2020 Fiscal Year Research-status Report
Stress hematopoiesis regualted by C/EBPbeta transcription factor
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18K08354
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
平位 秀世 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (50315933)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ストレス造血 / 造血幹細胞 / 転写因子 / C/EBPβ |
Outline of Annual Research Achievements |
造血システムは、定常状態では一定数の血球細胞を供給しているが、感染・炎症などのストレス負荷時には、好中球をはじめとした骨髄球系血液細胞の供給を増やす。このような状態の造血は「ストレス造血」、「緊急時造血」などと呼ばれており、定常状態とは異なる造血制御のしくみが働いて増大する需要に対応していると考えられる。このように宿主の需要に応じた造血制御機構の理解は、感染・炎症の病態のみならず、化学療法・造血幹細胞移植後の造血回復などにも直接関連している他、造血器腫瘍発症の素地となる可能性も指摘されており、臨床上も非常に重要な課題である。 我々は、このようなストレス負荷時の好中球造血にロイシンジッパー型の転写因子C/EBPβが造血幹細胞レベルでの作用することが重要であることを明らかにしてきた。しかし、C/EBPβがどのようにして造血幹細胞の増殖や分化を制御しているかについては不明であった。本研究ではストレス負荷時の造血幹細胞の分化・増殖制御におけるC/EBPβの機能について詳細な分子機構を明らかにすることを目的としている。C/EBPβは単一エクソンからなり、同じmRNAから蛋白質への翻訳段階で三種のアイソフォームが産生される(LAP*、LAP及びLIP)。LAP*およびLAPと、N末端側を大きく欠くLIPは、それぞれ機能が異なると考えられるが、細胞数の極めて少ない造血幹・前駆細胞でどのように発現しているかを検出することは困難であった。本研究では、C/EBPβのN末端(N-term)に対する抗体と、C末端(C-term)に対する抗体を組み合わせてフローサイトメトリーで解析する方法を考案し、ストレス負荷時の造血幹細胞では間初期にLIPの発現が亢進し、後期にLAP及びLAP*の発現亢進が続くことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概ね研究は予定通りの進捗状況であったが、申請者は2020年6月に前職の京都大学を退職し、7月以降東京薬科大学に着任した。コロナ禍での研究室の移動となり、物資の確保や新たな研究室の立ち上げのために時間を費やす必要が生じた。新たな研究環境は施設・機器共に十分整備されているが、研究に必要なノックアウトマウスの輸送・飼育手続きや繁殖にも時間がかかっている。これらの状況のため、研究計画に遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、研究室の立ち上げに伴う研究機器・消耗品や実験動物の移動・繁殖などに時間を要したことに加え、コロナ禍での物資の調達に時間がかかったために研究計画に遅延が生じた。現在、研究室は整備されつつある。 今後、ストレス負荷後の時期特異的なC/EBPβのアイソフォームの機能解明を、C/EBPβノックアウトマウスでのストレス負荷後の経時的な解析、各アイソフォームのレトロウイルスによる過剰発現系と骨髄移植を組合わせた実験で細胞分化や細胞周期を解析して明らかにする予定である。さらに詳細な分子メカニズムの解明のためにはマウスの造血幹細胞下部であるEML細胞を用いた過剰発現系とshRNAによるノックダウン系を用いて明らかにする予定である。最終的には時期特異的な各アイソフォームの転写制御の標的遺伝子の同定を目指す。 また、ストレス負荷によるアイソフォームの発現制御機構についても、これまでに開発したアイソフォームのフローサイトメトリーによる解析系を活用して各刺激とシグナル伝達に関わる分子の阻害剤等を組みあ和得て解明してく予定である。
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Causes of Carryover |
申請者は2020年6月に前職の京都大学を退職し、7月以降東京薬科大学に着任した。コロナ禍での研究室の移動となり、物資の確保や新たな研究室の立ち上げのために予想以上に時間を費やす必要が生じた。新たな研究環境は施設・機器共に十分整備されているが、研究に必要なノックアウトマウスの輸送・飼育手続きや繁殖にも依然として時間がかかっている。これらの状況のため、研究計画に遅延が生じたことから、次年度使用額が生じた。
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