2018 Fiscal Year Research-status Report
骨髄線維症におけるfibrocyteの線維化・髄外造血誘導機構の解析
Project/Area Number |
18K08344
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
木村 文彦 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 教授 (50536216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大澤 有紀子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 助教 (00816928)
佐藤 謙 帝京大学, 医学部, 教授 (20531297) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨髄線維症 / 線維細胞 / Chitinase-3-like 1 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄線維症は骨髄の線維化と髄外造血を特徴とする難治性疾患である。fibrocyteはマクロファージと線維芽細胞両者の性質を持つ細胞で、種々の臓器線維化疾患での関与が報告されている。我々はヒト及びマウス骨髄線維症でのfibrocyteの役割についてこれまで検討を加えてきた。その結果、fibrocyteがトロンボポエチン刺激に反応して末梢血単球から分化すること、トロンボポエチン受動態作動薬を用いた骨髄線維症モデルマウスでfibrocyteが線維化に必要であること、SLAMF7がfibrocyteとその前駆細胞で重要な細胞表面マーカーとなることを報告した。今回の研究では、fibrocyteが産生するChitinase-3-like 1 (CHI3L1)が骨髄の線維化に一定の役割を果たしており、骨髄間質細胞を刺激して線維化のもととなるコラーゲンを産生させることを示した。同時に、骨髄線維化を伴う骨髄増殖性腫瘍症例で、末梢血中のfibrocyteの割合が増加し、CHI3L1の血中濃度も上昇していることも明らかになった。骨髄増殖性腫瘍の原因遺伝子変異はいずれもトロンボポエチン受容体シグナルを活性化してfibrocyteへの分化を促進し、増加したfibrocyteがCHI3L1の濃度上昇を介して骨髄の線維化を促進していると考えられる。平行して、抗SLAMF7抗体がfibrocyteの分化を抑制しマウスの骨髄線維化を軽減することも見出している。このように骨髄線維化の細胞学的、分子的機序が明らかになることで、複数の治療標的を設定することが可能になり新規治療法開発の基盤を得ることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
fibrocyteの骨髄線維化誘導能の解析では、マクロファージに比較して発現が増加しているChitinase-3-like 1 (CHI3L1)に着目した。ヒト末梢血からのfibrocyte誘導培養系で、時間経過とともにCHI3L1 mRNAが上昇し、培養上清中のCHI3L1濃度が増加することを確認した。骨髄増殖性腫瘍症例52例を線維化なしとありの2群に分けると、血清のCHI3L1濃度は線維化あり群で有意に上昇していた。他の背景因子を加えた多変量解析を行ってもCHI3L1濃度上昇は線維化に対する有意な因子として抽出された。ROC解析の結果から、CHI3LIは38 ng/mlを閾値として感度54.8%、特異度81.0%で線維化を予測した。同様に末梢血中のfibrocyteの割合やIL-1Raが骨髄線維化と相関することを見出した。 トロンボポエチン受容体作動薬ロミプロスチムで誘導するマウス骨髄線維化モデルを用いてCHI3L1の役割を検討した。線維化誘導に伴いマウスのCHI3L1血中濃度は経時的に上昇した。骨髄のCHI3L1 mRNAも増加し、fibrocyteを含むマクロファージを除去するクロドロン酸リポソームの投与でこの増加は消失した。さらにCHI3L1ノックアウトマウスで同様の骨髄線維化誘導を行ったところ、野生型に対して骨髄の線維化が軽減されたが、血算値の変化や脾腫には影響しなかった。骨髄のmRNA解析では野生型で見られたⅢ型コラーゲンα1の発現上昇がノックアウトマウスでは消失していた。 ヒトfibrocyteの培養上清を骨髄間質細胞株HS-5に添加すると、fibrocyteの分化程度に応じてⅠ型コラーゲンα1及びⅢ型コラーゲンα1のmRNAの増加が誘導され、この効果はCHI3L1の中和抗体の添加で消失した。
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Strategy for Future Research Activity |
① fibrocyteが単独で骨髄線維症を引き起こすことができるか 作成済みのレトロウイルスベクターをマウスfibrocyte細胞株に遺伝子導入し、これを用いてマウスに接種実験を行い、骨髄線維化誘導について検討する。 ② fibrocyteの線維化誘導能の解析 fibrocyteがCHI3L1を産生し、これが骨髄間質細胞のⅠ型及びⅢ型コラーゲン産生を刺激することが明らかになった。IL-13受容体α2(IL-13Rα2)あるいはprostaglandin D2 receptor 2(PTGDR2)のどちらの受容体を介しているかについて検討を加え、この部分をまとめて学会発表及び論文発表を行う予定である。CHI3L1は分泌蛋白で、フローサイトメトリーで解析するため抗CHI3L1抗体を用いた細胞内染色を行ったが結果が安定せず、fibrocyteの分化マーカーとするにはさらに手技的な調整が必要である。また、末梢血fibrocyteの割合やIL-1Raの増加が骨髄線維化と相関することについては抗SLAMF7抗体の効果と併せて英文誌に投稿中である。 ③ fibrocyteの髄外造血誘導能の解析 CHI3L1ノックアウトマウスでの検討から、線維化誘導モデルにおいて血算値の変化や脾腫はCHI3L1の有無に影響を受けず、別の経路で惹起されていると考えられる。すでに着目しているMMP9とCXCL12の変化を中心に当初の計画に従い解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
fibrocyteの産生するCHI3L1の骨髄線維化における機能を解析するため、当初、受容体として報告されているIL-13受容体α2あるいはPTGDR2のノックアウトマウスを購入する計画を立てていた。幸運にも学内の消化器内科研究室がCHI3L1ノックアウトマウスを飼養しており、これを用いてin vivoの機能解析実験を行うことができた。そのためノックアウトマウス用に見積もっていた費用を節約することとなり次年度使用額が生じた。 次年度はfibrocyteの髄外造血誘導機序の解析を主に行う予定で、MMP9・CXCL12等の抗体やELISAキットの購入を行うが、研究の進捗により必要となるこれら分子のノックアウトマウスがかなり高額になる予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Presentation] SLAMF7high CD16negative Monocytes Increase in Peripheral Blood of Patients with Myelofibrosis in Correlation with JAK2V617F Mutation2018
Author(s)
Takaaki Maekawa, Shoichiro Kato, Yosuke Okada, Noriaki Tachi, Masahiro Teramoto, Toshikuni Kawamura, Yukiko Osawa, Shinichi Kobayashi, Ken Sato, Michihiro Hashimoto, Shinya Suzu, Kensuke Usuki, Soji Morishita, Marito Araki, Norio Komatsu, Fumihiko Kimura
Organizer
60th Annual Meeting of the American Society of Hematology
Int'l Joint Research