2019 Fiscal Year Research-status Report
新規生理活性ペプチドNURPが担う新しい生体制御機構の解明
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18K08497
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
森 健二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (00416223)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生理活性ペプチド / 神経ペプチド / 受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペプチドホルモンや神経ペプチドに代表される生理活性ペプチドは、細胞間の情報伝達を担う主要な分子の1つであり、生体の制御及び恒常性維持において重要な役割を果たしている。したがって、新しい生理活性ペプチドを同定してその機能を明らかにできれば、未だ知られていない生体制御機構を明らかにすることができる。 これまでに発見されている多くの生理活性ペプチドは、それ自身の有する活性を指標とした精製によって同定されているが、近年では多様な方法を駆使して生理活性ペプチドが発見されるようになっている。特に、多くの生理活性ペプチドが、翻訳後修飾の過程において前駆体タンパク質の塩基性アミノ酸対部位で限定切断を受けて産生されることが明らかになってからは、タンパク質のアミノ酸配列上に存在する塩基性アミノ酸のクラスターを目印として新規生理活性ペプチドが発見されるようになった。 最近、神経ペプチドであるneuromedin U(NMU)の前駆体タンパク質の配列解析により、この前駆体から産生されるもう1つの新しい生理活性ペプチドとしてNMU precursor-related peptide(NURP)を同定し、脳室内投与実験によりプロラクチン分泌促進活性などを明らかにした。現在では、NURPの脳室内投与により自発運動の増加、エネルギー消費の亢進、心拍数の増加や背部表面体温の上昇も認められている。このように、NURPは興味深い活性を有することが明らかになっているが、その受容体が不明であることから作用機序を含めた本ペプチドの生理的役割は未だ完全には明らかになっていない。そこで、本研究ではNURPが担う生態制御機構の解明と目的として、その受容体の同定を試みている。これまでに、NURPがラット脳の特定領域に結合し、同部位の神経細胞を活性化することを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットへ脳室内投与したNURPは、プロラクチン分泌を抑制的に制御している視床下部弓状核からのドーパミンの分泌を抑制することにより、下垂体からのプロラクチン分泌を促進するが、これとは対照的に同じ前駆体タンパク質から産生されるNMUは、脳室内投与するとドーパミン分泌を促進することによりプロラクチン分泌を抑制する。このように、NURPはプロラクチン分泌制御においてNMUと真逆の作用を示すが、NURPはNMU受容体のアンタゴニストとして作用することはなかった。NURPまたはNMUを脳室内投与後に視床下部弓状核における神経細胞の活性化をc-fosタンパク質の免疫組織化学染色により検討したところ、NMUの脳室内投与によって視床下部弓状核に存在するドーパミン産生神経細胞が活性化していたが、これらはNURPの脳室内投与では活性化されなかった。この結果は、両ペプチドによるドーパミンを介したプロラクチン分泌制御機構と矛盾しない。また、NMUを脳室内投与した際の弓状核でのc-fos発現のほとんどはドーパミン産生神経細胞で認められたが、NURPを投与するとドーパミン神経細胞が密に存在している領域の外側でc-fos発現による神経細胞の活性化が観察された。これは未だ示すことのできていないNURPの機能が存在することを示唆していると考えられる。また、神経ペプチドであるキスペプチンは、NURPと同じ機構でプロラクチン分泌を促進することから、NURP受容体もキスペプチン受容体と同じくGiタンパク質と共役するGPCRであると仮定して、cAMPを指標としてSH-SY5Y、JurkatやAtT20を含む各種培養細胞から受容体発現細胞の検索を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
NURPとキスペプチンが同じ機構でプロラクチンの分泌を促進することから、キスペプチン受容体の2次メッセンジャーであるcAMPを指標として受容体発現細胞を検索してきた。これに加えて、共役するGタンパク質の種類を問わずに受容体の活性化を検出できるCellKeyシステム(モレキュラーデバイス社)も導入して各種培養細胞から受容体発現細胞を検索する。NURPへの反応性を指標として同定した受容体が発現していると考えられる培養細胞や受容体分子が存在すると推定された脳の特定領域を出発材料として、NURP受容体分子の同定を試みる。また、NURPの新しい機能も検討する。
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Causes of Carryover |
次年度に使用する予定の研究費は、主に物品費として計画していたが使用しなかったものである。物品費については必要最小限の消耗品の購入に充てたため、次年度使用額が生じた。翌年度は物品費として使用する予定である。 本研究計画では、国立循環器病研究センターの保有する共同研究機器ならびに、国立循環器病研究センター研究所生化学部の機器を中心に使用するため、研究を遂行するための物品費(消耗品)を中心として研究費の使用を計画している。また、最新の知識・情報を収集するための調査・研究旅費、ならびに成果発表に関する必要経費の使用も計画している。
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[Journal Article] Transnasal delivery of the peptide agonist specific to neuromedin-U receptor 2 to the brain for the treatment of obesity.2020
Author(s)
3.Tanaka A, Takayama K, Furubayashi T, Mori K, Takemura Y, Amano M, Maeda C, Inoue D, Kimura S, Kiriyama A, Katsumi H, Miyazato M, Kangawa K, Sakane T, Hayashi Y, and Yamamoto A
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Journal Title
Mol. Pharm.
Volume: 17
Pages: 32-39
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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