2018 Fiscal Year Research-status Report
劇症1型糖尿病の成因解明 ーCD300eの関与と新規ウイルス感染関連因子の同定
Project/Area Number |
18K08529
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
今川 彰久 大阪医科大学, 医学部, 教授 (80373108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細川 吉弥 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教(常勤) (10814569)
佐野 寛行 大阪医科大学, 医学部, 助教 (20556435)
寺前 純吾 大阪医科大学, 医学部, 講師 (90351395)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 劇症1型糖尿病 / CD300e |
Outline of Annual Research Achievements |
1)劇症1型糖尿病患者樹状細胞を用いたCD300eの機能解析:本研究では、劇症1型糖尿病患者との比較対照として、健常群、自己免疫性1型糖尿病患者群、2型糖尿病患者群を設定し、まず健常群を対象とした条件検定を行った。20mlの血液からマグネットビーズによるnegative selectionを行い、単球、樹状細胞ともに概ね1×107個採可能となった。単球をCD45+CD14+細胞、樹状細胞をCD45+CD11c+HLA-DR+細胞と定義してフローサイトメトリーを行った結果、CD300e発現率はいずれも95~99%であった。さらに単球、樹状細胞をCD300e抗体にて24時間培養を行い、その後の遺伝子発現変化をPCR法にて現在解析中である。 2)ウイルス感染症および急性発症1型糖尿病患者における血中抗CD300e抗体の測定:本研究では、現在までに、血中抗CD300e抗体の測定系を確認し、予備実験として数名の劇症1型糖尿病患者、インフルエンザ患者、健常者の血清中CD300e抗体価を測定した。その結果、劇症1型糖尿病患者の抗体価が、インフルエンザ患者、健常者よりも高い傾向にあり、同抗体上昇の疾患特異性が一層裏付けらえる結果が得られている。本研究は今後も継続し、検体数を増やす予定である。 3)患者iPS細胞由来膵β細胞モデルを用いた劇症1型糖尿病新規鍵分子の同定:本研究では、劇症1型糖尿病iPS細胞クローン、健常人iPS細胞クローン由来インスリン陽性細胞にpoly (I;C)トランスフェクションを施行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)に関して、平成30年度は実験系の確立を目標としていた。現在、健常群での実験条件検定が概ね完了し、本格的に患者群で実験を重ねていく段階に来ている。2)に関して、平成30年度は各群20名の抗体価測定を目標としていた。現在、各群数名の測定が完了しており、測定系の再現性も確認されている。対象検体の収集も順調であり、ほぼ予定通り研究は完了する見込みである。3)に関して、平成30年度はiPS細胞由来インスリン陽性細胞へのpoly (I;C)トランスフェクションを施行した。 以上のように研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画を中心に、平成31年度は以下の検討を行う。 1)劇症1型糖尿病患者樹状細胞を用いたCD300eの機能解析:健常者を対象に構築された実験系を用いて、対象を劇症1型糖尿病患者、さらに患者背景をマッチさせた自己免疫性1型糖尿病患者、2型糖尿病患者へと拡大する。4群間における単球・樹状細胞上に発現するCD300e分子発現量の相違を明らかとし、さらにCD300e抗体、control IgG、LPS刺激による反応性の違いを、IL-6,8,10、TNF-αの遺伝子発現量、および分泌量によって解析する。 2)ウイルス感染症および急性発症1型糖尿病患者における血中抗CD300e抗体の測定:引き続き、既に準備された検体を用いて解析を行う。劇症1型糖尿病発症時の経過(感冒様症状の有無など)と抗体価との関連を統計学的手法により明らかとし、さらに対照となるインフルエンザ患者のものと比較することによって、劇症1型糖尿病発症初期に確認されたCD300e抗体価の上昇が、疾患特異的なものか、先行するウイルス感染を反映したものかを解明する。 3)患者iPS細胞由来膵β細胞モデルを用いた劇症1型糖尿病新規鍵分子の同定:poly (I;C)トランスフェクションを進め、インスリン陽性細胞のみFACSにて単離し、ISG15, PKR, Mx, 2,5-OASの発現および、ネクローシス経路、アポトーシス経路に関わる分子の遺伝子発現やリン酸化を評価する。また、PD-L1など免疫調節因子やウイルス受容体の遺伝子発現も検討する。同時にMIN6細胞を用いて、膵β細胞死に関連する候補遺伝子の解析を行う。以上の結果より、膵β細胞破壊の機序を解明する。これらのことで差異が確認できなかった場合、RNAマイクロアレイによって網羅的な原因遺伝子解析を行う。
これらの方策は研究代表者のもと、研究分担者、大学院生を組織して推進していく。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初の計画の手順を一部修正し、次年度以降に使用する予定が生じたため、次年度使用額が生じた。すなわち、iPS細胞由来インスリン陽性細胞を用いた検討を予定していたが、それらは主に平成31年度以降に施行するように計画修正としたためである。 (使用計画) サイトカイン等測定キット購入費用、FACSおよび免疫組織化学に使用する抗体と染色キット、遺伝子発現量測定のためのキット、幹細胞培養を含む細胞培養に関する費用、DNA抽出と塩基配列同定のためのキット購入費用など、計画にしたがって研究費を使用する。
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