2019 Fiscal Year Research-status Report
サフラン色素クロシンを粘膜アジュバントとした経鼻インフルエンザワクチンの開発
Project/Area Number |
18K08445
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
吉野 直人 岩手医科大学, 医学部, 特任准教授 (20372881)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アジュバント / 粘膜免疫 / ワクチン / 糖型界面活性剤 / インフルエンザ |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 安全性確認:粘膜アジュバント候補物質であるクロシンを経鼻投与後、24時間間隔で体重体温を測定し、7日後に血球算定および病理解析を行なった。観察期間中、体重体温の変化はなく、血球数・ヘマトクリット値・ヘモグロビン値に異常値は見られなかった。鼻粘膜組織および嗅球で炎症応答は認められなかった。 2. インフルエンザ特異免疫解析:インフルエンザウイルスは臨床分離株であるA/Iwate/1130/2009 (H1N1pdm)を元株としたマウス馴化ウイルスを用いた。β-プロピオラクトンで不活化し、全粒子不活化インフルエンザウイルス抗原(WIIV)を実験に使用した。WIIVのみ(単独群)、WIIVとクロシン(クロシン併用群)をそれぞれマウスに経鼻免疫後、気管洗浄液、鼻腔洗浄液、血液中のウイルス特異的抗体価を測定した。併用群の気管洗浄液中のIgA抗体価は単独群より有意に上昇した。また、鼻腔洗浄液中のIgAおよび血漿中のIgG抗体価には有意差はなかったものの、併用群は単独群より高い傾向にあった。長期免疫応答を解析するために経鼻接種を行なった。1年程度の観察期間を設け次年度に記憶免疫の誘導を確認する。 3. 感染防御試験:免疫したマウスに致死量のマウス馴化ウイルスを経鼻感染させた。感染実験は1)単独群、2)併用群に加え、3)クロシン単独経鼻接種(クロシン群)、4)生理食塩水経鼻投与(非免疫群)で行なった(各群8匹)。ウイルス感染後に死亡したマウスの匹数は、単独群1、併用群0、クロシン群8、非免疫群8であった。感染3日後の併用群での気管洗浄液中のウイルス量は非免疫群の1/1000未満、単独群の約1/5に低下していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インフルエンザ特異免疫の解析、安全性の確認、感染防御試験を当初の研究実施計画に従って順調に研究を遂行した。スプリット型インフルエンザウイルス抗原を用いた研究に若干の遅れがあるが、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に免疫を行なったマウスでの長期免疫応答を継続して観察する。スプリット型インフルエンザウイルス抗原を用いてのアジュバント効果(免疫応答および感染防御効果)の解析を行う。さらに、インフルエンザ特異的抗体の量的解析のみならず質的解析を行うため、中和試験、交差反応試験を行う。得られた知見をまとめ論文を作成する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:全粒子不活化インフルエンザウイルス抗原を用いてのクロシンの粘膜アジュバント効果の解析を先行させたためスプリット型インフルエンザウイルス抗原を用いた研究に予定していた物品費の一部が未使用となった。 次年度使用額の使用計画:スプリット型インフルエンザウイルス抗原を用いた実験のための物品費として使用する。
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