2018 Fiscal Year Research-status Report
下垂体腺腫におけるインプリント異常を含むDNAメチル化脱制御の解析
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18K08481
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
吉本 勝彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (90201863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水澤 典子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (80254746)
岩田 武男 新潟薬科大学, 薬学部, 准教授 (10350399)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 下垂体腺腫 / インプリント遺伝子 / メチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
正常組織でのインプリント機構は厳密に制御され、その領域の遺伝子は細胞増殖や分化に重要な役割を果たすとされるが、下垂体腺腫におけるインプリント機構が維持されているのか不明である。 正常下垂体7例、GH産生腺腫7例、PRL産生腺腫 3例、FSH/LH産生腺腫 6例、ACTH産生腺腫 5例、ナルセル腺腫 3例を対象に、インプリント遺伝子12種類の発現変動をリアルタイムPCRにて検討した。このうち、MEG3 (14q32.2)はFSH/LH産生腺腫で低下、PLAGL1/ZAC1 (6q24.2)はFSH/LH産生腺腫で低下、PEG10 (7q21.3)はFSH/LH産生腺腫で増加、H19およびKCNQ1OT1 (11p15)はFSH/LH産生腺腫およびACTH産生腺腫で低下、IGF2 (11p15)はACTH産生腺腫で低下、PEG3 (19q13.43)はACTH産生腺腫で低下、NNAT/PEG5およびBLCAP (20q11.2)はACTH産生腺腫で増加を認めた。GRB10 (7p12.1)、MEST (7q32.2)およびGNAS (20q13.32)では優位な発現変化を認めなかった。 MEG3が位置する14q32.2に位置するインプリントDLK1-DIO3領域内に位置するmiRNAクラスターもFSH/LH産生腺腫で発現低下を確認している。NNAT遺伝子発現はACTH産生腺腫で増加しているが、H19から産生されるmiR-675により抑制される可能性がある (miRDB, TargetScanによる予測)。ACTH産生腺腫 におけるH19の低下に伴うmiR-675の低下が、NNAT発現上昇に影響した可能性も考えられる。また、マイクロアレイ解析でACTH 産生腺腫/ナルセル腺腫におけるmiR129a-5pの発現低下を認めているが、NNATがmiR-129a-5pの標的候補でもあるため、今後、miR-675およびmiR-129a-5pによるNNAT発現調節の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下垂体腺腫におけるインプリント遺伝子発現に各タイプで差異を見出した。このことは各タイプの下垂体腺腫では正常下垂体に比してインプリント遺伝子発現制御の破綻が存在することを示唆する。インプリント遺伝子発現はアレル間でメチル化状態の異なる領域(DMR: differentially methylated region)により調節されているが、各タイプの下垂体腺腫でDMRのメチル化状態が異なることが予想される。このメチル化状態はMS-MLPA法、パイロシークエンス法、バイサルファイトシークエンス法などで検討を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
各タイプの下垂体腺腫におけるインプリント遺伝子発現量の解析(リアルタイムPCRによる)について、さらに下垂体腺腫の例数を増やすことが必要である。また、各タイプの下垂体腺腫においてゲノム全体の低メチル化(ゲノム不安定性を誘発し発がんに関与するとされる)が認められるか否かを、LINE-1の5’非翻訳領域のDNAメチル化状況をパイロシークエンス法により解析する。ゲノム全体の低メチル化はLINE-1のメチル化レベルが指標となることが知られている。さらに正常下垂体に比べて各タイプの下垂体腺腫において発現の差異が認められるインプリント遺伝子においては、インプリント遺伝子発現調節領域のメチル化異常の有無について、MS-MLPA法、パイロシークエンス法、バイサルファイトシークエンス法で解析する。
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Causes of Carryover |
各下垂体腺腫におけるインプリント遺伝子の発現解析に焦点を当てたので、当初予定した遺伝子発現調節領域のメチル化解析にまでは至らなかった。このため高額であるMS-MLPAキットを購入しなかったことより次年度使用額が生じることになった。平成31年度にはMS-MLPAキットを購入する予定であり、物品費が多くなる予定である。
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