2019 Fiscal Year Research-status Report
improvement of the sensitivities of clinical metagenomics and microbial genomics
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18K08431
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
元岡 大祐 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教(常勤) (10636830)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メタゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、感染症患者の臨床検体から網羅的で迅速な病原体の検出・同定を行い、感染症の原因を明らかにすることを目的とする。次世代シークエンサーを用いたメタゲノム解析法は、病原体ごとに異なる処理は必要とせず、臨床検体中の遺伝情報を解読することで、既知の病原体はもちろん、未知の病原体も、また複数の病原体も同時に検出・同定し得るものである。さらに全核酸の配列をシークエンスしているので、病原体の検出と同時に病原体ゲノムの遺伝子型のタイピングも実施可能である。 しかし、本手法では、臨床検体中の核酸配列を網羅的に解読するため、得られるデータ量は、検体中に存在する生物のゲノムサイズとそのコピー数の積に比例する。そのため、ゲノムサイズの小さなウイルスや細菌など病原性微生物由来の配列は、メタゲノムデータにおいて、その配列数がごくわずかとなる。また微量の核酸を対象にNGSでの解析に必要な核酸量に増えるまで増幅を行うため、ライブラリ調製過程でキメラ配列を生み出したり、ゲノムの一部の情報しか得られないことが多々ある。そこで本研究では、病原体の検出感度向上とバイアスのない病原体ゲノムデータの取得に向けた開発を行う。本年度は、ライブラリ調製方法の検討によるウイルスゲノムの検出感度向上に取り組んだ。特にウイルス感染症が疑われる症例の中でも、髄液や血清などといった無細胞系の臨床検体中には核酸の全体量が少ない。そこで微量RNAからも効率的にNGSライブラリが調製できるように、1細胞RNA-Seqのために開発された複数のライブラリ調製方法を用いて比較検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ライブラリ調製方法の検討によるウイルスゲノムの検出感度向上に取り組んだ。また病原性について理解するうえでは、病原体の検出のみならず、種・亜種レベルでの同定が必要である。そのため感度向上のみならず、病原性微生物について、ゲノムワイドな遺伝情報が得られる必要もある。髄液や血清など無細胞系の臨床検体から抽出される核酸量は少ないために、効率よくNGSのライブラリ化ができないでいた。そこで1細胞由来のRNA-Seqで用いられている技術をこのような無細胞系の臨床検体由来の核酸を対象としたメタゲノム解析にも利用できないか検討した。1細胞由来RNAからのライブラリ調製方法としては、SMART-SeqやRamDA-Seqなどがあるが、これらはpgオーダーのRNAしかない場合でも、より効率的にまたバイアスを減らしてRNAからcDNAを増幅することができる。 そこで本年度は、臨床検体から抽出した核酸に対するライブラリ調製方法として、従来から取り組んできた方法に加えて、SMART-SeqとRamDA-Seqによるライブラリ調製方法の検討に取り組み、メタゲノムデータの比較解析を行った。その結果、今回用いた方法で最大7倍ほどの感度向上に成功した。また、ゲノムワイドに配列情報を取得することもできており、遺伝子型のタイピングについても従来法より感度良く実施できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床検体中のウイルスゲノムをより感度良く検出するためのライブラリ調製方法の検討の取り組みは、概ね順調に進めることができたが、実際に取得したメタゲノムデータ中には8割以上の重複配列(PCR duplicate)を含んでいることも明らかになった。従来法のライブラリ調製方法では、それらに加えてキメラ配列なども含んでいたため、比較的改善されたとはいえるが、PCR duplicateは病原体検出を行う上では、排除して解析するため、取得したデータを有効活用しきれていない。また、感度向上につながってはいるものの、未だにウイルス由来の配列は、膨大なシークエンスデータ中の1割にも満たない状態である。大部分が病原体由来配列ではないため、コストに無駄があるというだけでなく、不要なホスト由来核酸にリードが専有されるために感度が低いという課題が残っている。次年度は、高感度化を目指した病原体核酸の効率的なシークエンス方法の検討に取り組むこととする。これまでに実施してきたカラムによるウイルス濃縮方法を発展させ、より効率的な濃縮方法を検討していきたい。
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Causes of Carryover |
年度の後半より、新型コロナウイルスの流行により、研究活動の遅延を余儀なくされた。本年度実施予定であった、他の臨床検体を用いた研究については、次年度以降に実施する予定である。
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Research Products
(6 results)