2018 Fiscal Year Research-status Report
PNAを用いたLAMP法によるマクロライド耐性梅毒トレポネーマの検出系の開発
Project/Area Number |
18K08446
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
樽本 憲人 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (00746993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 卓哉 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (20383763)
早川 智 日本大学, 医学部, 教授 (30238084)
中山 周一 国立感染症研究所, 細菌第一部, 主任研究官 (80280767)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 梅毒 / PNA-LAMP法 / マクロライド系薬耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画の目的は、検体採取から結果の判定までがその場で実施可能であり、限られた機器で実施可能なLAMP法を用い、マクロライド耐性の有無についても同時判定可能な梅毒トレポネーマのPOCTを開発することである。 まず、以後に実施する臨床分離株の使用に向けて埼玉医科大学倫理委員会にて承認を受けたのちに研究を開始した(番号885)。 最初に、マクロライド系薬に対する耐性を担う、梅毒トレポネーマの23S rRNAのミスセンス変異(A2058G)領域を標的とし、LAMPプライマーを設計した。まず感度の評価を行ったが、これは上記領域をサブクローニングしたプラスミドをテンプレートとして検討したところ、至適温度62℃であり、102コピー/反応の感度で増幅が確認された。この反応は、梅毒トレポネーマと異なる菌種として、同じ属の菌種であるTreponema denticola および病原性のある一般細菌28菌種のゲノムDNAで増幅が確認されず、特異性の高い反応であることが確認された。 また、耐性に関与するA2058をclampし、かつLAMPプライマーの伸長末端が相補鎖に結合することを阻害するようPNAプローブを設計した。野生株と変異株を1株ずつLAMP反応液に添加し、WTの反応を阻害するように設計されたPNAプローブ加えたものと加えなかったもので反応を確認した。その結果、PNA非添加のLAMP反応では、野生株および変異株においてLAMP反応がみられたが、PNA添加のLAMP反応では、変異株のみ反応がみられ、野生株は反応が見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、以後に実施する臨床分離株の使用に向けて埼玉医科大学倫理委員会にて承認を受けたのちに研究を開始した(番号885)。 最初に、LAMP法を用いた梅毒トレポネーマの検出系の検討を行った。マクロライド系薬に対する耐性を担う、23S rRNAのミスセンス変異(A2058G)領域を標的とし、PrimerExplorer 4を用いてLAMPプライマーを設計した。感度に関しては、上記領域をサブクローニングしたプラスミド(pEX-A2J1)をテンプレートとして、10倍希釈系列を作成して検討したところ、62℃が至適温度であり、102コピー/反応の感度で増幅が確認された。この反応は、Treponema denticola (JCM 8153T)およびNational BioResource Projectより供与された、Chlamydia trachomatisを含む一般細菌30菌種のゲノムDNAでは増幅が確認されず、特異性の高い反応であることが確認された。 また、PNAプローブについては、耐性に関与するA2058をclampし、かつLAMPプライマーの伸長末端が相補鎖に結合することを阻害するよう設計した。研究分担者より譲渡を受けた臨床分離株である事前にPCRにて確認済の野生株と変異株を1株ずつ準備した。これらをLAMP反応液に添加し、WTの反応を阻害するように設計されたPNAプローブ加えたものと加えなかったもので反応を確認した。その結果、PNA非添加のLAMP反応では、野生株および変異株においてLAMP反応がみられたが、PNA添加のLAMP反応では、変異株のみ反応がみられ、野生株は反応が見られなかった。これらの反応はいずれも再現性を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで実施してきた内容のうち、LAMP反応の特異度評価において、一般細菌30菌腫のゲノムDNAを用いたが、淋菌が加わっていなかったため、これを用いて反応がないかどうか確認が必要である。また、PNA添加のLAMP反応は、複数検体ずつ実施し、再現性を確認する必要がある。 上記以外では、実際に採取した臨床検体に応用し、その有効性を検証するとともに、AZM耐性変異の出現頻度を明らかにする。検体採取は、研究協力者らにより梅毒トレポネーマの感染が疑われた患者(1期、2期梅毒)から採取された検体を対象とする。検体は皮膚潰瘍性病変、ならびに咽頭擦過物を用いる。事前に担当主治医よりインフォームドコンセントを行い、書面にて患者の同意を得たのち検体を採取する。検体は匿名化のうえ回収し、使用するまで-80℃で凍結保存とする。使用する際には、すみやかに95.5℃の加熱変性し、まずそのままのLAMP反応にてPNA添加の有無を含めたLAMP反応を検証する。感度・特異度に問題がある場合にはPURE DNA 抽出キット(栄研化学)を用いて簡易的にDNAを抽出する。検体量に応じて、濃縮など必要なステップの追加を検証する。同時に、リアルタイムPCR:反応のコントロールとして、tp0858 gene に対するReal time PCR法を同時に行い、梅毒トレポネーマの存在と正確な同定を実施する。さらに可能であれば、その結果を臨床にフィードバックし、その後の治療と経過にどのように影響を与えたか、検証する。
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Causes of Carryover |
次に購入予定であった、「PNAプローブ」価格の見積もりが\100,000と、予算越えており、繰り越しとした。
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