2020 Fiscal Year Annual Research Report
Roles of ribosome biogenesis disorder in the development of hematopoietic malignancies
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18K08334
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松井 啓隆 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (60379849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神力 悟 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (00583048)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RNAヘリケース / 骨髄異形成症候群 / 急性骨髄性白血病 / R-loop / DNA損傷応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、DEAD-box型RNAヘリケースDDX41の機能解析を通じて、骨髄系造血器腫瘍の発症メカニズムを明らかにすることを目的として行われた研究である。ヒトには37種類のDEAD-box型RNAヘリケースが存在し、これらはリボソームRNAの生合成・転写・RNAスプライシング・RNA核外輸送など、RNA代謝を伴う多くの生命現象に役割を果たしている。このうち、DDX41のみにおいて、造血器腫瘍で一定の割合で遺伝子変異が認められることから、本分子を鍵とした造血細胞の制御機構が存在することが示唆されている。 我々はこれまでに、DDX41がリボソームRNAのプロセシングを介してリボソーム生合成を制御することを明らかにし、報告してきた。 2018年度からの研究ではこれをさらに発展させ、DDX41がリボソーム生合成の制御を通じた翻訳制御に関与することを示すための検討を行った。リボソーム・プロファイリング法により網羅的な翻訳解析を行ったところ、DDX41の発現を抑制した細胞において特異的に、リボソーム関連因子の発現が翻訳レベルで発現誘導されることを見出した。これはおそらく、DDX41の発現低下・機能障害によるリボソーム生合成異常に対するフィードバック機構によるものと考えられ、翻訳レベルでの新たなフィードバック機構として興味深い。本成果は論文にまとめ、現在専門誌に投稿中である。 また、本研究の過程で新たに、DDX41の発現を抑制した細胞では、強いDNA損傷の誘導が生じ、これとともにR-loopが蓄積することを見出した。R-loopが蓄積する理由について現在も解析を進めているが、DDX41がRNAスプライスマシナリーのコンフォメーションを変化させることで、RNAポリメラーゼⅡをはじめとする転写伸長因子との連携を制御すること、またDDX41の発現低下・機能障害によりこの連携が失われることがR-loop蓄積の主な要因ではないかと考えている。次年度以降の解析において、この点を明らかにしていきたい。
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