2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the molecular mechanism of POEMS syndrome by single cell analysis of bone marrow plasma cells
Project/Area Number |
18K08338
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
中世古 知昭 国際医療福祉大学, 医学部, 主任教授 (30323398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三村 尚也 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (00422220)
塚本 祥吉 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00814617)
武内 正博 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (50466702)
堺田 恵美子 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (60422218)
竹田 勇輔 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (60772746)
大和田 千桂子 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (80436352)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | POEMS症候群 / シングルセル解析 / 形質細胞腫瘍 / 次世代シークエンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
POEMS症候群はplasma cell dyscrasiaを基盤として高VEGF血症とMタンパク血症を伴い,多発神経炎を始めとする多彩な全身症状を呈する予後不良な疾患であるが,その発症機構は依然不明である。我々は以前本症候群のMタンパクはほぼ全例でλ型であり,わずか2種類のgermlineに由来することを報告した。本研究は骨髄形質細胞の網羅的遺伝子解析と遺伝子発現解析に加え,単一細胞レベルで網羅的遺伝子解析を行うことにより,モノクローナル形質細胞の病的特性を明らかにし,免疫グロブリン遺伝子構造解析をもとに,in vitroにて患者特異的モノクローナル抗体を精製し,VEGF産生機構における役割を明らかにする。さらに,これらモノクローナル抗体が結合する抗原を同定することにより,POEMS症候群の発症機構を解明することを目的とした。 患者骨髄よりFACSを用いてCD138陽性形質細胞を純化し,最大96個のシングルセルRNAライブラリーを作成し,次世代シーケンサーを用いて解析した。シーケンス結果のレパトア解析によりクローナル形質細胞を同定し,さらにクローナル形質細胞に特徴的な遺伝子発現パターンの解析を行った。POEMS症候群10例(IgA-λ:5例、IgG-λ:4例、Mタンパク陰性:1例)、MGUS 2例、多発性骨髄腫2例、正常コントロール2例のシングル形質細胞RNAシークエンスを行った。クローナル形質細胞の同定にあたっては,免疫グロブリン構成遺伝子のV-D-J(V-J)のgermlineが同一、V-J間にランダムに挿入される塩基で特異的な抗原認識に重要な役割を担うCDR3領域の配列が同一,かつ免疫グロブリンのクラスが同一なものをクローナル形質細胞と定義した。遺伝子発現解析により,POEMS症候群のクローン性形質細胞の特徴を明らかにすることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨髄形質細胞のクローン比率は,MMが90%以上,MGUSが70-80%程度といずれも非常に高い割合を認めたのに対し,POEMS症候群では,5/10例のみクローンを同定した。さらにクローンが同定できた症例に関しても,そのクローン比率は7-33%と低値であった。すなわち先行研究で得られた仮説の通り,POEMS症候群では骨髄形質細胞に占めるクローナル形質細胞の割合が他の形質細胞腫瘍と比較して明らかに少ないことが証明された。さらに興味深いことに,POEMS症候群5例のクローナル形質細胞のレパトア解析では,IGLV1-44:IGLJ3:IGLC2 3例,IGLV1- 36:IGLJ3:IGLC2 1例、IGLV1-47:IGLJ3:IGLC2 1例といずれも非常に類似したgermlineを有していた。遺伝子発現解析の結果では、POEMSクローンは他の形質細胞腫瘍とは明らかに異なり,そのパターンは正常形質細胞により近いものであった。GSEAではリボゾームタンパクが高発現しており,免疫グロブリン産生が活発であることを示していた。 POEMS症候群では血中のVEGF高値であるが,VEGF産生細胞は未だ明らか となっていない。本研究ではまずクローナル形質細胞がVEGF産生に寄与している可能性を 疑い、解析を行ったが,クローナル形質細胞のVEGF mRNAレベルは非クローンもしくは他の形質細胞疾患と比較して有意な差は認められなかった。この結果から形質細胞以外の 細胞がVEGF産生を行っていることが示唆された。 以上示すように,2020年度も順調に研究が進捗しており,2020年度は研究成果を米国血液学会にて研究成果を発表した。現在論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. Bulk形質細胞RNA-seq結果とシングルセル解析の比較:POEMSクローンが同定できなかった4/9例に関しては、クローン比率が少ないことが想定されるため、同時に行っていたbulk 形質細胞RNA-seq結果のレパトア解析を行い、POEMS症候群に特異的なレパトアが認められるかどうかを解析する。 2. レパトア解析:L鎖免疫グロブリンのアミノ酸配列の解析を行うことで、POEMSクローンにおけるアミノ酸配列の相同性を検討する。 3. クローナル形質細胞の網羅的遺伝子発現解析:POEMS症候群のクローナル形質細胞の遺伝子発現パターンを、正常コントロールもしくは他の形質細胞腫瘍と比較し、POEMS症候群クローン特異的な遺伝子発現パターンが認められるかどうか検討する。特に治療標的となりうる発現変化や、新規マーカーとなりうる特異的表面抗原の同定を目指す。 4. クローナル形質細胞の遺伝子変異解析:発現量の多い遺伝子に関しては、RNAシークエンス結果から遺伝子変異解析を行うことが可能となっている。永尾の先行研究でPOEMS症候群に特異的な遺伝子変異が認められていることから、同様の遺伝子変異が認められるかどうかについて検討する。 5. 特定のgermline由来のモノクローナル軽鎖の役割の解明:患者細胞から特定のgerm lineに由来するλ鎖Mタンパクを含むモノクローナル抗体を精製し,その物理学的・生物学的特性を明らかとし,認識する抗原を探索する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大により国内・海外での学会発表の機会がなく,旅費を使用しなかったこと,研究が一時期停止してしまったことから残金が発生しました。今年度は謝金と物品費に使用致します。
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Research Products
(6 results)