2018 Fiscal Year Research-status Report
MRSAの網羅的遺伝子情報を基としたバイオフィルム形成過程の病態解明
Project/Area Number |
18K08426
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岩田 恭宜 金沢大学, 附属病院, 特任助教 (90432137)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 感染症学 / 腎臓病学 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢化社会を迎えた本邦では、肺炎が死因の第3位になり、その数は増加している。年齢が高いほど、肺炎による死亡者の割合が多くなり、感染症対策は健康長寿の達成のため重要である。また最近、多くの抗菌薬に耐性を示す、多剤耐性菌の存在が、感染症管理を困難にしている。伊勢志摩サミットでは、多剤耐性菌が世界的な課題として取り上げられ、また、世界銀行も、多剤耐性菌による経済的損失は、2050年までに610兆円に上ると警告している。多剤耐性菌対策は医学・医療のみならず、多方面から大きな注目を集めている。これまで我々は多剤耐性菌、ことにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の網羅的遺伝子情報と、臨床病態の関係を解析してきた。その結果、接着・バイオフィルム関連遺伝子領域の変異が、感染症の発症と相関し、また特定の変異を持つ株は、有意に血流感染症を起こしやすいことを見出した。本検討では、最近の遺伝子情報に着目し、我々のもつ網羅的遺伝子解析の技術により、その病態への関与、形成機序、さらに新規治療標的の可能性を検討する。これらの検討により、新たなバイオマーカーや、感染症の予後予知因子の可能性、また、新規治療薬、感染防止デバイス創出などの基盤を形成することを目的とする。 平成30年度は、MRSAの接着、バイオフィルム形成能を抑制する新規分子の探索を行った。その結果、ある新規分子がその接着を抑制することが明らかとなった。新規分子は、その濃度依存的にMRSAの接着能を抑制し、さらにその増殖能には影響しなかった。現在、その分子機序に関して検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り、昨年度はMRSAの接着、バイオフィルム形成能を抑制する新規分子の探索を行った。その結果、ある新規分子がその接着を抑制することが明らかとなった。新規分子は、その濃度依存的にMRSAの接着能を抑制し、さらにその増殖能には影響しなかった。これらは今まで報告がなく、本課題を遂行することにより得られた新たな知見である。今後の新規創薬、感染症管理を考えるうえで、非常に重要な結果であると考えられる。当初の実験計画書に基づいて施行し、予定通り結果が得られたため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
新規分子が接着、バイオイルム形成能を抑制する分子機序を、網羅的遺伝子解析の手法を用いて検討する。これにより、菌体接着・バイオフィルム形成・成熟と菌体離脱の病態を明らかにしたい。また、我々は、接着、バイオフィルム形成に関与する遺伝子領域の変異が感染症の関与していると仮定している。その遺伝子変異による感染症の病態および免疫担当細胞の形質の変化を検討する。バイオフィルムを形成したMRSAと、マウス骨髄由来マクロファージを共培養し、マクロファージの表面化マ―カー、遺伝子発現解析、貪食能を評価する。遺伝子・アミノ酸変異の有無により、同様の実験を行い、その反応性の変化を検討する。また、これら変異を持つ血流感染症および臓器障害に及ぼす影響を動物モデルを用いて検討する。これらの感染症モデルを用いて新規分子の治療効果を検討する。
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Causes of Carryover |
実験試薬などをキャンペーン価格などで購入することができたため。次年度に研究試薬や実験動物購入のため使用する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Gut microbiota-derived D-serine protects against acute kidney injury.2018
Author(s)
Nakade Y, Iwata Y, Furuichi K, Mita M, Hamase K, Konno R, Miyake T, Sakai N, Kitajima S, Toyama T, Shinozaki Y, Sagara A, Miyagawa T, Hara A, Shimizu M, Kamikawa Y, Sato K, Oshima M, Yoneda-Nakagawa S, Yamamura Y, Kaneko S, Miyamoto T, Katane M, Homma H, Morita H, Suda W, Hattori M, Wada T.
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Journal Title
JCI Insight.
Volume: 3
Pages: 97957
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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