2021 Fiscal Year Research-status Report
Role of proglucagon positive cells in pathophysiology of diabetes.
Project/Area Number |
18K08498
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
藤田 征弘 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (20451461)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プログルカゴン / 消化管 / 膵α細胞 / FCM |
Outline of Annual Research Achievements |
グルカゴンとGLP-1は共通の前駆体プログルカゴンから生成される。膵臓から分泌されるグルカゴンは糖新生を亢進させ血糖を上昇させるが、消化管より分泌さ れるGLP-1はインスリン分泌促進やグルカゴン分泌抑制を介し逆に血糖を降下させる。最近、代謝ストレス・加齢などにより膵α細胞からGLP-1が分泌されること が報告されている。一方、消化管からもグルカゴンが分泌される可能性が示唆されているが、その詳細は明らかではない。本研究の目的は、プログルカゴン遺伝 子プロモータ下に蛍光蛋白Venusを発現するmGluVenusマウスを用いて胃粘膜を含む消化管においてグルカゴン分泌細胞が存在するかを細胞レベルで再確認する。 その上で、発現メカニズムや生理作用、糖尿病など代謝異常へ関わりについて転写調節の視点から明らかにする。 現在、このマウスの組織で蛍光タンパクの発 現について蛍光顕微鏡下で膵島(α細胞)、胃粘膜、十二指腸、空腸、回腸で確認できた。各消化管よりコラゲナー ゼで消化後、フローサイトメトリー(FCM)を用 いて、蛍光陽性細胞を分離した。回腸からはからはVenus陽性細胞をFCMで選択に分離するに成功し、グルカゴン遺伝子発現を確認し、Venus陰性では発現を認め なかった。一方、膵α細胞は、膵頭を単離後にEDTAで細胞をバラバラにしてFCMでVenus陽性細胞を分取し、グルカゴン遺伝子発現を確認した。Venus陽性L細胞と α細胞でPC1, PC2などグルカゴンやGLP-1生成に関わる酵素の遺伝子発現を検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オキシントモデュリンとグルカゴンの活性を測り分ける測定計は樹立、α細胞の単離と採取、採取した細胞からの遺伝子発現(RT-qPCR) 方の確立は、達成できている。実際、膵島と小腸から得たYFP陽性細胞とYFP陰性細胞でプログルカゴン発現をRT-qPCRで確認したところ、YFP陽性 細胞では膵島で10-35倍、小腸では54-2750倍のプログルカゴン遺伝子の発現を認めた。次に、単離α細胞、単離L細胞から RNAを抽出し、RNA-seqを行った。ホルモンでは、L細胞はGIP、グレリン、CCKの、α細胞はインスリン(ins1, ins2), PPの 遺伝子が、他方と比較し特異的に発現していた。一方、ソマトスタチン、PYYはα、L細胞はともに高発現を認めた。転写因 子では、L細胞ではCdx1, Cdx2の、α細胞ではMafB、Nkx6-1の遺伝子発現が、他方と比較し特異的に発現していた。α細胞 特異的とされるPax6, Arxは、双方で遺伝子発現を認め、発現差はなかった。膵β細胞特異的とされるMafA, Pax4の発現は 双方で殆ど認めず、pdx1も遺伝子発現差を認めなかったことから、単離の際のβ細胞の混入は少ないと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)糖尿病状態や代謝ストレスは、膵α細胞や腸管L細胞で転写因子、タンパク修飾酵素、ブドウ糖輸送担体・脂肪酸受容体の発現をどのように調節するか? mGluVenusマウスに、①高脂肪食負荷 ②高果糖食負荷 ③カロリー制限 ④低用量ストレプトゾトシン投与を行い、高血糖、代謝ストレスのモデルマウスを作成する。その上で膵島や小腸からVenus陽性細胞をFCMで分取し、RNAseq法で遺伝子発現の差異について正常マウスと比較するとともに膵臓と小腸での変化についても検証する。代謝ストレスで、膵α細胞でGLP-1が分泌されることが報告されており、正常飼育と飼育下でのマウス膵島でグルカゴン分泌やGLP-1が変化するかELISAや免疫組織学的な検討で比較する。さらに、腸管でGLP-1→グルカゴン分泌の変換が代謝ストレスで引き起こされている可能性がありこれを検証する。 2)プログルカゴンの修飾酵素であるPC-1/3、PC2の発現調節機構の解明小腸と膵臓のVenus陽性細胞の比較で発現に相違があった転写因子は、修飾酵素の遺伝子発現の調節因子である可能性が高い。①PC1/3とPC2のプロモーターをルシフェラーゼベクターに組み込み、どの転写因子がPC-1/3とPC2の転写活性を増減させ、どの部位に結合するかを検討する。②培養α細胞株であるα-TCや培養L細胞株を用いてChIPアッセイを行い転写因子との関連を証明する。
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Causes of Carryover |
研究代表者が、2018年の9月に旭川医科大学から滋賀医科大学へ異動した。 その異動前後実験を実施ができなかったことと、実験で使用するプログルカゴン遺伝 子のプロモータ下に蛍光蛋白Venusを発現するマウス(mGluVenusマウス)について、施設間移動およびMaterial Transfer Agreement (MTA)の再申請をしなければ 実験を継続できなかったため、実験の実施が遅れている。 2019年3月に新たなMTAを締結した。 また、コロナ禍で研究が遅れたため、1年研究期間を延長し、2022年に再延長した。
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