2020 Fiscal Year Research-status Report
血小板ー白血球コンタクトの免疫学的解析による炎症メカニズムの解明と新規治療の開発
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18K08339
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
平橋 淳一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (70296573)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 急性炎症 / DAMPs / ヒストン / 好中球 / 糖尿病 / CD11b / CyTOF / ラクトフェリン |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病患者は心血管病をはじめ敗血症や外傷等による急性炎症に対して脆弱であることは臨床的によく知られている、我々はそのメカニズムの候補として、白血球の急性期タンパクに対する免疫応答が糖尿病により修飾を受けているという仮説をたてた。これを立証するため、金属同位体標識抗体を用いて細胞内外のタンパク質を検出するCyTOF(cytometry by time-of-flight)技術を応用し、急性炎症惹起性タンパクであるヒストンを投与したマウスの白血球を細胞表面マーカーで識別し、同時に細胞内リン酸化シグナルを単一細胞ごとに検出した。その結果、ヒストン投与後一過性にCD11b+Ly6G+(好中球分画)細胞が増加し、高脂肪食12週間投与により作成した糖尿病マウスでは、好中球分画の一部でIkBαのリン酸化が著しく亢進した。このことから糖尿病において好中球に属する特定の細胞群の炎症免疫応答が亢進している可能性が示唆された。またヒストン投与によるマウスの生存はCD11bKOマウスにおいて顕著に改善した。今後CD11bKOマウスにおける白血球細胞のリン酸化シグナルを検出し、ヒストンに反応する新たな細胞群の同定を行うことにより、糖尿病における急性炎症への脆弱性のメカニズムの一端を解明することを目指している。さらに、また、ヒト末梢血好中球と血小板を用いたin vitoroの実験では、ヒストン刺激により両細胞が複合体を形成し、これが抗Mac-1抗体で部分的に抑制された。これを電子顕微鏡で観察し、美しい写真を撮影することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
急性炎症におけるDamage-assosiated molecular patterns のひとつである細胞外ヒストンをマウスに静注すると、肺血管障害、肺血栓を始めとした多臓器不全を来すが、好中球を免疫学的に除去したマウスでは顕著に抑制された。過去の報告では、ヒストンによる血小板凝集や血管内皮病変がkeyであると説明されてきたが、好中球に依存したメカニズムを示した報告はない。Mac-1(CD11b/CD18) KOマウスでは顕著に多臓器不全や肺血管障害が抑制されたことから、細胞外ヒストンが好中球の接着因子Mac-1をkey mediatorとして作用することが判明した。また、ヒト末梢血好中球と血小板を用いたin vitoroの実験では、ヒストン刺激により両細胞が複合体を形成し、これが抗Mac-1抗体で部分的に抑制された。さらにマウス糖尿病の病態では、細胞外のヒストン刺激により動員される好中球数が顕著に増加することも新たなシングルセル解析システムCyTOFにより証明することができた。以上の成果を、国際英文誌に投稿し、今後課されると予想される追加実験にも対応して採択されることを最終目標とする。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果により、急性炎症におけるDamage-assosiated molecular patterns のひとつである細胞外ヒストンが、好中球の接着因子Mac-1(CD11b/CD18)をkey mediatorとして血小板との複合体を形成して血栓形成や血管障害を来すことを証明することができた。また、糖尿病の病態では、細胞外のヒストン刺激により動員される好中球数が顕著に増加することも新たなシングルセル解析システムCyTOFにより証明することができた。以上の成果を、国際英文誌に投稿し、追加実験にも対応して採択されることを最終目標とする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により、研究が一時期ストップしたことが理由の一つに挙げられる。また、ヒト好中球と血小板を用いた複合体形成を定量化するフローサイトメトリーの実験系の確率に予想以上の時間を要したことがあげられるが、好中球と血小板をヒストン刺激した後に固定をすることで安定した解析が可能になることを見出し、実験系が安定した。次年度には論文化のための追加実験に残額を使用する予定である。
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[Journal Article] Usefulness of tissue inhibitor of metalloproteinase 1 as a predictor of sustained remission in patients with antineutrophil cytoplasmic antibody-associated vasculitis2021
Author(s)
Ishizaki J, Takemori A, Horie K, Hiraoka D, Suemori K, Matsumoto T, Sada KE, Amano K, Harigai M, Arimura Y, Makino H, Takenaka K, Takemori N, Hasegawa H, and Hirahashi J as a collaborator..
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Journal Title
Arthritis Research & Therapy
Volume: 23
Pages: ー
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Treatment-related damage in elderly-onset ANCA-associated vasculitis: safety outcome analysis of two nationwide prospective cohort studies2020
Author(s)
Sada KE, Ohashi K, Asano Y, Hayashi K, Morishita M, Watanabe H, Matsumoto Y, Fujimoto S, Takasaki Y, Yamagata K, Banno S, Dobashi H, Amano K, Harigai M, Arimura Y, Makino H and Hirahashi J as a collaborator.
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Journal Title
Arthritis Research & Therapy
Volume: 22
Pages: ー
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Group A Streptococcus establishes pharynx infection by degrading the deoxyribonucleic acid of neutrophil extracellular traps2020
Author(s)
Tanaka Mototsugu, Kinoshita-Daitoku Ryo, Kiga Kotaro, Sanada Takahito, Zhu Bo, Okano Tokuju, Aikawa Chihiro, Iida Tamako, Ogura Yoshitoshi, Hayashi Tetsuya, Okubo Koshu, Kurosawa Miho, Hirahashi Junichi, Suzuki Toshihiko, Nakagawa Ichiro, Nangaku Masaomi, Mimuro Hitomi
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 10
Pages: ー
Peer Reviewed
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