2019 Fiscal Year Research-status Report
劇症型感染における起因菌および外毒素の新規迅速分析法の確立
Project/Area Number |
18K08449
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
上田 たかね 帝京大学, 医学部, 講師 (80459312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斧 康雄 帝京大学, 医学部, 教授 (10177272)
西田 智 帝京大学, 医学部, 助教 (10409386)
藤崎 竜一 帝京大学, 医療技術学部, 准教授 (00527442)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細菌毒素 / 感染症 / 迅速分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌感染により惹起される急性感染性電撃紫斑病( Acute Infectious Purpura Fulminans : AIPF )は、初期の発熱から短時間で播種性血管内凝固が起こり、末梢の紫斑、皮膚・筋肉壊死へと進行する致死率の高い疾患である。救命できた場合でも虚血壊死部の切除により患者のQOLは著しく低下する。起因菌は、髄膜炎菌 (Neisseria meningitidis, 主に米国 )、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、溶血性連鎖球菌(S. pyogenes)などがある。 感染においてスーパー抗原の免疫系に与える影響の報告は多いが、複数種の菌により本疾患の明確な病原因子はまだ不明である。本研究の目的は、劇症型の電撃紫斑病Purpura fulminans (PF)感染を起こす肺炎球菌の病原因子の同定を行うことと、これを標的とした新規迅速・高感度分析法を確立することである。前年度に引き続き、PF患者由来2株、Sepsis患者由来6株、肺炎患者由来3株のNanopore による全ゲノム解析を行った。前年度に解析を終了しているIlluminaによるデータと統合した計11株の全ゲノム配列を得ることができた。その結果、ファージ由来の配列が見られた株もあったが、全11株のゲノムサイズはいずれも約2Mbであった。Coregeneによる全ゲノム系統樹においては、PF1とPF2は系統が最も離れており、莢膜型も異なることが明らかになった。PF株にのみ存在する病原因子の探索は、劇症型株が2株しかないことによる統計学的解析の限界があったが、PF株にのみ存在する遺伝子配列部を持つ因子を1つ同定することができた。 この因子のリコンビナントタンパクを作製し、インビトロでの機能について解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度内にはIlluminaによるショートリードの結果は全株得られたがNanopore解析にあたり解析に供するgenomic DNAのクオリテイに問題があり、精製方法の改善を要した。今年度はNanopore解析を遂行しうるハイクオリテイのDNA調整法 及び解析を「先進ゲノム支援」の支援を頂き、解析対象とした肺炎球菌全11株のNanoporeによるロングリード全ゲノム解読を行うことが出来た。11株のゲノムサイズは概ね2Mbであり、莢膜型においても、劇症型、Sepsis、肺炎の病型との有意な相関は見られなかった。しかしながら、劇症型であるPF株にのみ存在する遺伝子配列を有する候補を1つ同定することが出来た。すでにデータベースに登録されている多くの肺炎球菌の該当分子の遺伝子配列とも比較解析中である。本解析株の配列も論文投稿が完了次第、DDBJへの登録公開を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
有望な候補因子を同定できたことから、PF株型とSepsis/肺炎型のリコンビナントタンパクを作製しインビトロでの浸潤作用を解析するとともに、この遺伝子のdeletionなどを行い、病型への関連を解析する。 リコンビナントタンパクを免疫してモノクローナル抗体を作成し、中和抗体および、検出プローブを開発し、迅速高感度検出系を確立する。
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Causes of Carryover |
申請時には自身が獲得できた研究費による全ゲノム解析の外部への受託解析を想定した金額を算定していたが、「先進ゲノム支援」の支援課題に採択されたため、外部受託分が少し残ることとなった。 ゲノム解析は終了したが、標的分子の機能解析が今年度の新たな課題となってきたため、機能解析のための遺伝子発現や病原因子機能解析の実験のための消耗品購入、論文作成投稿費用に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)