2018 Fiscal Year Research-status Report
腸管マスト細胞の存在が食物アレルギーに対する免疫寛容誘導に与える影響の解明
Project/Area Number |
18K08416
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
中野 信浩 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30420839)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 食物アレルギー / 経口免疫療法 / 腸管マスト細胞 / Notchシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
経口免疫療法(OIT)は、食物アレルギーを寛解に導くことのできる現在のところ唯一の治療法である。本治療法は原因食物を漸次増量しながら経口摂取させて脱感作を誘導し、その後持続的な不応答性(SU)の獲得を目指すものである。しかしながら、今のところ脱感作やSUの誘導メカニズムはほとんど明らかにされておらず、そのため一般的な治療法になり得ていない。 本研究では、OITにより脱感作及びSUが誘導されるメカニズムを明らかにすることを目的として、まずOITのマウスモデルの作製を試みた。卵白アルブミン(OVA)で免疫されたマウスにOITを施すことで、食物アレルギーマウスモデルでアレルギー症状が誘発される量のOVAを投与しても症状が誘発されない、脱感作及びSU状態が誘導されるマウスモデルを確立した。次に、このマウスモデルを用いて、OITにおける、免疫細胞の機能調節に関与するNotch受容体を介したシグナルの寄与を検討した。 OIT期間中にNotchシグナル阻害剤を投与すると、脱感作は正常に誘導されたものの、SUの獲得は顕著に阻害された。OITマウスでは、食物アレルギーマウスに比べ脾臓における免疫抑制性サイトカインIL-10の産生が増加していたが、阻害剤投与群ではその増加が認められなかった。そこで、いくつかのIL-10産生細胞についてその増減を解析した。OITマウスの脾臓及び血中において、制御性T細胞(Treg)の割合に変化は見られなかったが骨髄由来免疫抑制細胞(MDSCs)が食物アレルギーマウスに比べて有意に増加しており、阻害剤投与マウスではその増加が見られなかった。以上のことから、OITによるSUの獲得には、MDSCsの全身性の増加及びMDSCsによるIL-10産生が関与しており、NotchシグナルはMDSCsの増加に寄与していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
経口免疫療法による食物アレルゲンに対する耐性獲得メカニズムの解明を目指した研究では、平成30年度の研究により経口免疫療法マウスモデルを確立することができ、本マウスを用いて様々な解析を行うことが可能になった。現在、その成果をまとめており論文投稿の準備中である。 また、腸管マスト細胞の分化および機能発現の分子的メカニズムの解析を目指した研究では、平成30年度の研究により多くのデータが得られており、現在その研究成果を補足するためのデータを取得している。これらのデータが得られ次第、論文にまとめ投稿する予定である。 抗原提示細胞としての腸管マスト細胞の役割の解明を目指した研究では、C57BL/6系統のMHC class II欠損マウス及びマスト細胞欠損マウスを、食物アレルギーマウスモデルの作製に適したBALB/c系統へと戻し交配する作業がほぼ終了した。今後、これらのマウスを用いて本格的に解析を行っていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
最優先課題として、現在投稿準備中の経口免疫療法による耐性獲得メカニズムの解明に関する論文の投稿、及び腸管マスト細胞の分化および機能発現の分子的メカニズムの解析に関して追加の実験を行い、これまでに得られたデータと合わせて論文を作成する。 また、抗原提示細胞としての腸管マスト細胞の役割の解明に関しては、食物アレルギー研究に適した系統のマウスを準備できたことから、今後これらのマウスを用いて本格的な解析を行っていく。具体的には、MHC class II欠損マウスの骨髄細胞から分化誘導させたマスト細胞をマスト細胞欠損マウスに移植し、そのマウスに食物アレルギーを誘発させて影響を解析していく。
|
Causes of Carryover |
(理由)おおむね計画通りに使用したが、民間助成金が得られたことと、節約により257,079円の次年度使用額が生じた。 (使用計画)257,079円の次年度使用額は、2019年度分として請求する助成金と合わせ、研究に必要な試薬・機器類、実験動物の購入や論文投稿などの研究成果発表のための経費として使用する。
|
-
[Journal Article] Identification of inhibitory mechanisms in pseudo-allergy involving Mrgprb2/MRGPRX2-mediated mast cell activation2019
Author(s)
Takamori A, Ozawa K, Kaitani A, Ando T, Okamoto Y, Maehara A, Tanabe A, Nagamine M, Yamada H, Uchida S, Uchida K, Isobe M, Hatayama T, Watanabe D, Ando T, Ide T, Matsuzawa M, Maeda K, Nakano N, Tamura N, Ikeda K, Ebihara N, Shimizu T, Ogawa H, Okumura K, Kitaura J
-
Journal Title
Journal of Allergy and Clinical Immunology
Volume: 143
Pages: 1231~1235.e12
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Leukocyte mono-immunoglobulin-like receptor 8 (LMIR8)/CLM-6 is an FcRγ-coupled receptor selectively expressed in mouse tissue plasmacytoid dendritic cells2018
Author(s)
Kaitani A, Izawa K, Maehara A, Isobe M, Takamori A, Matsukawa T, Takahashi M, Yamanishi Y, Oki T, Yamada H, Nagamine M, Uchida S, Uchida K, Ando T, Maeda K, Nakano N, Shimizu T, Takai T, Ogawa H, Okumura K, Kitamura T, Kitaura J
-
Journal Title
Scientific Reports
Volume: 8
Pages: 8259
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-