定、解析に関して着実に成果を挙げている。
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Strategy for Future Research Activity |
血小板機能の中核をなすインテグリンαIIbβ3(GPIIb-IIIa)の制御分子の同定、解析を目的とした本研究は、おおむね順調に進展しているが、申請者らの新たな知見を発展するために次年度においては、以下を計画している。 1.申請者らの開発したinitial velocity assayやフローチャンバーによる流動化血小板血栓形成解析法などを用いて、種々のインテグリンαIIbβ3(GPIIb-IIIa)の制御分子異常症(血小板無力症、ADP受容体P2Y12欠損症、Kindlin-3欠損症、CALDAG-GEFI欠損症)におけるαIIbβ3の詳細な機能解析を行う。 2.申請者らは、インテグリンαIIbβ3(GPIIb-IIIa)活性化変異に起因する病態としてGPIIb-IIIa関連先天性巨大血小板減少症を提唱し、血小板減少機序に関してそのノックインマウスを用いた解析結果を公開した(J Thromb Haemost, 2020, Blood 2011, Mol Genet Genomic Med. 2013)。一方、新たな症例としてGPIIb-IIIa非活性化変異GPIIIa(R734C)を有する先天性血小板減少症の家系を同定した。現在までの解析にて、血小板減少を来す変異はすべてGPIIb-IIIa活性化変異であった。今回同定したGPIIb-IIIaの非活性化変異が、1)血小板減少を惹起するか否か、2)血小板減少を誘導した場合その血小板減少機序に関して、ノックインマウスを作製し解析する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Knock-in mice bearing constitutively active αIIb(R990W) mutation develop macrothrombocytopenia with severe platelet dysfunction.2020
Author(s)
Akuta K, Kiyomizu K, Kashiwagi H, Kunishima S, Nishiura N, Banno F, Kokame K, Kato H, Kanakura Y, Miyata T, Tomiyama Y.
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Journal Title
J Thromb Haemost.
Volume: 18
Pages: 497-509
DOI
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[Journal Article] Additional validation of Osaka method (0.01 mol/L dithiothreitol) for negating the daratumumab interference.2019
Author(s)
Hosokawa M, Kashiwagi H, Nakayama K, Sakuragi M, Nakao M, Morikawa T, Kiyokawa T, Aochi H, Nagamine K, Shibayama H, Tomiyama Y.
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Journal Title
Transfusion.
Volume: 59
Pages: 2479-2480
DOI
Peer Reviewed
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