2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K08395
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
新江 賢 杏林大学, 保健学部, 講師 (50306669)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | キチン / アレルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、マウスにおいて、タンパク質抗原単独ではアレルギーは誘導されないが、ダニ外殻の主要な構成成分である「キチン(Chitin)」と共に吸入すると、アレルギー応答が誘導されることを見出した。ダニの死骸や糞を吸入することにより、喘息などのアレルギーが誘発されると考えられており、キチンは新規のダニアレルギー誘発物質であると考えられる。しかしながら、これに関わる細胞膜上のキチン受容体およびシグナル伝達機構は不明である。申請者はこれまでに、この機構に関与しうる分子としてキチナーゼファミリー分子をマウス肺より同定している。本分子は、キチンによる樹状細胞の活性化に関与することから、キチンによるダニアレルギーの誘発に関与している可能性がある。そこで、本申請では、ダニアレルギーの発症機構の解明を目的として、以下の点について明らかにする。 1)キチンによる気道炎症のメディエーターの解明 キチンによる気道炎症に関わるメディエーターや細胞が、キチンによるアレルギー誘導に関与することが推測される。 2) キチナーゼファミリー分子の産生細胞・産生機序の解明 キチナーゼファミリー分子の産生細胞・産生機序がキチンによるアレルギー誘導に関わると同時に、ダニアレルギーの感受性を決める要因の一つであるかもしれない。 3) キチナーゼファミリー分子の遺伝子欠損マウスの作成とその解析 キチナーゼファミリー分子の生体内における役割を明確にする。 4)キチンによるシグナル伝達に関わる分子の解明を目指す。 受容体をはじめ、キチンのシグナル伝達機構はほとんど明らかとなっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) キチンによる気道炎症のメディエーターの解明 キチンをマウスに吸入させると、好中球や好酸球の浸潤を伴う気道炎症が誘発される。したがって、この気道炎症に関与するメディエーターや細胞が、キチンによるアレルギー誘導に関わる可能性がある。様々なサイトカインの欠損マウスを用いてキチンによる気道炎症を誘発した結果、キチンによる気道炎症にIL-1が関与しうることが明らかとなっている。 2) キチナーゼファミリー分子の産生細胞・産生機序の解明 キチナーゼファミリー分子を発現する細胞が肺組織に存在することを確認するため、マウス肺についてキチナーゼファミリー分子の免疫染色を試みた。その結果、肺胞上皮細胞、細気管支の気道上皮細胞、白血球等が同分子を発現することが形態学的に明らかとなっている。 3) キチナーゼファミリー分子の遺伝子欠損マウスの作成とその解析 CRISPR/Cas9システムを用いて、現在までに4匹の欠損マウスが得られている。 4)キチンによるシグナル伝達に関わる分子の解明 キチン刺激によりTNF-aを産生する細胞株が明らかとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
1) キチンによる気道炎症のメディエーターの解明 今後、その他のメディエーターや細胞を明らかにする。 2) キチナーゼファミリー分子の産生細胞・産生機序の解明 今後、各種細胞マーカーとの多重染色およびFACS解析により、キチナーゼファミリー分子の産生細胞の同定を進めていく。 3) キチナーゼファミリー分子の遺伝子欠損マウスの作成とその解析 今後は、戻し交配(バッククロス)を実施していく。 4) キチンによるシグナル伝達に関わる分子の解明 今後、本細胞株にTNF-aのプロモーター配列とレポーター遺伝子を導入し染色体に組み込む(stableな細胞株を樹立する)。さらに、gRNAラブラリーとCRISPR/Cas9システムを用いて遺伝子変異をランダムに誘導することにより、キチンによるシグナル伝達に関与する遺伝子を同定していく。
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