2018 Fiscal Year Research-status Report
Stress hematopoiesis regualted by C/EBPbeta transcription factor
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18K08354
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平位 秀世 京都大学, 医学研究科, 助教 (50315933)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ストレス造血 / 造血幹細胞 / C/EBPβ |
Outline of Annual Research Achievements |
感染などのストレス負荷時には、好中球など骨髄球系血液細胞の需要増加に対応して、定常状態とは異なる造血制御が必要となる。このようなストレス負荷時の造血制御機構の理解は、感染・炎症の病態のみならず、化学療法・造血幹細胞移植後の造血回復などにも直接関連している他、造血器腫瘍発症の素地となる可能性も指摘されており、臨床上も非常に重要な課題である。我々は、このようなストレス負荷時の好中球造血にロイシンジッパー型の転写因子C/EBPβが特に造血幹細胞レベルで必須であることを明らかにしてきた(Nat Immunol 2006、J Immunol, 2012、Leukemia 2013、Cancer Science 2015)。本研究ではストレス負荷時の造血幹細胞の分化・増殖制御におけるC/EBPβの機能的意義について詳細な分子機構を明らかにするとともに、ストレス造血の関与する病態の理解や制御を目指すことを目的としている。 ストレス負荷時の造血幹・前駆細胞におけるC/EBPβの機能的意義を知るために、ストレス負荷によるmRNAの発現変動について検討した。5-fluorouracil投与後mRNAの発現は変動しなかったが、タンパク質レベルで発現が亢進していた。この変化は定常状態の好中球造血で重要な働きをしているC/EBPαの発現が低下するのと対照的であった。 定常状態ではC/EBPβノックアウトマウス(KO)の造血幹・前駆細胞は、野生型マウス(WT)と同程度の頻度・絶対数であった。発現変化の結果からストレス負荷時には、造血幹前駆細胞と挙動が異なることが期待された。骨髄移植の実験を実施したところ、KOは移植直後からWTに比してレシピエント中のキメリズムが低く、最初の差がその後も維持された。この結果は、C/EBPβがストレス負荷時の造血幹・前駆細胞の早期の増殖を促進することを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに定常状態及びストレス負荷時のマウス骨髄中の造血幹前駆細胞でのC/EBPβのmRNA、蛋白質レベルでの発現変化を観察した。mRNAはPCRにより増幅可能であるため、セルソーターで純化した細胞から解析が可能である。ところが、蛋白質の検出にあたっては増幅が不可能であるため、造血幹前駆細胞という非常に数の少ない細胞での解析を行うためにフローサイトメトリーを用いた。すなわち造血幹前駆細胞を同定するための細胞表面の抗原を認識する蛍光標識抗体と、細胞内のC/EBPβを認識する抗体を二次抗体で同時に染色することにより評価した。本研究では、三つあるC/EBPβのアイソフォームの発現を調べるためにフローサイトメトリーを用いることを計画しているため、その予備的検討は成功しているといえる。 骨髄移植による造血幹前駆細胞の機能評価のために、CD45.1/CD45.2のcongenic系統を使用し、CD45.1陽性のレシピエント中でドナーとして用いたCD45.2陽性細胞のキメリズムを解析した。C/EBPβ KOは、これまでに感染時の好中球産生がWTに比して劣ること(Hirai H et al. Nat Immunol, 2006)、その作用点が造血幹前駆細胞であることをこれまでに報告していており(Satake S et al. J Immunol, 2012, Hayashi Y et al. Leukemia, 2013)、今回観察された移植実験の結果は予想に合致するものであったため、今後の研究も計画に準じて進めることができると判断した。しかし、研究に用いるC/EBPβKOの出生率が悪く、大規模な実験をするために必要な数が同時に揃わないことが多く、移植の計画は遅延が続いた。
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Strategy for Future Research Activity |
C/EBPβは単一exonからなり、同じmRNAから翻訳段階で三種のアイソフォームが産生される。ほぼ全長のLiver-enriched activating protein* (LAP*)およびLAPと、N末端側を大きく欠くliver-enriched inhibitory protein (LIP)は、それぞれ機能が異なると考えられるが、細胞数の極めて少ない造血幹・前駆細胞でのアイソフォームの検出は困難であった。本研究では、単一細胞レベルでアイソフォームの発現パターンを検出する実験系を新規に開発し、それぞれのアイソフォームの造血制御における機能を明らかにする。C/EBPβのN末端に対する抗体(rabbit)と、C末端に対する抗体(goat)を組み合わせて、細胞内抗原の染色を行い、フローサイトメトリーで解析する。両方の抗体で認識されるLAP*及びLAPを発現する細胞はNおよびC-term の”double” positiveに、C末端抗体のみに認識されるLIPを発現する細胞はC-term “single” positiveとして検出されると予想される。各アイソフォームを過剰発現する細胞株で予備検討を行った後にマウス造血幹前駆細胞の解析に応用する。 C/EBPβのストレス負荷時の造血幹・前駆細胞における機能を明らかにするために、上記の骨髄移植に加えて、1)真に移植後の増殖に作用しているかどうかを明らかにするために、移植後早期の造血幹前駆細胞レベルでのキメリズム解析、2)二次骨髄移植移、3) 一次移植後の反復ストレスによる変化の三つの実験を行う。
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Causes of Carryover |
本実験計画で用いるC/EBPβノックアウトマウスは、もともと出生率が低いことが知られている。本計画では、骨髄移植実験を行うため戻し交配によって、C57BL/6系統にしているが、これによりさらに出生率が低下している。このため一定数の実験を行う際に、同時にノックアウトマウスを用意することが困難なことが多く発生したため、研究の遅延を余儀なくされることがあり、次年度使用額が生じた。今後交配数を増やして対応する予定である。
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Research Products
(19 results)
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[Presentation] Impact of Hypothermia on Differentiation and Maturation of Neutrophils.2018
Author(s)
Torikoshi Y, Shime N, Yokota A, Kamio N, Sato A, Shoji T, Kashiwagi T, Miura Y, Maekawa T, Hirai H
Organizer
American Society of Hematology, 60th Annual Meeting and Exposition
Int'l Joint Research
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[Presentation] 生体肝臓移植が施行された胆道閉鎖症の乳幼児に検出された母親に対するHLA 抗体の検討.2018
Author(s)
万木紀美子, 岡島英明, 吉澤 淳, 菱田理恵, 小川絵里, 岡本竜弥, 金城昌克, 澁谷江里香, 三浦康生, 上本伸二, 前川 平, 平位秀世
Organizer
第27回 日本組織適合性学会大会
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