2019 Fiscal Year Research-status Report
Aza-dCによるMDS患者の貧血改善における翻訳調節機構の関与
Project/Area Number |
18K08357
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
長町 安希子 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (20585153)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | アザシチジン |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄異形成症候群で汎用されるDNAメチル化阻害薬、アザシチジン(Aza)が、MDSの貧血を改善するメカニズムを明らかにするため、K562細胞株にAza-dCを処理し赤血球に分化させる実験系を中心とした検討を進めた。これまでの検討から、Aza-dCを処理したK562細胞では、蛋白合成を促進する翻訳伸長因子のひとつであるeEF1A2のプロモーター領域がほぼ完全に脱メチル化されて発現が優位に増加することや、さらに翻訳開始因子であるeIF2αが脱リン酸化され活性化することを明らかにした。今年度は、AzaによるeIF2αのリン酸化・脱リン酸化制御因子の探索のため、eIF2αのリン酸化に関与する酵素として報告されている、eIF2AK1キナーゼやHRI、Ppase1、PKRの発現レベルやメチル化状態について検討を進めた。また、Azaによるクロマチン領域の解析と新規関連因子の同定するため、Aza-dC処理したK562細胞でATAC (Assay for Transposase-Accesible Chromatin)-seqを行い、Aza-dC処理により変動するオープンクロマチン領域の同定と、変動したオープンクロマチン領域内の転写因子等の候補遺伝子の抽出を試みた。ATAC-seqの結果と、これまでに行ったAza-dC処理したK562細胞のRNA-seq発現データ解析と照らし合わせ、特に翻訳関連因子を中心にAza-dCで重要な役割を果たす因子を中心に解析を進めた結果、いくつかの候補遺伝子の抽出に成功した。現在、候補遺伝子の細胞株への過剰発現実験などの解析を行っており、候補遺伝子の絞り込みを進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね予定通りに進行している。その理由として、今年度に予定していた実験が細胞株を使用するシンプルな実験系であることと、大学構内で次世代シークエンスのサンプル処理と解析できる設備環境と人材が整っていたことによる。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、Aza-dC処理したK562細胞におけるeIF2αのリン酸化酵素eIF2AK1キナーゼ、HRI、Ppase1、PKRの発現レベルとメチル化状態の解析から得られた結果をもとに、どの酵素が中心となって赤血球分化を促進しているのか検証する。また、K562細胞の実験系だけではなく、ヒト臍帯血CD34+前駆細胞などの細胞を用いた実験系で赤血球の分化段階におけるこれらリン酸化酵素の発現レベルやメチル化状態を精査する。K562細胞株以外の実験系で変動が見られなかった場合は、免疫沈降法などの手法によりeIF2αの新規リン酸化酵素や脱リン酸化酵素の同定を試みる。さらに、ヘム合成酵素の点からのアプローチを進める。これまでの検討から、Aza-dCを処理したK562細胞ではヘム合成酵素であるHMBSとPPOX、ALAS2のタンパク発現量の亢進が見られたが、ALAS2のみmRNAの発現量が亢進しており、ALAS2の上流因子である翻訳効率抑制因子IRP2やE2 LigaseであるFBXL5が動いている可能性がある。そこで、これら因子のメチル化状態と発現レベルを確認し、ALAS2の発現上昇の起因となるAzaの標的遺伝子を特定する。加えて今年度行ったATAC-seqにより抽出した候補遺伝子の解析を進め、候補遺伝子の絞り込む。
|
Causes of Carryover |
国際学会への不参加と、遺伝子改変マウスの解析が予定より遅延していることによる。次年度に本来の目的で使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)