2018 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of cellular senescence associated with HBV infection and the effect of anti-HBV nucleic acid analog
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18K08460
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
鍬田 伸好 (東伸好) 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 主任研究員 (60361218)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 抗HBV核酸アナログ / 老化関連β-ガラクトシダーゼ / p21 / p16 / テロメア長 / SASP |
Outline of Annual Research Achievements |
核酸アナログ製剤はHBV感染症の治療に有効であるが、治療では長期の服薬期間が必須である為、安全性の高い薬剤開発が望まれている。我々はこれ迄に新規核酸アナログを複数デザイン・合成・同定している。しかしながらこれら核酸アナログの長期投与及びHBV感染そのものがHBV感染肝細胞に及ぼす影響については国内外を見ても殆んど評価されていない。
そこで本研究ではHBV感染に伴う肝細胞老化の評価を行い、さらに抗HBV核酸アナログがそうした細胞老化にもたらす効果を検討、細胞老化の是正に働くのかあるいは悪化をもたらすのかをも明らかにし、我々が臨床応用に進めようとしている化合物の臨床応用適性を決するに資する。
平成30年度はヒト肝キメラマウス由来ヒト新鮮肝細胞であるPXB細胞群にHBVを暴露し、既知および新規抗HBV核酸アナログを添加状態で一定期間培養を続け、老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β gal)活性、細胞増殖性、及び細胞老化マーカー等で評価を行った。HBV暴露のPXB細胞群では、HBV非暴露状態のPXB細胞群に比べSA-βgal活性が低下し、細胞老化マーカーである p21の核内でのタンパク発現量が減少する傾向がある事、別の細胞老化マーカーである p16の細胞質での発現量はHBV暴露/感染によりHBV非暴露状態のPXB細胞群に比べ上昇する傾向がある事を明らかにした。 また上述のHBV感染曝露/感染PXB細胞群のSA-βgal活性レベルは、核酸アナログの添加によりHBV非暴露状態のPXB細胞群と同等のレベルに引き上げられる傾向がある事を見出した。一方で、テロメアDNA長は、HBV暴露のPXB細胞群ではHBV非暴露状態のPXB細胞群よりも短縮されている事を明らかにした。更に、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いて、核酸アナログの存在自体が細胞老化に与える影響について同様の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではHBV感染に伴う肝細胞老化の評価を行い、更に抗HBV核酸アナログがそうした細胞老化にもたらす効果を検討、細胞老化の是正に働くのかあるいは悪化をもたらすのかをも明らかにすることを目的とする。当初の計画では、研究の全期間内にHBV感染肝細胞の細胞老化状態を、SA-βgal、p16やp21といった細胞老化マーカー等を指標に in vitro 及び in vivo にて定性及び定量的に評価し、更に新規抗HBV核酸アナログの存在自体が細胞老化に与える影響についても、同様の手法で複数のヒト由来細胞種で明らかにする予定であった。
上述の様に平成30年度はin vitro評価系の結果として、HBV感染の確立を確認したPXB細胞群において、非感染細胞と比べ: 1)SA-βgal活性 2)p16及びp21タンパク発現量 3)テロメアDNA長, において差異が認められることを見出した。また、そのような変化は、現在臨床に供されている抗HBV核酸アナログの存在によっても影響を受ける事が判明し、生体内ではHBV感染と薬剤が複合的に関与している事が示唆された。またHUVECを用いて、核酸アナログ自体が細胞の老化に与える影響についても並行して評価を行い、ある種の核酸アナログ添加では、添加群の方が無処置群よりSA-βgal活性及び老化関連サイトカインであるIL-6, IL-8の産生が上昇する事、一方で薬剤を添加した実験群におけるp21のタンパクはwestern blottingによる評価法により、自然老化HUVEC細胞で発現が確認されるのに対し検出限界以下のレベルである事を明らかにした。一方で、in vivo評価系での検討と上記のin vitroでの現象についてメカニズムの解析は現在進行中である。
以上のことから平成30年度の研究進度および現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度/令和元年は、実験の再現性を確認するために平成30年度と同様にPXB細胞ならびにHUVECを用いたin vitroでの細胞老化評価の実験を進める。一方で in vivo評価系での検討を進める。具体的には以下3群のヒト肝キメラマウス:1)HBV感染無し・核酸アナログ投与無し; 2)HBV感染有り・核酸アナログ投与無し; 3)HBV感染有り・核酸アナログ投与有り,より採取された肝臓切片サンプルを用い、細胞老化関連因子の発現レベルと局在を主として免疫染色法で解析する。
これらの研究結果から、HBV感染および抗HBV核酸アナログが肝細胞老化にもたらす効果、並びに、既知および新規核酸アナログ単独の存在が肝細胞を含む多種なヒト由来細胞の老化に与える影響が一層明確になると考えられる。そのため、核酸アナログがどのようなメカニズムでHBV感染症治療時に、細胞老化を含む細胞の生理機能を修飾するのか、また核酸アナログそのものがヒト由来細胞の老化にどのようなメカニズムで影響を与えるのかについてへの解明に向けて研究を進める。具体的にはこれまで得られた細胞老化の表現形の発現パターンから、我々の核酸アナログが細胞老化にもたらす影響がDNAへのダメージ、複製限界、酸化ストレス等のいずれの誘発因子によってもたらされたのかを、DNA damage response, Reactive Oxygen Species等を定性もしくは定量評価し推測する。更に、推測された細胞老化誘発因子の細胞内signaling pathwayの特定を阻害剤等を用いて試みる。
そのような検討を通じ、HBV感染のみを抑制し生理的な細胞機能に障害を与えない安全性の高い新規抗HBV核酸アナログ合成に有用なデータを蓄積し、新規化合物の再デザイン・合成に資することを目指す。
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