2019 Fiscal Year Research-status Report
効率的な抗インフルエンザメモリーCD8 T細胞の誘導法の開発
Project/Area Number |
18K08456
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
吉澤 彰宏 国際医療福祉大学, 医学部, 講師 (30407093)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | T細胞 / メモリー / インフルエンザ |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスにA型インフルエンザウイルス(PR8)を感染させた後、肺実質内には2つの免疫優性エピトープに対するCD8T細胞が主に残留する。それらのCD8T細胞は、核タンパクに由来するペプチド(NP366-374)、もしくは核酸ポリメラーゼに由来するペプチド(PA224-233)を、H2-Db拘束性をもって認識する。抗原とMHC分子の相互作用の違いが、細胞にどのような分子的性質の相違をもたらすのかを、トランスクリプトーム解析を用いて明らかにしようとした。 セルソーターを用いて単離したNP366-374/Db CD8T細胞とPA224-233/Db CD8T細胞からRNAを抽出、GeneChip Affymetrix Mouse Transcriptome-1 arraysを用いて遺伝子発現データを、Gene set enrichment analysis (GSEA)やweighted gene co‐expression network analysis (WGCNA)の手法を用いて解析した。 結果、NP366-374/Db CD8T細胞は、高度に活性化され、よりエフェクター細胞の形質を示すのに対して、PA224-233/Db CD8T細胞は、よりメモリー細胞の形質を示すことがわかった。また、PA224-233/Db CD8T細胞には、TCRシグナリング、RIG-I-likeシグナリング、NOD-like受容体シグナリング、MAPKシグナリングが強く作用しており、さらに抗菌活性タンパクであるラクトトランスフェリンを発現していることも分かった。つまり、PA224-233/Db特異的 CD8メモリーT細胞は、”組織内で病原微生物に対する警戒状態にある”ことが推察された。 NP366-374/Db CD8T細胞は、Tim3,Lag3,PD-1,CTLA4,TIGITなどの、”疲弊化”をもたらす分子が多く発現し、PA224-233/Db CD8T細胞とは、抑制のメカニズムが異なることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インフルエンザウイルス抗原特異的な2種のCD8T細胞の分子生物学的な解析は順調に進んでいる。遺伝子データの解析方法の習得等に時間がかかり、当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、インフルエンザウイルス抗原特異的な2種のCD8T細胞の分子的な相違をもたらす遺伝子データを取得したが、それらCD8T細胞にタンパクレベルで相違が存在するかを確認していく作業が必要である。具体的には単離したCD8T細胞を、目的の表面タンパクを認識する抗体で染色し、フローサイトメトリーで確認する予定である。そしてメモリーT細胞の維持に必須かつ特異的なバイオマーカーを同定する。 インフルエンザ感染後、1ヶ月から半年程度経過した後も肺組織内に残留するNP366特異的CD8T細胞やPA224特異的CD8 T細胞の局在を切片上で確認し、さらにレーザーマイクロディセクション法を用いてsingle cell レベルのRNA seqデータを取得する。他の免疫細胞、気道上皮細胞との相互接着を考慮したこのデータから、メモリー形質を与える因子を同定する。
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Causes of Carryover |
2020年3月に出席予定であった学会がコロナウイルスにより中止となったり、研究日程が変更となってしまったため、次年度使用額が生じてしまった。
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