2019 Fiscal Year Research-status Report
白血病発症過程におけるDNA脱メチル化関連分子の果たす機能的役割の統合的理解
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18K08352
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
小埜 良一 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (40422414)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 造血器腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和1年度は、まず、前年度に引き続いて、急性前骨髄性白血病の主要な原因遺伝子であるPML-RARαキメラ遺伝子によって惹起される白血病の発症の分子機構の一端の解明に向けて、本研究で着目しているゲノムDNAメチル化関連遺伝子のその特性を生かした分子生物学的役割をあきらかにしていくべく、本研究に先行して作製していた、その遺伝子の条件的ノックアウトマウスモデルを用いた解析を進めた。先にノックアウトしたマウスの骨髄細胞を回収し、レトロウイルスを用いてPML-RARαキメラ遺伝子を遺伝子導入した細胞を、放射線照射した同系マウスに投与する骨髄移植実験の長期にわたる経時的観察を行い、その間、末梢血中の血球数や表面抗原の発現の解析等を行ってきた。その結果、一部に白血病を生じたものの、骨髄や脾臓における腫瘍細胞の性状を解析したところ、急性前骨髄性白血病とは異なる病態であった。そこで、完全欠失ではかえって発症を困難にしている可能性を考えて、ヘテロ欠失による発現減弱を生じさせた骨髄細胞において、同様な実験系による骨髄移植実験を試行し、生着したモデルマウスを得ており、現在、長期間の経時的観察を行っているところである。その一方で、白血病発症と密接に関連する、異常な自己複製能の獲得につながる分子メカニズムについて、ノックアウトのタイミングや、白血病の起源となる母地細胞の種類など、様々な条件下での検討を行いつつ、いくつかの鍵となる重要な腫瘍関連遺伝子等を介したメカニズムに注目し、別の白血病関連遺伝子による自己複製能獲得モデル系と対比を行うなどして、多角的な解析も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に先立って、公開されているデータベースに基づいて解析した、急性前骨髄性白血病の遺伝子発現プロファイリングに関するデーターを反映して、前年度、in vitroの実験系で、当該ゲノムDNAメチル化関連遺伝子の機能的欠損が白血病細胞に有利に作用することを見いだしてきた。一方で、それを踏まえた、in vivoのノックアウトマウスにおける発症に関しては、ノックアウトのタイミングや、遺伝子減弱の程度などのいくつかの観点からの条件検討が必要と考えられ、現在、条件検討を進めているところである。その際、白血病発症に至る潜伏期間は、しばしば一年を超える長期に渡ることも想定され、現在も長期的視点に立って、経時的モニタリングを行っている。その一方で、分子細胞生物学的見地から、異常な自己複製能の獲得に至る分子メカニズムに関しては、断片的ではあるが興味深い結果も得られつつある。以上から、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたin vitro実験の結果を検証するべく、in vivo白血病発症モデルの構築を目指して、ヘテロでの機能欠失モデル系での詳細な検討を進めると同時に、異常な自己複製能の獲得の解明につながる、腫瘍関連遺伝子を介した分子メカニズムの解析などを多角的に進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
実験に使用する遺伝子改変マウスを得るための交配において、予想以上に効率よく得られるなど、結果としてマウスにおける遺伝子改変の有無を検討する実験の頻度が減少し、それに要する試薬の費用が申請時の想定をわずかに下回ったため。今後も、十分な数の遺伝子改変マウスを得ていく必要もあり、今年度の遺伝子改変の有無を検討する実験に使用していく予定である。
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