2019 Fiscal Year Research-status Report
変異チロシンキナーゼのシグナル伝達経路を標的とした難治性造血器腫瘍の統合的治療法
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18K08349
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三浦 修 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10209710)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 造血器腫瘍 / 分子標的療法 / チロシンキナーゼ / 急性骨髄性白血病 / FLT3-ITD / 骨髄増殖性腫瘍 / JAK2-V617F |
Outline of Annual Research Achievements |
急性骨髄性白血病(AML)で最も頻度が高く治療抵抗性ももたらすFLT3-ITD遺伝子変異を有する白血病細胞では、強力なSTAT5活性化を介してPimキナーゼの発現を誘導することでmTORC1/4EBP1/mTOR経路の活性を維持し、Cap依存性翻訳機構を増強し治療抵抗性を獲得することを見出し報告してきたが、本年度はFLT3-ITDがBCR/ABLとは異なりERKの下流でRSKキナーゼを活性化し、PIMやAKTと協調的にmTORC1経路を活性化すると共に、eIF4Bをも直接的にリン酸化することで、FLT3-ITD陽性AML細胞でのミトコンドリア依存性の内因性経路を介したapoptosisをを抑制していることを見出し報告した(Watanabe D. et al. Cancers, 2019, 11:e1827, doi: 10.3390/j.cancers1121827)。 また、骨髄増殖性腫瘍をもたらす最も頻度の高い変異であるJAK2-V617Fが、正常のJAK2に比較して、WP1130やEOAI3402143 (G9)等の脱ユビキチン化酵素(DUB)阻害薬によるUSP9Xの抑制により、K63を介したポリユビキチン化によるaggresomeへの移行と下流のシグナル経路活性化の阻害をより高度に被り、JAK2-V617F陽性造血器腫瘍細胞では酸化ストレス誘導性のp38およびJNK活性化やDNA損傷シグナル活性化と相乗的にapoptosisが高度に誘導される事を見出し報告した(Akiyama H. et al. Cancers, 2020, 12:e406, doi: 10.3390/j.cancers2020406). また、USP9X抑制による抗腫瘍効果は、治療に用いられているJAK1/2阻害薬ruxolitinib抵抗性の細胞でより高度にもたらされることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
BCR/ABL、Flt3-ITD、Jak2-V617Fなどの活性化チロシンキナーゼ変異体は造血器腫瘍の発症や進展のみでなく治療抵抗性にも寄与することを示し、活性化チロシンキナーゼ変異体からのシグナル伝達と治療抵抗性獲得機構との関連を解明すべくさらに解析を行い、急性骨髄性白血病(AML)で最も重要な活性化チロシンキナーゼ変異体であるFLT3-ITDに関して、Ph陽性白血病の原因となるBCR/ABLとは異なり、ERKの下流でRSKキナーゼを活性化し、PIMやAKTと協調的にmTORC1経路を活性化すると共に、eIF4Bをも直接的にリン酸化することで、FLT3-ITD陽性AML細胞でのミトコンドリア依存性の内因性経路を介したapoptosisをを抑制していることを明らかにすることが出来た。さらに、骨髄増殖性腫瘍をもたらす最も頻度の高い変異であるJAK2-V617Fが、WP1130やEOAI3402143 (G9)等の脱ユビキチン化酵素(DUB)阻害薬によるUSP9Xの抑制により、K63を介したポリユビキチン化を受けたFLT3-ITDがaggresomeへの移行や下流のシグナル経路活性化の阻害を、正常JAK2よりも高度に被り、JAK2-V617F陽性造血器腫瘍細胞では酸化ストレス誘導性のp38およびJNK活性化やDNA損傷シグナル活性化と相乗的にapoptosisが高度に誘導される事を明らかすると共に、現在治療に用いられているJAK1/2阻害薬ruxolitinib抵抗性の細胞ではむしろUSP9X阻害薬への感受性が亢進していることを見いだした。これらの成果により、造血器腫瘍における活性化チロシンキナーゼ変異体からのシグナル伝達と治療抵抗性獲得機構との関連を明らかし、新規治療法の開発を目指すという目標達成に向けて着実に研究を進展させることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
治療抵抗性の急性骨髄性白血病やPh陽性白血病および骨髄増殖性腫瘍に対する新規分子標的療法開発の礎となるために、これらの疾患の発症や進展および治療抵抗性獲得に重要な役割を果たす、BCR/ABL、Flt3-ITD、Jak2-V617Fなどの恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体が、mTOR/4EBP1/eIF4E経路の異常活性化等を介しての治療抵抗性をもたらす分子機構の詳細を明らかにするといつ本研究の目的を果たすための実験研究データはすでに得られており、今後は必用に応じてデータの再確認や再検討を行う。
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