2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K08494
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
近藤 邦生 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, 助教 (90784950)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 視床下部 / 糖代謝 / 仮性狂犬病ウイルス / 骨格筋 / 褐色脂肪 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖(グルコース)は体内の主要なエネルギー源であり、脳は糖の体内濃度が適切に保たれるように制御する。白色脂肪から分泌されるレプチンは、脳の視床下部に働きかけて筋肉や脂肪の糖取込みを促進し、血中の糖濃度を下げる重要な働きを担っている。また、視床下部の腹内側核に存在する神経細胞がレプチンのシグナルを受け取ることがわかっている。しかし、腹内側核から筋肉や脂肪まで、レプチンのシグナルを伝える神経回路はほとんどわかっていない。本研究は、視床下部腹内側核から骨格筋と褐色脂肪にレプチンのシグナルを伝え、糖の取込みを制御する神経回路を明らかにする。 昨年度に得られた知見を踏まえ、本年度は骨格筋・褐色脂肪にシグナルを伝える神経回路の詳細な解析を行なった。神経細胞に感染するとシナプス結合を介して上流の神経細胞に逆行的に輸送される仮性狂犬病ウイルスBartha株を骨格筋・褐色脂肪に接種し、ウイルス感染細胞を解析した。その結果、ウイルス接種3日後にウイルスに感染する神経細胞が、脳中枢の中で最も下流に位置し、脊髄を介して末梢組織を制御している可能性を見出した。さらにこれらの神経細胞を解析したところ、視床下部室傍核と腹側延髄において、ウイルス感染細胞の多くが特定のマーカー遺伝子を発現していることがわかった。また、レプチンを欠損させたマウスにおいては、視床下部室傍核や腹側延髄などのウイルス感染細胞が大きく減少しており、レプチンを介したシグナルが、脳中枢と末梢組織を結ぶ神経回路の構築・維持に重要な可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳中枢のシグナルを骨格筋・褐色脂肪へ伝達する重要な神経細胞・脳領域を同定することに成功した。さらに、それらの神経細胞の多くに発現するマーカー遺伝子を同定し、末梢組織を制御に重要な可能性がある神経細胞群の同定に成功した。さらに、これらの神経細胞の数がレプチンの欠損により減少することを見出し、脳中枢―末梢組織間神経回路の構造の構築・維持においてレプチンが重要な働きを担う可能性を見出した。したがって、当初の計画とはやや異なるアプローチを取ってはいるものの、「糖の取込みを制御する神経回路を明らかにする」という目標に向けて本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
脳中枢において、骨格筋・褐色脂肪へシグナルを伝達する神経細胞群の同定に成功しているので、本年度はこれらの神経細胞の機能を光遺伝学や化学遺伝学を用いて人為的に操作し、糖代謝に与える影響を解析する。また、レプチン欠損マウスや、レプチン長期投与マウスを用いて、これらの神経細胞の数が変化するかを調べる。さらに、ウイルストレーサーを用いて、これらの神経細胞の上流の神経細胞を同定し、視床下部腹内側核の神経細胞からこれらの神経細胞への投射が存在するかを解析する。
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Research Products
(5 results)