2019 Fiscal Year Research-status Report
若年性骨髄単球性白血病に対する改変T細胞と分子標的薬による複合治療法の開発
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18K08350
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
松田 和之 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (00647084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中沢 洋三 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (60397312)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 若年性骨髄単球性白血病 / iPS細胞 / 分子標的薬 / GMR-CAR-T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、希少がんで細胞株が存在しない若年性骨髄単球性白血病(JMML)について、JMMLから樹立したiPS細胞を用いて、GM-CSF受容体(GMR)に対するキメラ抗原受容体(CAR)を発現させた遺伝子改変T細胞(GMR-CAR-T細胞)と分子標的薬との複合治療によるJMMLの治療モデルを構築することである。 令和元年度の研究成果として、JMML患者由来iPS細胞(PTPN11変異陽性iPS細胞とその変異をゲノム編集で修復したiPS細胞、および変異陰性iPS細胞)と健常人由来iPS細胞を用いて、CD34、GMR(CD116)の発現を確認することが出来た。具体的には各iPS細胞から血球分化誘導を行い、フローサイトメトリー法によりCD34+GMR陽性の分画の割合を得た。PTPN11変異陽性iPS細胞で6.6%、その変異をゲノム編集で修復したiPS細胞で2.1%、変異陰性iPS細胞で1.9%、健常人由来iPS細胞で0.9%であることが分かった。また、分化細胞とGMR-CAR-T細胞の共培養実験から、GMR-CAR-T細胞による抗腫瘍細胞効果を検証するためにはCD34+GMR陽性分画の細胞量が十分必要であることが確認出来た。具体的には陽性分画を分取しない状態の分化細胞とGMR-CAR-T細胞を当量混和して共培養を行った。1週間の培養後では既に生細胞がほとんどなく評価が出来なかった。 令和元年度の研究成果である各種のiPS細胞からの分化細胞におけるCD34+GMR陽性の分画割合には変異有無による差があること、及びGMR-CAR-T細胞による抗腫瘍効果の検証には十分量の陽性分画を分取して評価する必要性を明らかにしたことは、今後、GMR-CAR-T細胞との複合治療を構築するためにも基礎となる重要な知見であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GMR-CAR-T細胞と分子標的薬との複合治療によるJMMLの治療モデルを構築するという最終目的に向けて、令和元年度には、JMMLから樹立したiPS細胞から血球分化させた細胞におけるCD34とGMRの発現と変異有無による発現の違いを明らかにすることが出来た。今後のGMR-CAR-T細胞との共培養実験やその後の分子標的薬を添加した複合治療の効果判定には、標的細胞であるPTPN11変異陽性細胞、つまりJMML細胞上のGMR発現とその違いを明らかにしておく必要があったため、発現解析を優先して実施した。当初の計画であったMEK阻害剤、ファルネシル転移酵素阻害剤の抗腫瘍効果の検証(および平成30年度に候補薬剤の拡大を目的に用いた新規薬剤も含め)については、令和元年度の成果から、抗腫瘍効果の検証では、CD34+GMR陽性の分画細胞を用いて評価することが適切であるという知見から、分画細胞を用いて複数の薬剤の効果を改めて検証している段階であるため、やや遅れていると判断している。次項の研究推進方策に従い、検討を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、令和元年度の成果であるGMR-CAR-T細胞との共培養実験系については、CD34+GMR陽性の分画細胞が十分量必要であるという知見に基づき、各iPS細胞から継続的にCD34+GMR陽性細胞を分化誘導し、その都度細胞保存を行い、薬剤効果、GMR-CAR-T細胞との共培養実験時に十分量の分画細胞を使用できる体制を構築する。CD34+GMR陽性細胞を用いて、平成30年度の研究成果に基づく新規薬剤(c-met阻害剤、PI3K阻害剤)とMEK阻害剤、ファルネシル転移酵素阻害剤、およびDNAメチル基転移酵素阻害剤とヒストン脱アセチル化酵素阻害剤について薬剤濃度を決定する。その際には、GMR-CAR-T細胞の生存には影響が最小限になる薬剤濃度となるように併せて検討を行い最終濃度とする。その後、複合治療の効果を検証するため、分子標的薬およびGMR-CAR-T細胞とCD34+GMR陽性細胞を全て含んだ培養を行い、トリパンブルーを用いて生細胞数をカウントする。さらに、抗CD34抗体と抗CD38抗体を用いたフローサイトメトリーによりGMR-CAR-T細胞への影響や抗腫瘍効果を解析する。メソカルトを用いて培養を行い、GM、Erythroidコロニー数をカウントし、最終的に複合治療による抗腫瘍効果の評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
「次年度使用額が生じた理由」今年度の研究費の主な使用用途としては、iPS細胞の維持培養と血球分化誘導およびフローサイトメトリー法に必要な試薬等の購入であった。当初の計画では、MEK阻害剤、ファルネシル転移酵素阻害剤の抗腫瘍効果の検証を実験計画としていたが、抗腫瘍効果検証には、PTPN11変異陽性細胞上のCD34およびGMRの発現を解析する必要があった。そのため、血球分化誘導に必要な試薬購入に研究費を使用し、さらにCD34+GMR陽性細胞とGMR-CAR-T細胞の共培養実験における細胞量の検討に時間を要した。そのため、十分量のCD34+GMR陽性細胞を用いて、平成30年度に使用したJMMLに対する新規薬剤(c-metおよびPI3K阻害剤)の抗腫瘍効果を検討している段階であり、MEK阻害剤、ファルネシル転移酵素阻害剤の抗腫瘍効果の検証などが行えなかったため、当初の計画に計上した額との差額が生じた。 「使用計画」次年度使用額は令和2年度請求額と合わせて、CD34+GMR陽性細胞への抗腫瘍効果を最大に、かつGMR-CAR-T細胞の生存への影響を最小にする分子標的薬剤の候補を決定し、その薬剤濃度を検討する。そして、最終目的である複合治療の開発のために分子標的薬およびGMR-CAR-T細胞とCD34+GMR陽性細胞を全て含んだ培養を行い抗腫瘍効果を検証する実験に使用する予定である。
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