2020 Fiscal Year Research-status Report
TAK1-Pim-2経路がもたらす骨髄腫の難治性と骨破壊の役割とその克服法の開発
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18K08329
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
安倍 正博 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (80263812)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨髄腫 / TAK-1 / 骨病変 |
Outline of Annual Research Achievements |
患者骨髄検体の組織アレイを作成し、患者検体でのTAK1活性化状態と腫瘍進展および予後との相関を検討し、骨髄腫細胞でTAK1のリン酸化あると予後が不良であることを見出した。 TAK-1阻害薬LLZ1640-2は脛骨内移植によるマウス骨髄腫モデルにおいて腫瘍の著明な縮小効果を示したが、さらに構造活性相関にて構造展開し、LLZ1640-2の活性部位を保持し、安定性を改善させた新規構造の化合物X(特許申請中)の治療効果と安全性を検証した。化合物Xは培養系でMM細胞に細胞死を誘導し、RANKLによる破骨細胞形成亢進を抑制した。また、脛骨内移植によるマウス骨髄腫モデルにおいて化合物Xは腫瘍の縮小と骨破壊の改善効果を示した。TAK-1阻害薬は腫瘍抑制とともに骨病変の進行抑制をもたらす新規治療薬になると考えられた。 骨髄腫細胞と骨系細胞との相互作用により誘導される薬剤耐性や骨病変形成におけるTAK1の役割について検討し、以下の結果を得た。1) TAK1阻害剤であるLLZ1640-2は骨髄腫細胞による骨髄間質細胞(BMSC)のVCAM-1、IL-6、RANKLの産生・発現を抑制し、BMSCを介した骨髄腫の増殖、接着依存性薬剤耐性(CAM-DR)のみならず破骨細胞形成誘導も抑制した。2)破骨細胞はBAFF、APRILやIGF1を産生し、MM細胞に液性因子依存性薬剤耐性(SFM-DR)を惹起させるが、LLZ1640-2は破骨細胞からのこれらの因子の産生を抑制した。3)MM細胞において、TAK1阻害はBAFF/APRILの受容体であるBCMAやTACIの発現を抑制するだけでなく、BAFF/APRILによるNF-κBの活性化も抑制した。4)血管新生は骨髄腫細胞の増殖・薬剤耐性や骨病変形成を惹起するが、TAK1阻害は、骨髄腫細胞のERKシグナルを抑制することによりVEGF産生も強力に抑制した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養系や動物モデルでの実験は順調に進捗している。 骨髄腫の予後や治療抵抗性と関与する新たな血清バイオマーカーが臨床で求められているが、このような血清バイオマーカーを探索するために骨髄腫細胞が分泌する蛋白の網羅的なプロテオーム解析を行ない、TAK1の活性化により分泌される可溶性蛋白を選出した。現在、バイオマーカーとしての役割を検討するために、現在患者検体を回収している。また、そのうち2つについて、CRISPR/Cas9システムによるノックアウト骨髄腫細胞株を現在作成中である。そのうちの1つであるTAK1依存的に骨髄腫細胞から多量に分泌される新規蛋白AはBMP2のおとり受容体として作用し、骨芽細胞分化を抑制し、また神経系への影響もみつかり、予後を反映するバイオマーカーの候補であるとともに病態を形成する責任因子の可能性があり、新たな研究の展開へとつながっている。
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Strategy for Future Research Activity |
骨髄腫特異的でTAK1の活性化を反映すると考えられる、網羅的プロテオームクラスター解析にて抽出した分泌蛋白に関し、骨髄腫細胞に対する各種刺激、骨髄腫細胞と破骨細胞や骨髄間質細胞との共存でTAK1の活性化とともに産生亢進されることを確認する。また、患者血清中の濃度を測定し、患者病態や治療反応性との関連の検討を開始する。現在注目している2つの因子に関しては、現在進行中のCRISPR/Cas9システムによるノックアウト骨髄腫細胞株が完成すれば、ノックアウトの有無による骨髄腫細胞株単独あるいは破骨細胞や骨髄間質細胞との共存培養が、骨髄腫細胞の増殖、破骨細胞形成、骨芽細胞分化、造血前駆細胞コロニーアッセイなどに及ぼす影響を検討する。さらに、ノックアウトの有無による骨髄腫細胞株の動物モデルでの腫瘍進展や骨病変などの病態形成への影響を明らかにする。これらの検討により、抽出した因子がハイリスク骨髄腫の層別化バイオマーカーの候補であるとともに病態を形成する責任因子かどうかを明らかにする。 最近、骨髄腫細胞のCIP2A高発現と骨髄腫患者の予後との相関が示されている。これまでの検討で、骨髄腫細胞では脱リン酸化酵素PP2Aの内因性阻害因子であるCIP2Aが高発現し、骨髄腫細胞でのTAK1の恒常的リン酸化状態を維持している可能性が示されたため、骨髄腫細胞におけるCIP2Aの発現亢進機序と骨髄腫細胞の生存・増殖・薬剤耐性におけるCIP2Aの役割の解明に向けた検討を加える。また、無刺激では正常細胞にCIP2A の発現は見られないが、骨髄腫細胞との共存下などでTAK1が活性化する環境側の細胞である破骨細胞や骨髄間質細胞におけるCIP2Aの発現誘導やその背景の分子機序を検討し、CIP2Aの骨髄腫骨微小環境における腫瘍進展・骨病変形成への重要な関与や治療標的としてのCIP2Aの有用性を明らかにする。
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[Journal Article] Clinical utility of target capture‐based panel sequencing in hematological malignancies: A multicenter feasibility study2020
Author(s)
Yasuda T, Sanada M, Nishijima D, Kanamori T, Iijima Y, Hattori H, Saito A, Miyoshi H, Ishikawa Y, Asou N, Usuki K, Hirabayashi S, Kato M, Abe M.
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Journal Title
Cancer Science
Volume: 111
Pages: 3367~3378
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The Roles of ROS Generation in RANKL-Induced Osteoclastogenesis: Suppressive Effects of Febuxostat2020
Author(s)
Ashtar M, Tenshin H, Teramachi J, Bat-Erdene A, Hiasa M, Oda A, Tanimoto K, Shimizu S, Higa Y, Harada T, Oura M, Sogabe K, Nakamura S, Fujii S, Sumitani R, Miki H, Udaka K, Takahashi M, Kagawa K, Endo I, Tanaka E, Matsumoto T, Abe M
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Journal Title
Cancers
Volume: 12
Pages: 929~929
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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