2020 Fiscal Year Research-status Report
慢性移植片対宿主病の病態における好中球細胞外トラップの役割の解明
Project/Area Number |
18K08353
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 浩平 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80402858)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 好中球細胞外トラップ / シトルリン化ヒストン / 慢性GVHD / 血管障害 / 血管炎 / 川崎病 / 形質細胞様樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、慢性移植片対宿主病(GVHD)の病態形成における好中球細胞外トラップ(NETs)の役割を解明することである。この課題に対して、GVHDモデルマウスを用いた研究と、GVHD患者検体を用いた研究から取り組む計画を立てた。 これまで、慢性GVHD患者血清を用いたNETs産生能をin vitro系で測定する系の確立を試み、①蛍光試薬であるCytox Greenを用いたDNA染色や、シトルリン化ヒストンに対する蛍光標識抗体を用いた免疫染色により、NETs産生量を画像的に定量化できること、②陽性コントロールとして尿酸結晶塩刺激が有用であること、③臨床的に強い炎症時の患者血清刺激ではNETs産生が増加する傾向であること、を明らかにした。 また、モデルマウスを用いた研究では、そのコントロールとして真菌由来物質であるCAWS(candida albicans water soluble glycoprotein)の腹腔内投与による血管炎マウスを利用し、血管炎病変のNETs産生をシトルリン化ヒストンやシトルリン化反応を媒介する酵素PAD4、ならびに好中球細胞質顆粒蛋白であるエラスターゼやミエロペロキシダーゼで免疫染色することなどで評価した。さらに、このCAWS誘発血管炎マウスは川崎病のモデルマウスとして知られるため、川崎病患者の血清を用いてin vitro系でのNETs産生を検討した。 その結果、①CAWS誘発血管炎マウスの大動脈基始部や冠動脈の血管炎病変に多数のNETs形成が認められること、②炎症急性期の川崎病患者の血清は健常人好中球のNETs産生を強く誘導し、回復期の血清ではその効果がなくなること、を明らかにした。これらは、COVID-19関連川崎病類似疾患の病態にも共通する重要な所見と考えられ、欧州リウマチ学会雑誌(Ann Rheum Dis)へ報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度は研究協力者が本研究に従事できなかったため、計画通りに実験を進められなかった。その後、患者検体やモデルマウスを用いた研究を進めたが、慢性GVHDに直結するデータを集積することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、慢性GVHD患者の血清を用いたNETs産生のデータを集積するとともに、その原因となる因子についてプロテオミクス解析を行う予定である。 また、モデルマウスを用いた実験では、NETs阻害剤による介入実験などに着手し、慢性GVHDの病態におけるNETsの役割について検討したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
これまでの実験では、以前より保有していた物品を利用したり、コロナ禍で実験消耗品の入手が困難であったため実験の遂行が遅れ、物品費の支出が少なかった。また、予定していた学会参加が全てオンラインでの開催となったため、旅費が発生しなかった。 次年度は、モデルマウスの解析や患者検体のプロテオミクス解析などへの支出や、論文化に対する出費が予想され、それらに使用する見込みである。
|