2018 Fiscal Year Research-status Report
CALR遺伝子変異により発症する骨髄増殖性腫瘍に対する新規治療戦略の開発
Project/Area Number |
18K08372
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
楊 インジェ 順天堂大学, 医学部, 助教 (90808643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 則夫 順天堂大学, 医学部, 教授 (50186798)
今井 美沙 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50709003)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨髄増殖性腫瘍 / 変異型CALR / 低分子化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
フィラデルフィア染色体陰性の骨髄増殖性腫瘍(以下MPNと略する)は、造血幹細胞レベルに体細胞変異が生じることで引き起こされる造血器の腫瘍である。MPNの予後は概ね良好であるが、一部の患者は、血栓症の併発による著しいQOLの低下や、予後不良の骨髄線維症や急性白血病を発症する。最新の分子標的薬を用いても寛解には至らず、根治は、治療関連死のリスクのある造血幹細胞移植に限られていることから、根治を目指した有効な治療薬の開発が切望されている。 本研究では、変異型CALRによる腫瘍性細胞増殖を試験管内で再現した系を用いて、化合物ライブラリースクリーニングを行い、変異型CALR依存性の細胞増殖を阻害する11個の低分子化合物を取得した。さらに、取得した11個の低分子化合物の受容体下流シグナル伝達機構への影響を明らかにするため、変異型CALRによるTPO非依存性のMPL活性化が生じているUT-7/TPO細胞を、これらの化合物存在下で培養した上で、蛋白質抽出液を調製し、イムノブロット法を用いて、MPL下流シグナル伝達分子であるJAK2、ERK、STATファミリーの活性化状態を評価した。その結果、取得した11個のうち1個の低分子化合物において、これらのシグナル伝達系全てに阻害が見られた。今後は、この低分子化合物を用いて、変異型CALRによるMPLの活性化自体が抑制されている可能性について、変異型CALRとMPLの相互作用や、細胞内での局在部位の変化を明らかにする。 本研究の推進により、腫瘍細胞選択性の高い低分子化合物の作用機序を解明が進み、医薬候補分子としての可能性を明らかにされ、MPNの根治を目指した有効な治療薬の開発が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、変異型CALRによるTPO非依存性のMPL活性化が生じているUT-7/TPO細胞を、11個の低分子化合物存在下で培養した上で、蛋白質抽出液を調製し、イムノブロット法を用いて、MPL下流シグナル伝達分子の活性化状態を評価した。その結果、取得した11個のうち1個の低分子化合物において、これらのシグナル伝達系全てに阻害が見られたことから、概ね研究は順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
MPL下流シグナル伝達系に阻害を与えた低分子化合物を用いて、変異型CALRによるMPLの活性化自体が抑制されている可能性について、変異型CALRとMPLの相互作用や、細胞内での局在部位の変化を明らかにする。しかしながら、これらに関して阻害効果が見られない場合は、変異型CALRにより惹起された細胞内の異常により、低分子化合物による細胞増殖の抑制が起きていることが考えられることから、化合物を担体に共有結合させた上で、結合する蛋白質を質量分析により解析し、化合物の標的分子を同定する。いずれの場合も、明らかになった低分子化合物の作用点を、既知の薬剤やshRNAで阻害した際に、低分子化合物と同様の効果が得られることを明らかにすることで、取得した低分子化合物の作用機序を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
研究協力者の協力により、研究は順調に進んでいる。次年度使用額は、細胞の培養に必要な培地や血清、低分子化合物の購入費用などの一部に使用する予定である。
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[Presentation] トリプルネガティブ本態性血小板血症症例の臨床像と遺伝子変異.2018
Author(s)
稲野資明, 荒木真理人, 福田泰隆, 森下総司, 落合友則, 三澤恭平, 伊藤雅文, 山本紘司, 楊印杰, 田口鉄平, 枝廣陽子, 今井美沙, 後藤明彦, 大坂顯通, 小松則夫.
Organizer
第80回日本血液学会学術集会
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[Presentation] 変異型 CALRの多量体化は MPLとの結合と活性化に必須である.2018
Author(s)
荒木真理人, 楊印杰, 今井美沙, 水上喜久, 木原慶彦, 角南義孝, 増渕菜弥, 枝廣陽子, 弘中由美, 大佐賀智, 大坂顯通, 小松則夫.
Organizer
第80回日本血液学会学術集会
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[Presentation] Boarding on the secretary pathway is required for the oncogenic property of mutant calreticulin.2018
Author(s)
Araki M, Masubuchi N, Hayashi E, Yang Y, Imai M, Kihara Y, Mizukami Y, Hironaka Y, Edahiro Y, Ohsaka A, Komatsu N.
Organizer
23rd Congress of the European Hematology Association
Int'l Joint Research