2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel antimicrobial method targeting conjugation systems of drug-resistant plasmid
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18K08455
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
川野 光興 川崎医科大学, 医学部, 講師 (00455338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小椋 義俊 九州大学, 医学研究院, 准教授 (40363585)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬剤耐性細菌 / ファージ療法 / アンチセンスRNA / 遺伝子発現制御法 / カルバペネム腸内細菌科細菌 / 必須遺伝子 / 生育阻害法 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗菌薬の濫用により、従来の抗菌薬が効かない薬剤耐性 (AMR) 細菌が世界中で増えている。さらに、複数の抗菌薬に耐性をもつ様々な「多剤耐性菌」が確認されている。特に「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 (CRE) 」は、細菌感染症治療において最後の切り札とされるカルバペネム系抗菌薬に対しても耐性を示し、臨床医療の現場での脅威となっている。このため、感染症の治療が困難になるケースが増加しており、その拡散伝播防止対策が臨床的にも公衆衛生学的にも最重要課題となっている。抗菌薬と耐性菌の問題は国内だけの問題ではなく全世界的な問題となっており、2050年までに薬剤耐性菌の感染によって年間1000万人が死亡するという予測が最近報告された。また、多剤耐性菌感染による経済的損失は100兆ドル(およそ1京円)を超えると推定されている。しかし、製薬企業による新薬開発の重点はより多くの収益が見込める慢性病治療薬へと移り、抗菌薬の開発は急減している。耐性菌に対して抗菌薬以外の方法で制御可能な治療法を見出すことは重要かつ急務である。 当該年度では、アンチセンスRNAを発現するファージを用いて、薬剤耐性の性質を付与する接合伝達プラスミドを保有する細菌のみを標的とする新規抗菌法の開発を行った。まず、細菌の生存に必須な遺伝子を標的とするアンチセンスRNA (asRNA) の発現により細菌の生育を阻害することのできる遺伝子発現系の構築を行った。次に、そのアンチセンスRNAによる遺伝子サイレンシングシステムを、ファージとプラスミドの両方の性質を兼ね備えたM13ファージミドに組込み、F性線毛特異的感染作用を用いて宿主大腸菌株に導入し、それら細菌への生育阻害効果を調べた。その結果、臨床分離カルバペネム耐性腸内細菌科細菌において99.99%以上の抗菌効果のある人工アンチセンスRNA配列を複数同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の結果から、生育必須遺伝子を標的とするaRNAを発現するファージを用いて世界で初めて溶菌を伴わない抗菌作用を得ることができた。今回開発した方法は、耐性遺伝子の種類に依存せず、薬剤耐性プラスミド保有菌に特異的な抗菌作用をもたらす方法であるため、新規の薬剤耐性菌においても応用可能と考えられる。 汚水流入水を用いて、臨床分離カルバペネム耐性肺炎桿菌に感染し殺菌することのできる天然ファージのスクリーニングも行い、複数のファージを単離することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
感染モデル動物実験を行い、今回開発したアンチセンスRNA発現ファージミドによる治療効果を検証する予定である。臨床分離薬剤耐性菌をできるだけ多く収集して、それら菌株に感染し殺菌することのできる天然ファージのスクリーニングもさらに規模を大きくして行う予定である。
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Causes of Carryover |
所属していた大学から支給された研究費を使用して当該研究課題を遂行するための消耗品等を購入することができたため、初年度は次年度への繰越額が生じた。次年度支給額と合わせて、感染動物実験やファージスクリーニングを行うための消耗品や機器等を購入する予定である。
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