2019 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレス応答転写因子Nrf2によるエネルギー代謝調節機構の解明
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18K08506
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長田 直人 金沢大学, 医学系, 講師 (70456408)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 熱産生 / エネルギー代謝 / 肥満 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生体のエネルギーを熱として消費する脂肪細胞である褐色脂肪細胞とベージュ脂肪細胞において酸化ストレス応答転写因子であるNF-E2 related factor 2 (Nrf2) の働きを解明することを目的としている。 本年度は、褐色・ベージュ脂肪細胞において異なるNrf2活性化レベルを有するマウスを作成するために、褐色脂肪細胞特異的にKeap1(Nrf2の抑制因子)、またはNrf2が欠損するマウスとNrf2欠損マウスを導入した。 まず、マウスが寒冷ストレスを全く感じないサーモニュートラル(30℃)の条件下において、褐色脂肪細胞特異的にKeap1欠損マウスに通常食または高脂肪食を与え、異なるNrf2の活性化レベルが非ふるえ熱産生、体重増加、摂食量、およびエネルギー消費量に与える影響を検討した。褐色脂肪細胞においてNrf2が常時活性化された状態にあるKeap1欠損マウスは、対照の野生型マウスに比較して、摂食量に差が無いにも関わらず高脂肪食による体重増加が抑制されていた。また、間接熱量計を用いて測定したエネルギー消費量も有意に増大していた。これらの結果と一致して、ベータ3アドレナリン受容体アゴニストCL-31643の皮下投与による褐色脂肪組織温度の上昇は、欠損マウスでより強いことを確認した。以上の結果は褐色脂肪細胞におけるNrf2の活性化が熱産生の亢進に寄与する可能性を示している。現在、Nrf2欠損マウスにおいても同様の実験をすすめるためにコロニーを拡大している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変マウスの導入とコロニーの拡大も順調に進み、動物実験の結果が得られはじめている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、褐色脂肪組織と皮下脂肪組織における熱産生関連分子の遺伝子、およびタンパク質発現量を検討する。また、Nrf2欠損マウスにおいても同様の検討を行う。また、マウスの熱産生能を検討する別の方法として、一般的に急性寒冷暴露(4℃、6~8時間)、慢性寒冷曝露(16℃、4週間)が用いられている。今年度はマウスのコロニーをさらに拡大し、これら寒冷応答への影響を検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は実験条件の設定のために小規模な予備実験の時間が比較的長かったために未使用額が発生した。条件設定もほぼ終えたため、試薬などの購入のために予算を有効に使用して、大規模な本試験に移行する。
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