2020 Fiscal Year Research-status Report
SMRTによるレチノイン酸受容体シグナル制御と肥満抑制メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K08486
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
清水 裕晶 獨協医科大学, 医学部, 助教 (60594398)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肥満 / レチノイン酸 / 転写抑制因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
転写抑制補助因子SMRTを全身で欠失させた遺伝子改変マウスは、普通食による飼育下でも顕著な肥満を生じるが、その原因が不明であり詳細な解析を進めている。本マウスは遺伝子改変早期より顕著な脂肪肝を発症し、かつ肝臓内のレチノイン酸分解遺伝子群の発現が有意に亢進する。これはレチノイド(ビタミンA)欠乏マウスに極めて類似した表現型であり、この表現型についての解析結果は、一昨年、米国学術誌に報告した(Shimizu H, et al. PLoSOne 2019)。 代表者は、この肥満化現象の原因として、SMRT欠失によって肝臓内のレチノイド代謝酵素の発現が抑えられなくなり、レチノイドが肝臓で過剰消費される結果、全身性の欠乏症状である肥満をきたすと仮定した。本研究の核心はこれを明らかにすることにある。昨年度はSMRTの標的分子となるマウス肝臓内レチノイド代謝酵素群をLC-MS/MSによるプロテオミクス解析の手法を用いて網羅的に抽出を試みた。その結果、遺伝子改変マウス肝臓でレチノイド代謝律速酵素群の発現上昇を複数同定した。これはレチノイド分解がマウス肝臓で亢進し、脂肪肝発症の原因となる可能性をより強く示唆する結果である。加えて、更なる組織解析の結果、興味深いことに、本遺伝子欠失マウスでは、血中のACTH・副腎皮質コルチゾールの濃度が上昇していることがわかった。今後は更に質量分析装置を駆使し、下垂体などマウスの様々な組織を解析することにより、SMRTによる肝臓のレチノイド代謝と関連した全身性の肥満抑制機序の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、肝臓におけるSMRTの標的蛋白分子を中心にLC-MS/MSを用いたプロテオミクス網羅的解析によって抽出を試み、その結果、レチノイド代謝律速酵素のALDH1A1や活性型ビタミンA分解酵素であるCYP26A1蛋白の発現亢進を認め、in vivoでレチノイド分解が亢進している可能性が示唆された。これによりSMRT全身ノックアウトマウスに生じる肥満化現象における脂肪肝の原因について、病態機序の解明につながる知見を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
更なる組織の解析の結果、興味深いことにノックアウトマウスの血液中のACTH・コルチゾール濃度が上昇していることを突き止めた。肥満、骨格筋の萎縮など本マウスに認められる全身症状の主病態に副腎皮質ホルモンの分泌異常も関係する可能性が示唆された。次年度は、昨年度までに明らかにしたSMRTの肝臓内レチノイド代謝酵素遺伝子の調節機能のみならず、下垂体内分泌機能との関連にも注目して解析を進める。得られた解析結果については当該年度中にまとめ、英文学術誌に投稿することを検討している。
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Causes of Carryover |
前年度の研究過程でSMRTの下垂体における機能を更に解析する必要性が生じ、実験マウスの繁殖を継続した。その結果、次年度も助成金を繰り越して使用する必要性が生じた。追加実験に必要なマウス匹数はすでに得られてきており、次年度費用は主に組織の追加解析と論文作成に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)