2019 Fiscal Year Research-status Report
Immune checkpoint 遮断を導入した新規神経芽腫集学的治療の開発
Project/Area Number |
18K08550
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
井上 成一朗 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (70431690)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 神経芽腫 / 免疫チェックポイント阻害 / 腫瘍浸潤リンパ球 / 腫瘍浸潤樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
進行神経芽腫に対する免疫チェックポイント阻害療法の臨床応用と既存の治療との併用における効果促進による新しい免疫治療プロトコール開発に向けた基礎的研究を行っている。前年度までに我々はマウス実験モデルを利用し抗PD-1抗体抗PD-L1抗体の併用同時投与が抗腫瘍効果を示すことを確認し、その免疫メカニズムに抗腫瘍効果を持ったCD11c陽性樹状細胞の腫瘍組織浸潤が大きく関与する可能性を示した(Inoue et al. 2008 SIOP)。この結果を基に抗PD-1/PD-L1抗体併用投与における抗腫瘍免疫メカニズムのさらなる解析を行った。 抗PD-1/PD-L1抗体併用投与により腫瘍組織には多機能性腫瘍浸潤リンパ球(multifunctional tumor infiltrating lymphocyte)の浸潤が促進されることを確認し、2019年日本小児外科学会総会(井上他第56回日本小児外科学会学術集会 久留米)、2019年国際小児腫瘍学会では発表した(Inoue et al. SIOP 2019 Lyon)。さらに抗PD-L1抗体投与が腫瘍組織内においてPD-L1陽性細胞を減少させることをin vivoで確認し、さらに貪食細胞によるPD-L1陽性神経芽腫細胞の貪食を促進することをin vitroで証明した。この結果抗抗PD-1/PD-L1抗体併用投与を行ったマウス腫瘍組織内には各抗体の単剤投与群及びisotype投与(非治療)群と比較してCD8陽性腫瘍浸潤リンパ球がより多く浸潤していることが確認された。 抗PD-1/PD-L1抗体併用投与ではマウス神経芽腫に対し、PD-L1陽性腫瘍細胞の貪食を介して腫瘍組織への抗腫瘍リンパ球の浸潤促進を来しより強い抗腫瘍免疫反応を起こすことが解明された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的の大きな基盤である進行神経芽腫に対する免疫チェックポイント阻害治療が有効であることの証明が行えた。PD-1/PD-L1抗体による免疫チェックポイント阻害療法の効果における免疫メカニズムは抗体投与の結果貪食細胞(CD11c陽性樹状細胞)の腫瘍組織浸潤と貪食細胞によるPD-L1陽性腫瘍細胞の貪食が契機となり、その結果多機能性腫瘍浸潤リンパ球の腫瘍浸潤を促進することを解析した。抗腫瘍免疫反応の解析はさらなる治療プロとコールの開発や、他治療との併用療法の可能性の検討に対して非常に有効な情報となる。これらの結果は英語論文にまとめ国際医学雑誌(Journal of Surgical Research)に投稿した。厳正な査読を経て掲載が決まり(J Surg Res 2020 in press)、これらの研究結果は学術的にも認められた。 研究成果としての進捗状況としてもおおむね順調に進展していると言える。また同時に当初の予定通り、さらに効果的な治療プロトコールの開発と免疫細胞や既存の抗腫瘍薬等を用いた併用療法の開発を進めていく重要な根拠となる。現段階で研究はおおむね順調に進展しており、さらに研究を継続して発展させることができる状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在の治療プロトコールは抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体を同時投与することで抗腫瘍効果が確認されている。同時に抗PD-1/PD-L1抗体投与による抗腫瘍免疫療法は抗PD-L1抗体によるPD-L1陽性腫瘍細胞の貪食が免疫反応誘導の契機となることが示された。この知見から、まず抗PD-1/PD-L1抗体併用投与に於いて、抗PD-L1抗体の投与を先行させて免疫反応の契機を誘導し、その上で抗腫瘍リンパ球に対する効果がある抗PD-1抗体を投与することで、より有効な抗腫瘍免疫反応を誘導できる可能性が高い。今後、まず抗PD-1/PD-L1抗体の投与のタイミングを検討する。腫瘍接種したマウスに抗PD-L1抗体投与を先行し、その後抗PD-1抗体を投与する。そのタイミングの組み合わせを複数検討し、その効果と免疫効果の詳細を解析する。 生体への抗体投与は副反応のリスクや抗体の大量投与による医療経済の面では欠点となり得る。免疫細胞の培養系に抗体投与し、免疫細胞をex. vivoで"educate"し、その免疫細胞を細胞治療の手法で生体に投与し、抗腫瘍効果を得ることができれば、抗体の必要量を抑制し、かつ副反応を抑えたより有効な新規免疫療法を開発することが可能となる(Inoue et al. J Pediatr Surg. 2017)。マウス骨髄から培養系で樹状細胞を誘導し、その培養過程で腫瘍抗原と抗PD-L1抗体を培養系に添加して樹状細胞を"educate"し、得られた免疫細胞を経静脈投与、さらに抗PD-1抗体を投与することでさらに有効な免疫治療プロトコールを開発できる可能性が高い為、今後より有効な新規免疫治療プロトコール開発を目指して免疫細胞培養系での抗体添加による細胞治療プロトコール開発を進めていく予定である。
|
Research Products
(5 results)